「なあ、あずさ。大勢になったもんだな」
「そうね。楽しそう」
俺は、少人数がよかったのだが、あずさが楽しそうなのでまあいいか。
ずっと留守番ばかりさせている、あずさのご機嫌取りと、そろそろ牧場の準備が出来たこと、四月から始める学校の先生にフォード教授を迎えたいことを考えていたので、丁度いい機会だろうと行く事にした。
「連れてきたニャ」
「うわあ、すごーーい!!!」
「よくきたな。エマ、ライ、そしてノブ」
大勢ついでに、関西から三人のゲストをアドと響子さんに連れてきてもらった。
「これで全員だな、乗ってくれ」
輸送用ミスリル製の美しい青色のUFOに全員を案内した。
メンバーは。
あずさ、ミサ、アメリちゃん、ヒマリ、古賀さん、愛美ちゃん、坂本さん、はるさん、りん、スケさん、カクさん、響子さん、カノンちゃん、エマ、ライ、ノブ、クザン、シュラ、最後にアドだ。
全員手荷物を持って乗船し出発した。
「ああっ!!」
全員に飲み物を配り終ったあずさが驚いている。
俺のヒザの上に、アメリちゃんとアドがちょこんと座っていたからだ。
この二人の見た目は、幼児で六歳位にしか見えない。
俺は、楽しそうなメンバーの中には入れないので、こそこそ隅っこにいたら、二人が嬉しそうな顔をして、乗ってきたのだ。
「どうした?」
「いいの……」
あずさが、少し寂しそうな顔で笑った。
「なあ、あずさ。いったん全員をハワイで降ろして楽しんでもらうか?」
「うふふ、本当にとうさんは……。全員でハワイを楽しみます」
「そ、そうか。じゃあ、そうしよう」
「なあ、あずさ。こうして流れる景色をのんびり見ていると、昔の事を思い出すなー」
窓は無いのだが、UFOは人の目の高さを透明にして窓のようにしてくれている。
外はすでに海しか無いのだが、雲が流れて行く。
ボーッと眺めていると、とりとめも無いことが次々と頭に浮かんでくる。
二人の幼児を抱っこしているためか、あずさの幼い頃のことが多く浮かんでくる。
「どんなこと」
あずさは横に座ると、俺に体を預けてきた。
「そうだなー。学校から帰ってきて俺の姿が無いと、パニックになって泣き叫んでいたことかな」
「えっ、あずさちゃんにそんな頃があったのですか?」
俺の空いている横にヒマリちゃんが座って聞いて来た。
ヒマリちゃんは今川と、響子さんの娘だ。
今川も男前で、響子さんも駿河一の美女だった。
そんな二人のいいところだけを受け継いだようなヒマリちゃんは、恐ろしいほどの美少女だ。
「憶えていません!」
あずさがとぼけた。
「あと、頭に大きなハゲがあって、頭を撫でる度に治るのかと心配していた」
「もー、変なことばかり思い出さないで!」
「ほ、本当ですか?」
あずさの横に愛美ちゃんが座って聞いて来た。
愛美ちゃんは皇居で出会った少女で、もしかすると皇族のお姫様じゃ無いかと思っている。
「うふふ、本当なの。その当時は私、頭に毛がほとんど無かったのよ。見た目もガイコツみたいだったの。見て!」
あずさは、髪をかき上げた。
髪の下から、俺の唇のような、ハート型にも見える拳ぐらいの大きなハゲを見せた。
「すごい、大きい。何もかも完璧な美少女だと思っていましたが、こんな所に最悪の欠点が見つかりました」
坂本さんが愛美ちゃんの後ろに座って言った。
坂本さんは、愛美ちゃんの護衛係で側衛官という警察官だった人だ。
赤色が好きで今日も赤い服を着ている。唇も真っ赤だ。
ショートカットで吊り目の美女だ。
ヒマリちゃんの後ろで古賀さんがうなずいている。
古賀さんは、ヒマリちゃんの護衛兼教育係。
さらさらヘヤーで優しい顔の、聖母様のような感じの女性だ。
「あら、欠点ではありませんよ。私にとっては大事な思い出の宝物です。とうさんの愛が詰まっているのですから」
あずさは髪を下ろすと、髪の上から両手で押さえて、にっこりと微笑んだ。
「すげーー美少女だ。こんな美少女初めて見た」
ノブがあずさの前に座りあずさの笑顔を、目を見開いて見つめている。
まばたきすら忘れているようだ。
「あなたは誰?」
二人は初対面だったか。
「俺は鶴見信秀、小六だ。ノブって呼んでくれ」
「同級生なのね。私は木田あずさ。よろしく」
「私はライ。私も同級生だ」
ライがノブの横に来て、あずさにあいさつをした。
「私はエマ、二歳年上よ」
身長は同じ位だが、エマは二歳年上なのか。
エマはこうしてみると古賀さんに似ている。
そう言えばライは、どことなく坂本さんに似ているな。
でも、ライの奴は、美形の少年にしか見えないなー。
あずさが勘違いしなければいいのだが。
「エマ姉って私は呼んでいる」
ライが言った。
「じゃあ、私もそう呼びます」
「私もー」「俺も」
ヒマリちゃんも愛美ちゃんも、ノブまで便乗した。
いつの間にやら、俺のまわりに全員が集っている。
「エマ姉達三人とは、関西で知り合った。ついでに紹介しよう。はるさんは、木田家一の商店、大田商店のおかみだ。そしてりんさんは、名古屋城の女城主だ」
はるさんと、りんさんが頭を下げた。
りんさんを女城主と言ったのは、俺が名古屋にいない時、一番偉いのが実はこのりんさんだ。加藤の姐さんにあたる人なのだ。
この二人は、丁度響子さんと同じ位の歳だ。響子さんもこれで寂しくないだろう。
二人ともそれなりの美人だ。
この後、機内食を食べ終ると太平洋の真ん中の島が見えてきた。