『お疲れ様です』
「ありがとうございます。…なんとか、リードする事が出来ました」
「いや、本当に見事でした。おかげでー」
なので、俺達はすかさず彼女を労う。そして俺は、テーブルの後ろに立つヒューバートに視線を送る。
ー彼は、少しだけ余裕があるように見えた。いや、本当に助かった。
「…良かった」
『ーさあ、代表の方々がポジショニングしたので始めるとしましょうっ!』
彼女もそれに気付き、ホッとした。
ーそうこうしている内に、司会がアナウンスする。…直後、ステージ中央に鎮座するオブジェがゆっくりとスクロールを始めた。
『おお~っ!』
…いや、マジで凝ってるな~。
作り込まれたギミックに、オーディエンスも俺達チャレンジャーも感動する。
そして、オブジェのスクロールは終わり…開かれたページが発光した。
『ークエスチョン:1。
まずは、古代の政治から参りましょう。それでは、エアウィンドウをご覧下さい』
司会の言葉に従い、代表達や俺らはエアウィンドウを見る。…すると、レトロ風のフォトが表示された。まあ、例によって『再現フォト』だろう。
『古代の政治体制は、今と同じく-国家-によって違っていました。
そしてこれは、古代文明において最も繁栄した国家の政治的場面を再現したフォトです』
そして、司会は簡単な解説をする。…さて、肝心の『問題』はなんだろう?
『フォトでは、2つの陣営に分かれて議会をしていますが…両方のメンバーにはある特徴があります。
さて、それは何でしょうか?』
『ー……』
『……?』
司会のセリフが終わった瞬間、代表達は一斉にペンでの記入を始める。…一方、我がメンバーは一斉に首を傾げた。
まあ、両方とも男性しかいないし格好は多少の違いはあれどスーツだし…一見すると違いは分からない。
だが、代表達は多分フォトが出た瞬間既に解答が出たのだろう。勿論、俺も『さんざん見て来た』ので、直ぐに分かった。
『おぉ~、皆さん非常にスムーズに記入をされていますねぇ~。まあ、このクエスチョンはヒストリーマニアの-入門編-ですからね』
「…ウソォ……」
「…え……」
「「……」」
司会のセリフに、メンバーは驚愕の顔をした。そう、たまに『ヒストリードキュメント』でこの手の題材は取り上げられるのだ。だから、ヒストリーマニアにとってこの問題はイージーなのである。
『ーさあ、それでは各代表の紹介も兼ねて1人ずつオープンして行きましょうっ!』
「…っ」
そして、司会はそんなアナウンスを流した。…当然、ヒューバートは緊張してしまう。
『まずは、ビッグキャプチャーズの-ミール管理担当-を務めるエルド選手っ!』
そして、司会は最初にビッグキャプチャーズから紹介を始める。すると、エアウィンドウに知的な男性が表示された。そして、数10秒後に画面は切り替わり彼の解答が表示される。
『おぉ~、ライトサイドが-貴族-でレフトサイドが-市民-ですか。なるほどなるほど。
ーでは、次はイデーヴェスヒストリー研究会所属のリプロ選手っ!』
司会は、彼の答えを読み上げ引っ掛かる笑みを浮かべた。そして、直ぐに隣のスチューデントチームに移る。
すると、エアウィンドウにグラスを掛けた女子が映った。…案の定、彼女はド緊張していた。
それから数10秒後、彼女の解答が表示される。
『おお、どうやら彼女も同じ解答のようです。
果たして、見事ポイントゲットとなるのでしょうかっ!?
ーでは、次にクエストのレグー選手っ!』
司会は、期待を込めたコメントをした後隣のクエストに移る。
すると、エアウィンドウに温和な壮年が映し出された。…尚、クエストは参加チームの中で唯一スーツ姿だった。
『おっと、やはり彼も同じ解答だっ!これは、全チーム同じ解答の可能性がありますっ!
ーそれでは、今大会注目のチーム…プレシャスノヴァのヒューバート選手っ!
なんと彼、-かの団体-にて情報収集チームのメンバーというとんでもない肩書きを持っていますっ!
