斜陽街番外地。神屋。
ここには、いろいろあってひとつになった、
男神と女神がすんでいる。
神様達は、不思議な色の糸を編み、
編み物を作って、日々穏やかに暮らしている。
生きてはいるけれど、生活ということがごっそり抜けている。
人ではないのかもしれないから神様なのか。
この町の住人がそこまで気にしているとは思えないけれど、
とにかく神様達は、それなりにのんびり暮らしている。
運命に干渉するわけでもなく、
誰かになにか恵むわけでもない。
そういう神様ではない。
男神と女神は、女神の背と、男神の腹あたりでひとつになっている。
姿勢としては、男神が後ろから抱きしめているという感じに少し似ている。
たまに女神が後ろを向いて、男神の顔を見て、
微笑みあい、言葉を交わし、不思議な糸を編む。
「あなたとひとつになって、どのくらい経つかしら」
女神はつぶやく。
「わからない。ずいぶん前の気もするし、すぐ近くの気もする」
男神がそう言い、女神は考える。
「私達は何なのかしら」
「神様じゃないかい?」
「一つでありながら二つで、お互いの考えを混ぜることも出来るけれど」
「だから、みんなは神様って言うんだと思う」
男神はそっと女神を抱きしめる。
「みんなは、どんなに求めても、存在を簡単にひとつに出来ないんだ」
「うん、相性なんて言葉で片がつかないほど、存在の溝が大きいと聞いてる」
「だから、神様って言われるんだよ」
「そう、そうね」
女神と男神は目を閉じ、
お互いの意識を内側で踊らせる。
混ざり、ひとつでありながらひとつでなく、
二人でありながら、ひとつのように。
編まれる糸が不思議な色をしているように、
意識は混ざって、もっと複雑な何かを作り出す。
だから、斜陽街の連中は、彼らを神様というのだろう。
人ではたどり着けない領域に、
呼吸をするように当たり前にたどり着いた存在だから。
彼らの相性はいいのか。
幸せそうな神様達の顔を見れば、愚問だ。