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第1章 第4話 ヒーローの敵(アンチ)⑨

「私は、何度だってあの子をたすけます! だって、私たちの仕事は人を救うヒーローなんでしょう!? 蟹原部長も言いましたよね!」

「言ったかもしれんけど、あれは人間じゃあ……」


「一緒です!」

 じんじんと痛む右手の人差し指を強く握った。


「だって、言葉も通じるし、笑ったり泣いたりするんですよ! 私たち人間と同じように!」

「だからあの人喰バケモンに優しくしろってのか?」

「人間扱いです!」


 蟹原部長は顔に手を当てて、はぁーとため息をついた。うしろで猿山が『馬鹿マンコ』とつぶやいたのを私は睨みつける。






「あのなぁ」


 低い声にビクリと肩を震わせる。蟹原部長が、氷みたいな目で私を見ていた。


「お前は馬鹿だから親切で言ってあげるけど、人喰はウィルスなんだよ。人間に寄生する、な。そんで、人喰ウィルスに寄生されると人間は死ぬ。で、人喰は死体の頭を乗っ取って、操って人間を食うわけだ」


 だから、とつづける。


「人喰は、死体を操ってるだけなんだよ。お前が人間みたいだって思ってるそこのポチバケモノも、ウィルスが人間を模倣しているだけだ。感情なんてない」


「……そ、」


 ごくり、とつばを飲み込む。恐る恐るポチのほうを……振り返る頭が震える、怖い。


「だから、人喰を人間みたいだなんて思うのはやめろ。喰われるぞ」

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