果たして彼は、何処まで-正確な知識-を持っているのでしょうかっ!?』
「ー……っ」
遂にウチのターンになったが、今までと違い司会はちょっとだけ長く解説する。…当然、オーディエンスは盛り上がり彼は更に緊張した。
そして、彼の解答がオープンされた。
『おっ!やはり彼も同じ解答だっ!そうなると、やはり-彼女-もっ!?
ーというワケで、大本命のヒストリーメイデンズの中で唯一の-ロウ&ルール-の-ダブルクラウン(二冠)-持ちのヨウコ選手っ!』
「…なっ……」
「…ウソ……」
「「……」」
そのトンデモ称号に、メンバーは驚愕し彼女を凝視する。…いや、マジで信じられんわ~。
俺は、実家でクイズ番組を見ていたから知っていたから驚かなかった。けれど、改めて彼女の驚愕的な実力を認識し苦笑いになってしまう。
『おお~。やはり彼女も同じ答えのようです。
…さて、果たして皆さんは正解しているのでしょうかっ!?』
そして、彼女の解答もオープンされ予想通り全員の解答が一致していた。…すると、司会は少し不安を煽るようなセリフを言い直後緊迫感を抱かせるSEが鳴る。…凝ってるなー。
『ーお見事っ!皆さん正解ですっ!
よって、全チームに10ポイント入りますっ!』
けれど、俺は勿論学生チーム以外の3チームは全員堂々としていた。そして数秒の沈黙の後、正解を告げるSEと共にヒューバートの前にレッドカラーの『◯』が表示された。
『まあ、流石に簡単過ぎましたねっ!
ーでは、チャレンジャーの皆さんはどこで判別したのか少し解説致しましょう』
『…っ……』
すると、司会は解説タイムに入る。…当然、メンバー集中して聞く。
『まずは、貴族サイドの方をちょっと-アップ-にしますね』
司会がそう言うと、映像は『貴族サイド』のアップ画像に切り替わる。…何処をアップしたかというと、『ヘアー』の部分だ。
そのヘアーは、大体がカールしていたり中にはエキセントリックな形をしたモノもあった。
「ー…まさか、『そういう事』なのですか?」
「その通りです」
すると、真っ先にミリアムが『真実』に気付いた。なので、俺は肯定する。
『さあ、次は民衆サイドを見ましょう』
そして、画像は『民衆サイド』のアップ画像になる。…そのヘアーは、僅かな差は極めて『普通』のスタイルだった。
『さあ、もうお分かりですね?…そう、貴族サイドと民衆サイドでは明らかにヘアースタイルが違うのです。
ーちなみに、貴族のヘアースタイルはウィッグです。…何故というと、この時代ヘアーウォッシュの習慣がなく結果早くにヘアーが抜けていき、それを隠す為ウィッグを付けるようになったそうです』
『へぇえええ~っ!』
『…はあー、なるほど……』
司会の解説に、オーディエンスもメンバーも良いリアクションをした。…なんか、『昔』も今も『薄毛』は多くの男性の悩みなんだな。
『さあ、次に参りますっ!
ークエスチョン:2』
そんな感想を抱いていると、司会はコールしまたギミックが作動した。
『続いても、まずはエアウィンドウをご覧下さいっ!』
そして、エアウィンドウに別の画像が表示される。…どうやら次のやつも、レトロな『再現フォト』のようだ。
『これは、古代の選挙風景を再現したモノです。当時も、今と変わらず国民が各政党の候補に投票していました。
ーでは、当時の選挙のルールで-誤っている-のはどちらでしょう』
「ー…まさかの選択問題」
すると、エアウィンドウになさ2択が表示された。…それを見て、イアンは意外そうに呟く。
まあ、まだ『入門編』だから『優しい』な。
『A:投票するしないは個人の自由である。B:投票権は20歳からである。
ーさあ、ご記入下さいっ!』
司会がそう言うと、各チームの代表は一斉に記入を始める。…当然、ペン運びに迷いはなかった。
『おぉ~、各選手迷いがありませんっ!これはまたしても、全員正解かっ!?
それでは、一斉にオープンッ!』
司会は感心し、そしてコールする。
直後、全員の解答が表示された。…やはり、全員『B』を選んでいた。
『おっ!やはり全員が-B-…すなわち、年齢の方を選んだっ!
それでは、正解を発表しますっ!』
そして、またSEが流れ…全員に『◯』が付けられた。