な、何なの、この女!
いきなりマクシム様に抱きついて喜んでいるし!
マクシム様もマクシム様よ! 私のお茶会のなのに!
他の女と女と抱き合って喜んでいるなんて!
私はむっとしたのだ。
「マクシム様が行方不明におなりになってとても心配しました」
「それは心配かけたな。コルネーリアの方は大丈夫だったか?」
「はい。私は間もなく騎士学校を卒業します。そうなればマクシム様の護衛騎士として働けるようになります」
「しかし、私の護衛騎士など危険では無いか」
「何をおっしゃっていらつしゃるのです。私は小さい時からマクシム様をお守りするために懸命に努力してきたのです」
何か二人の世界に入ってくれているんだけど。
相も変わらず、二人の距離は近いし!
私は眉をつり上げた。
でも、変だ! マクシム様は女に抱きつかれたら獣化するはずなのに!
何で獣化しないんだろう?
まだ時間が短いからだろうか?
でも、マクシム様は私が抱きついた時は、すぐに獣化しそうになって、ばれたらまずいとめちゃくちゃ焦って隠れていたけれど、この子娘の時は全然焦った風ではない。何でなんだろう?
もうみんなに獣化したら子犬になると知られているからだろうか?
「マクシム殿、女性に触れられるのはまずいのでは」
フェルディナントが私の代わりに注意してくれた。
「ああ、フェルディナント殿、この者は幼なじみのコルネーリアだ。コールネリア、こちらはこのモルガン王国の王女殿下のカーラ様とサウス帝国の第四皇子殿下でこの国の宰相代理のフェルディナント様だ」
マクシムが私達2人に紹介してくれた。
「これはあなた様が王女殿下であらせられましたか? 私、獣人王国のポット伯爵家令嬢のコルネーリアと申します。宰相代理のフェルディナント様もよろしくお願いします」
コルネーリアは私達に騎士の礼をしてくれた。
「カーラです。ようこそ、モルガン王国へ」
「フェルディナントです」
私達も挨拶を返した。
「立ち話も何ですから席にかけましょう。コルネーリア様の分もご用意させて頂きます」
私はサーヤと侍女達に合図した。
マクシム様とフェルディナントの間にコルネーリアの席は用意された。
「でも、女性に触れられたら獣化されるのではないのか?」
再度フェルディナントが指摘するとはたと思い至ったようだ。
「うん、いや、別に今はそんなことは無いな。獣化する兆候もないぞ」
マクシム様が嬉しそうに言いだした。
「マクシム様。女に触れられたら獣化するのですか? 私は久々に子犬のマクシム様を抱きしめたいです」
この女何を言ってくれるのよ! 私でもマクシム様が獣化したころちゃんを抱きしめたいと心の底から思っているのに!
私を差し置いて抱きしめたいってどういう事よ。
「マクシム様。是非とも子犬になってくださいませ」
そう言って机の上にあるマクシムの手に自らの手を伸ばしてくれた。
私の方を挑発するように見てやってくれるんだけど。
「コルネーリア。もう今はある程度大人になったのだ。子供のようには行くまい」
そう言うとマクシムはコルネーリアの手を引き剥がした。
「マクシム様。大丈夫でございますか?」
「そうです。いつ、敵が攻めてくるか判らない時に、獣化しては困ります。コルネーリア様もお控えください。」
私とフェルディナントがマクシムとコルネリアに注意する。
「でも、マクシム様は獣化なんかされていませんよ」
気楽にコルネーリアが言ってくれた。
「確かに獣化しないな」
マクシムは自分の手足を見て呟いた。
「まあ、じゃあ、治られたのですね」
私は喜んでマクシム様を見た。
「私は昔からマクシム様とお付き合いがありますけれど、マクシム様は私に触れられて獣化したことなどございませんわ」
コルネーリアは私を見て勝ち誇ったように自慢してくれたんだけど。
「そうなんですか?」
私は驚いてマクシムを見た。
「まあ、コルネーリアは生まれた時から妹のようなものですから」
マクシムは言い訳してくれた。
「マクシム様。それはどういう意味なのですか? 私はもう十分大人です」
むっとしてコルネーリアがマクシムに主張した。
でも、胸も可愛くて行動もまだ子供だった。
私はほっとした。
私の笑みを見てコルネーリアは馬鹿にされたと思ったのだろうか。
「ねえ、マクシム様」
そう言うと立ち上つてマクシム様の横でマクシム様に抱きついたのだ。
「ちょっと何するのよ!」
私はむっとして、マクシム様の横に行って女を引き剥がそうとした。
「カーラ様」
慌ててフェルディナントが声を上げてくれた。
「コルネーリア、冗談が過ぎると国に送り返すぞ」
「判りました。マクシム様」
そう言うとコルネーリアは離れてくれた。
「マクシム様。大丈夫ですか?」
「カーラ様、大丈夫ですよ」
マクシムは私に微笑みかけてくれたのだ。
その後だ。
私は何故そんなはしたないことをしたかよく判らなかった。
おそらくコルネーリア嬢の小悪魔のような行いに当てられたのかもしれなかった。
「マクシム様」
思わず目の前を通るマクシムの手に触れてしまった。
「えっ」
マクシムが固まってしまった。
「まずい!」
マクシム様は真っ赤になったのだ。
そして、光るとマクシム様はあっという間に子犬に変わってしまったのだ。
「そんな!」
私は唖然としてそれを見ていたのだ。