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第502話 相性

斜陽街番外地。神屋。

ここには、いろいろあってひとつになった、

男神と女神がすんでいる。

神様達は、不思議な色の糸を編み、

編み物を作って、日々穏やかに暮らしている。

生きてはいるけれど、生活ということがごっそり抜けている。

人ではないのかもしれないから神様なのか。

この町の住人がそこまで気にしているとは思えないけれど、

とにかく神様達は、それなりにのんびり暮らしている。

運命に干渉するわけでもなく、

誰かになにか恵むわけでもない。

そういう神様ではない。


男神と女神は、女神の背と、男神の腹あたりでひとつになっている。

姿勢としては、男神が後ろから抱きしめているという感じに少し似ている。

たまに女神が後ろを向いて、男神の顔を見て、

微笑みあい、言葉を交わし、不思議な糸を編む。


「あなたとひとつになって、どのくらい経つかしら」

女神はつぶやく。

「わからない。ずいぶん前の気もするし、すぐ近くの気もする」

男神がそう言い、女神は考える。

「私達は何なのかしら」

「神様じゃないかい?」

「一つでありながら二つで、お互いの考えを混ぜることも出来るけれど」

「だから、みんなは神様って言うんだと思う」

男神はそっと女神を抱きしめる。

「みんなは、どんなに求めても、存在を簡単にひとつに出来ないんだ」

「うん、相性なんて言葉で片がつかないほど、存在の溝が大きいと聞いてる」

「だから、神様って言われるんだよ」

「そう、そうね」


女神と男神は目を閉じ、

お互いの意識を内側で踊らせる。

混ざり、ひとつでありながらひとつでなく、

二人でありながら、ひとつのように。

編まれる糸が不思議な色をしているように、

意識は混ざって、もっと複雑な何かを作り出す。

だから、斜陽街の連中は、彼らを神様というのだろう。

人ではたどり着けない領域に、

呼吸をするように当たり前にたどり着いた存在だから。


彼らの相性はいいのか。

幸せそうな神様達の顔を見れば、愚問だ。

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