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第181話 図書館でお勉強を4

 一時間勉強に十分イチャイチャ。俺たちの立案した作戦は、思いの外効率的だった。


 とにかく一度イチャイチャを挟んだ後の集中力が凄い。段々回数を重ねるごとに意識的なメリハリが増していって、気づけばもう図書館は閉館の時間である。


「ん〜、がん、ばったぁ!」


「凄いぞ由那。今日だけで数学のテスト範囲、一周できてる。毎日軽く復習を挟んでおけば充分間に合いそうだな」


「えへへ、もっと褒めてぇ……」


「よーしよしよし。偉いぞー」


「にゃ〜♡」


 夕日に当てられる帰り道。腕にぴっとりと引っ付いている由那をとびっきり甘やかす。


 これは束の間の休憩時間。流石に六時で閉まってしまう図書館での勉強だけでは時間が足りないので、帰ってからもまた取り組む必要がある。


 だからその前に。帰り際である今のうちのイチャイチャ充電が大切なのだ。


「ん〜、私、ゆーしいなくても頑張れるかなぁ。う゛ぅ、離れたくないぃ!!」


「そんなこと言ったってなぁ。仮に夜までずっと一緒にいたとして、いつまでも勉強のモチベーション持ちそうか? 少なくとも俺は途中から由那との触れ合いに専念する自信しかない」


「……それは、そうかも」


 でも、やっぱり寂しいものは寂しい。そう考えているのはよく分かる。


 俺だってできるならずっと一緒にいたい。けど、そもそも由那の家の門限もあるし。一人で勉強ができる習慣はつけてもらわないと、どうしても勉強量の問題で限界が来てしまう。


 だからここは俺もグッと我慢だ。いやまあ、我慢も何も門限はどうしようもないんだけども。


(って、ちょっと待てよ……?)


 由那の家の門限は、確か夜の八時。つまり図書館の閉館時間から二時間後だ。


 この二時間を、有効活用できはしないだろうか。


 学校からの帰り道となると、図書館以上に集中できる環境は無いと思う。だから、やっぱり必然的に勉強は家出してもらわなきゃだが。


 こんな、イチャイチャ消化不良の状態で別れることが本当に正解なのだろうか。


 俺は……否、だと思う。


 もちろん俺自身が由那とイチャイチャしたいという欲望もあるし、これはそれを正当化する言い訳に聞こえるかもしれないけれど。


 このまま家に帰っても多分欲が溢れて完全には集中できない。それなら、この二時間はどう使うべきなのか。


「由那、これからさ……俺の家、来ないか?」


「へっ!? 行く!! いいのぉ!?」


「いや、せっかく由那の門限まであと二時間あるからさ。夜一人でも頑張れるよう、イチャイチャし尽くすのに使うのがいいんじゃないかと思って」


「あーっ! 賛成!! ゆーし天才だよぉ!!」


 まあ普通の人ならその二時間も勉強に使う方が、有意義なんだろうけど。


 俺たちにとっては違う。たとえどんなに忙しいテスト期間だったとしても、イチャイチャというご褒美を定期的に挟んだ方がやる気を出せるのだ。


 一時間につき十分。それはあくまでも一時間集中するためにイチャイチャを十分挟むということであり、二人でこまめにそういった定期的発散をすることができない夜の時間を集中して乗り切るためには、あらかじめその分のエネルギーをチャージしておくことが必要だろう。


「えっへへ、二時間イチャイチャ祭りだぁ。それなら一晩頑張れそう!!」


「だろ。俺も、そうでもしなきゃ頑張れそうにないからな。いっぱい充電させてくれ」


「当たり前だよぉ。私の身体、彼氏さんの充電にいっぱい使って〜♪」


 本当、燃費の悪い身体になったと思う。


 でもいい。この不便は、幸せの源だ。


「よぉし、そうとなったら早く行こ!! ゆーしと別れるの名残惜しくてゆっくり歩いてたけど、こうなったら話は別だよ〜!!」




 さて、一晩頑張るためだ。死ぬほどたっぷり由那成分を補充させてもらおうかな。

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