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第189話 コンタクトレンズで見るものは

未来がやってきたという触れ込み。

そんなコンタクトレンズが、ついに発売になった。


私はもうすでにおじさんという年齢ではあるけれど、

おじさんになった私が、若い頃に見ていた夢のような技術が、

実現したのだなという感慨があった。

もっと幼い頃には、

青い猫型ロボットの、夢のような道具にワクワクもしたものだった。

実現しないだろう、いや、技術が進んでいけばいずれは。

そう思いながら歳を重ねてきて、

年を重ねるごとに夢のような技術で新しいものが生み出されて、

私は未来にやってきているのだなと感じる。

全てがいいことばかりではないけれど、

夢がかなっていくのは、いいなと思う。


未来がやってきたというコンタクトレンズ。

このコンタクトレンズは、

装着することにより、

コンタクトレンズの装着者の個人データを登録する。

そして、コンタクトレンズで見える景色に、

いろいろな情報を同時に表示することができる。

音声認識の機能も備わっている。


たとえばどんな機能があるかと言うと、

まず、コンタクトレンズを装着している者同士ならば、

コンタクトレンズに映す景色に名前が表示される。

名前を忘れるということがなくなる。

また、音声認識機能により、

どこまでのルートと言えば、

そこまでのルートをコンタクトレンズに移す風景に表示する。

徒歩でと発言すればそのルートが、

コンタクトレンズに映す風景で光って見える。

他にも、コンタクトレンズで見える風景には、

いろいろな広告が表示される。

今まで購入したものの情報なども、

コンタクトレンズから情報が送信されて、

サーバーに個人情報として登録されていて、

コンタクトレンズを装着している個人の好みや必要なもの、

あるいは、家にあるもので減ってきているものなど、

それらの情報も総合して、

広告が表示されたり、

あるいは、表示された情報を一定時間見て、

瞬きして承認することにより、

端末などを介さなくてもいろいろなものを購入することができる。

コンタクトレンズで映し出される情報を見ながら視界を移動させることにより、

また別の情報が表示されたり、

必要とされるであろう情報が表示されたりする。

確かに、未来がやってきたという技術だ。


私もいい加減におじさんという年齢だが、

私が若い頃には、こんな技術は、眼鏡でするものというのが、

想像力の限界であったように思う。

多分拡張現実などと言うものだったように思うけれど、

眼鏡ということを飛ばして、

目に直接装着するコンタクトレンズになるとは思っていなかった。

本当に未来だと私は感じた。

現実が広がったと感じたし、

素晴らしい未来がやってきたと思った。

どんな人の目にも適切な情報が送られてくる。

これが災害の時などに力を発揮すると思われたし、

視界を使うものだから、

目の見えない誰かの新しい視界として役に立つかもしれない。

私は輝かしい未来を感じた。


未来技術のコンタクトレンズは、

どんどん売れているらしい。

それはそうだろうなと思う。

ただ、私はコンタクトレンズの映し出す情報の多さに、

少しばかり疲れてしまった。

おじさんなのだなと思う。

未来に夢をしっかり見ていた若者ではないのだなと感じる。

いわゆる私の若い頃にあった言葉の、

デジタルネイティブという、

その技術が若い頃にあった、という世代とは、

私はズレているのだろうなと思う。

やれやれ、年を取ったなと私は思う。

コンタクトレンズが映し出す風景には、

たくさんの情報が流れている。

私の若い頃のスマホの比ではない。

目を閉じても情報は流れ続けている。

休まる暇もない。

この情報を乗りこなす術をこれからの世代は求められるのだろうなと思う。

未来とは、なかなかにすごい技術が求められるのかもしれない。


技術は進んでいく。

あの頃夢のようだった技術も現実になっていく。

その技術が現実になると、

技術を使いこなす技術が求められるようになっていく。

そうして世の中は進んでいくとはいえ、

おじさんには少しスピードが速すぎる。


技術の進歩のスピードを、

このおじさんは見届けることができるだろうか。

あまりに速すぎると、目にも止まらないというやつだ。

まったくいろいろなものがすごいスピードで忙しい。

未来はどこに向かっているのだろうか。

私のようなおじさんの、わからないところに向かっているような気がして、

世代が違うのだなと、そっとため息をついた。

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