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第85話 白い騎士は逃げるように去って行って、代わりにころちゃんがいたので、ころちゃんを抱きしめました

私に剣を突きつけていた宰相を白い騎士様がやっつけてくれた。


そのまま宰相と一緒に倒れる私を白い騎士様が大きな体でしっかりと抱き留めてくれた。

そう、白い騎士様はとてもがっしりしていて、私はとても安心出来たのだ。

前の時と同じだ。


「白い騎士様!」

私はほっとすると同時に思いっきり白い騎士様に抱きついていた。

白い騎士様の体はとてもがっしりしていて力強くて安心できた。


「カーラ!」

白い騎士様は私の名前を呼んで更に強く私を抱きしめてくれた。

私はほっとすると同時に白い騎士様に名前を呼ばれてとても嬉しかった。

白い騎士様は私の名前を知っていてくれたのだ。


「白い騎士様!」

私は白い騎士様の黒い瞳を覗き込んだ。

白い騎士様の瞳が大きく見開かれた。

そして、ゆっくりと唇が私に降りてこようとして、

「ウホン! ウホン!」

いきなり咳払いがした。


フェルディナントだった。

私達は慌てて離れた。


「白い騎士殿。あなた様のことをいろいろとお伺いしても良いですかな」

フェルディナントが聞いていた。

そうだ。私はまだお名前すら聞いた事が無い。

私は白い騎士を見つめた。


「いや、そうだ。私は少し用を思い出した」

突然白い騎士様が慌てだして、私は驚いた。


「あの白い騎士様、どちらに行かれるのですか?」

私は騎士様に聞いていた。

「すまない。今ずくに行かねばならぬ所があるのだ」

そう言うと白い騎士様が駆け出そうとした賭けだそうとした。

「行かないで!」

慌てて駆け出そうとする白い騎士様の背中に私は思いっきり抱きついたのだ。


「カーラ、すまない。今は行かねばならぬのだ」

しかし、白い騎士様はそう言うと、強引に私の手を振り払ったのだ。


「きゃあ!」

私は振り払われて地面に転けていた。


「カーラ!」

慌てて白い騎士様は私を見た。


「白い騎士様」

私は手を伸ばしたのだ。


「すまないカーラ」

そう首を振って言うと白い騎士様は駆けて行ったのだ。


「騎士様!」

私が必死に叫んだのに、騎士様は私のことを振り返りもせずに行ってしまった。


「そんな!」

私は呆然として白い騎士様が去って行った先を見送っていった。


力をなくした私に、フェルディナントが

「カーラ様。そう、気を落とされずに。ここからは白いか騎士殿の代わりに私が御身を守りますから」

そう言うと高らかにフェルディナントは笑ってくれたんだけど、白い騎士様がいきなりいなくなって私はそれどころでは無かった。何故フェルディナントが笑っていられるのか私には全く判らなかった。

私の白い視線に気付いたのか、フェルディナントは笑うのを止めた。

「仕方が無い。あまりこの手は使いたくなかったのですが」

そう言うと、建物の陰にしゃがみ込んだ。

そして立ち上つたフェルディナントの手の中にはころちゃんがいたのだ。

「わんわん!」

ころちゃんは必死に抵抗していたが、フェルディナントは無視してころちゃんを私に差し出してきたのだ。


「白い騎士は見つかりませんでしたが、代わりに子犬がいましたから。子犬を愛でて御身を慰めてください」

フェルディナントはそう言って笑うと、私にころちゃんを渡して去って行ったのだ。


「ころちゃん!」

私は白い騎士の代わりにころちゃんを思いっきり抱きしめた。

何故かころちゃんを抱きしめると白い騎士を思い出していたんだけど、何でなんだろう?



騎士団長が騎士達を指揮して付近を完全に制圧してくれたので、私は自分の部屋に帰ることにした。


サーヤが早速にお風呂を準備してくれたのだ。


「わんわんわんわん!」

ころちゃんは何故かお風呂に必死に抵抗したんだけど、私はころちゃんを抱きしめてお風呂に一緒に入ったのだ。

「もう、ころちゃん。幾らお風呂が嫌だからって逃げては駄目よ」

私は胸の中にころちゃんを抱っこしてお風呂につかった。


「ころちゃん。あなたのご主人様の白い騎士様はどこに行ったか知っている?」

私はころちゃんに聞いていた。

ころちゃんは真っ赤になって横を向いていたけれど、私はそのころちゃんを胸に抱いた。


「ころちゃん。もうどこにも行かないでね」

私はそう言うところちゃんに頬ずりした。

「クーーーー」

ころちゃんはそう言うと私の顔を舐めてくれた。


「ありがとう。ころちゃん。また、白い騎士様に会えるかな?」

私が聞くと

「わんわん!」

ころちゃんが頷いてくれた。


ころちゃんはお風呂の中ではとても寡黙だった。少し赤くなっていたし……


お風呂から出るとサーヤに拭かれて何故かほっとしていた。

私と一緒にいるのが嫌なんだろうか?


「ころちゃん。私といるのが嫌なの?」

私がころちゃんを睨むと

「クーーーーン」

そう鳴いて、私の足にすり寄ってくれた。


仕方が無いから私はころちゃんを抱いて、布団の中に入ったのだった。


「ころちゃん。白い騎士様は私が宰相に殺されそうになった時に、助けてくれたの。本当に凄かったのよ。目にもとまらない早さで、私を手にかけようとした宰相を一太刀で叩き斬ってくれたの。本当に格好良かったわ」

私は白い騎士様の活躍をころちゃんに話して聞かせた。

でも、ころちゃんは何故か赤くなって寡黙になっていた。


その日、私はころちゃんを抱いて寝たのだ。

ころちゃんは本当に暖かくて私はグッすりと寝れたのだ。


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