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379. 姫は『知ってもらう』そうです

379. 姫は『知ってもらう』そうです




 そして翌日月曜日。時間は6時25分。オレはいつもより早起きをし配信準備を終え、リビングである人を待っていた。すると、インターホンが部屋に鳴りオレはドアを開け出迎える。


「おはよう」


「あ。おはようございます!初めましてFmすたーらいぶのライバーのマネジメントを担当してます高坂陽葵です!よろしくお願いします!」


 その小柄な身体で一生懸命名刺を持ち礼儀正しく深々と頭を下げる。しっかりした子だな。


「ごめんねこんな朝早くから。初めまして『姫宮ましろ』として活動してます神崎颯太です。あとは『双葉かのん』のマネージャーもやっています。よろしく」


「はい……お話は聞いていたので、本当に『姫宮ましろ』で、チーフマネージャーの弟さんなんですね……」


「男で幻滅しました?」


「いえ!むしろ逆です!女性を演じながらも今やFmすたーらいぶのトップVtuberで、配信でのトーク力、後輩が慕うカリスマ性、全部尊敬してます!」


「そ、そうなんだ。それは嬉しいけど……とりあえず中に入って」


「はい!お邪魔します!」


 朝から元気だな……昨日泣いていた女の子とは思えないくらい別人に見えるぞ?とりあえずそのままリビングに案内しソファーに高坂さんを座らせる。飲み物は……あったかいのがいいか。


 オレがコーヒーを置き向かい側に座り話そうとすると高坂さんはカバンの中からゴソゴソと手帳を取り出す。本当にしっかりしているな。


「高坂さん。まず、オレは『姫宮ましろ』として事務所に行くことは少ないです。ですから、打ち合わせや相談などは基本はこの家に来てもらうかディスコードか……なのでもし事務所で会っても神崎颯太として接してください。ライバーの中にはまだオレのことを知らない人もいます。お願いします」


「はっはい。存じてます」


「以上ですね」


「へ?以上?」


 高坂さんが変な声を上げる。まぁ他に注意してもらうことがない……というより分からない。今まで家族の桃姉さんがマネージャーだったからな、そのやり方でやってきたし、これが普通だと思ってるから。


「オレのスケジュールは持ってますか?」


「はい。スマホに。今日は……朝配信。そのあとはオリジナル曲の打ち合わせ……です」


「うん。『姫宮ましろ』は基本午前中は配信。午後に打ち合わせやら雑件、提出物、収録やらがあります。そして夜はコラボが入る時がある。そんな感じです」


「分かりました」


 高坂さんは手帳を取り出し真剣な眼差しでオレのスケジュールを書き記していく。そんな様子を見ながら聞きたいことを聞いてみることにする。


「高坂さんはどうしてFmすたーらいぶに?」


「え?あっ。私は昔からFmすたーらいぶが好きで箱推しなんです!いつも楽しい配信に勇気を貰って。そんな素晴らしい配信をしているライバーさんにも会いたかったし、そんなライバーさんの仕事に携わりたかったので。あと人を楽しませるのが好きで学生のころは個人的にお遊び程度に動画を上げてた時期もあるんですけどね……再生数も100いかないくらいで全然伸びませんでしたw」


「そうなんだ。どんな動画?」


「下らないものです。自分の好きなアニメのキャラを語ったりとか、ラノベの感想を紹介したりとか、ただのお喋りです。でも、100くらいの再生数でも自分の好きなものを話すだけで見てくれている人がいて、なんか……皆さんと同じ気持ちになれたみたいで嬉しかった……なんて言ったら失礼ですよね」


「そんなことないよ。動画を上げたり楽しんだりするのは自由だし。でも、それならライバーっていう選択肢はなかったの?」


「やる気だけじゃ出来ないような気がして……皆さんのような才能があればいいですけど、私にはそんなもの……だから裏方でも誰かを応援したい。それが私の今の夢です」


 笑顔でそう話す高坂さん。夢か……人を楽しませるのが大好きと言ってるし、本当に純粋で優しい子なんだな。


「ということで高坂さん。今から朝配信します。良かったら観ていきますか?間近でライバーの配信観たことないですよね?」


「え?いいんですか!?」


「収録とかなら間近で観れるんですけど、オレは収録がほとんどないですから。声だけは絶対出さないでくださいね?」


「はい!」


 高坂さんは目をキラキラさせて答える。やっぱりライバーにも憧れがあったんだろうな。まずはライバーのことをしっかり知ってもらうか

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