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第2章 第5話 狂気なる平穏⑨

 入社した初日にも注射を打ったけど、人喰管理委員会ここの社員は毎週定期的に注射――人喰ウィルスの予防接種をしなければいけない。人喰に、なれ果ててしまわないように。


 ちなみに、このワクチンは制作費が高額らしく、一般人の接種はまだ解禁されていない……どころかワクチンが存在することすら黙秘されている。




「もう行っちゃうんですか?」

 ポチが子供みたいな上目遣いでこっちを見てくる。う……! 心が痛い。


「ごめんね、用があるから」


 人喰ウィルスの予防接種を打ってくるとは言えない。なんだか、彼をバイ菌みたいな扱いをしてるみたいだから。そういえば、私たちが医務室から脱脂綿で腕を押さえて出てくる姿を見るとき、彼は何を思っているのだろうか。


「だめぇ~、トイレ行きたい」

「えっ?」

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