「そろそろダンジョンに入りますよ? やっぱり止めておきますか?」
「行きます。付いていきますよ! 案内が必要なんですよね!?」
いやぁ、別に……必要ではないかなっ。でも、面白そうなトラップの場所を知っていたら教えて欲しいな。道案内はスキルと探索魔法で分かるし。
「あの……今のは、もしかして転移かなっ!? ねぇ! スゴイんだけど!!」
ピンク色の髪でツインテールの可愛いお姉さん……えっと、誰だっけ? 確か……シルキーで、シルって呼ばれてたよな。
「そうだよ。俺は、転移を使えるんだよね」
「そうなんだ〜初めて見た! 村で使える子がいるって聞いてたけど、君だったんだ! あ、君じゃないかぁ……えっと若様! 自分だけでも難しいのに、あんなに大勢の人を離れている村まででしょ?……どんな魔力量と魔力が……」
シルにも若様呼びをされるんだ? 否定している時間はないからスルーするけど……やめてほしい。もう1件のダンジョンも攻略しないといけないんだからっ。
話に付き合っていたら夕方になっちゃうよ。ダンジョン内は関係ないけど、気分的に嫌かな。
シルの質問に答えずにダンジョン内に入った。
「若様、明かりはコイツが……」
「え? あ、ありがと」
シルと、フィーと呼ばれている魔術師が前と後を明かりのライトの魔法で照らし出してくれた。うぅ〜ん、好意でやってくれてるので文句を言いにくい。明かりが邪魔です……明かりのせいで奥が見えないじゃん! そう思っているのはアリアとミーシャも同じで、顔をしかめていた。
「むぅ……奥が見えないっ! わたし先に行くっ」
「ミーシャ。パーティなんだろ? 一緒にいなきゃ」
ミーシャが「パーティ」という言葉にハッとした表情をし、笑顔で戻ってきた。
「うん。一緒にいるぅー♪」
「勝手に先に行くなよ」
「うんっ」
徐々に魔獣が増えだしてきたが、問題なくアリアとミーシャが軽く討伐してくれ、ルークのパーティが俺を囲むように守ってくれているつもりらしい。
分かれ道に辿り着くと、行き止まりの方に数人の冒険者の気配を感じた。
「ちょっと、こっちに行ってみます」
「そっちは行き止まりですよ」
「冒険者の気配がするので、助けようかと」
「そうですか。この辺はA、Bランクの冒険者が出入りしてて、地図も出回ってるんで迷子ってことはないと思いますから、パニックって行き止まりに逃げ込んだんですかね……。行く先には魔獣は現れませんが……追ってこられたら逃げ道が無いんですがねぇ」
地図が出回ってるのか……売れそうだよな。それ良いかもなぁ……俺も売ろうかな……
皆でゾロゾロと正規ルートから外れ、ルークは正規ルートしか知らず緊張をした表情となっていた。
「若様、帰りは戻れるんですか? この道の地図は持っていないですが……大丈夫ですかね?」
「大丈夫。問題ないよ」
「こんなダンジョンで、迷子になったら洒落にならないです……」
「まぁ、迷子になったとしても転移があるからね」
ルークのパーティが「あぁ!」という表情になり安心をしたようだ。
さらに先に進むと、大きな岩の影に息を潜め隠れている冒険者たちを発見した。明かりが見え、動ける者が助けを求め駆け寄ってきた。
「すみません! 負傷者が多数いて……動けません……どうかお助けを!」
ん? この声は……もしかしてシャルじゃないのか? こんな言葉遣いができるのか? へぇ〜
「もしかしてシャルか?」
「わっ。え?……ユウくん!? こんな所に来て……大丈夫なの? あぁ……上級ランクの冒険者のパーティに入れてもらったんだ」
「ちょっとそこの子、逆よ。逆! 私たちが若様、ユウヤ様のパーティに入れていただいてるのよ! そこ勘違いされちゃ困るわ」
「はぁ? それって……まずいんじゃ? だってユウくんはCランクで、それに入れてもらってるってことは……同じCランクか、それ以下ってことよね……終わったわ」
シャルの表情から生気が消え、顔色が青くなった。
ちょっと待っててよ。よく考えてみろよ。俺のスキルを忘れてるんじゃないの? Cランクでガッカリするのは分かるけどさ、何度シャルを転移で助けてると思ってるんだよ。
「おい。若様をバカにする発言は許せんな……小娘だからといって許せんぞ? 訂正をしてもらおうか? ユウヤ様はSランクで、俺たちを傘下に収めるお方だぞ!」
「ちょっと待て……お前たち、いや……あなたがたはAランクで有名なルーク殿のパーティか!?」
やっぱり有名なパーティだったのか、この人たち。まぁ正義感が強くて、実力も伴っているらしいからな。人気もあるだろうなぁ……このダンジョンでは弱いけど。
それを聞いたシャルの顔色が良くなり、元気が出たようだ。
「は? いつのまにSランクに? おかしくない? なんでCランクの貴方がSランクに? どんな不正をしたのよ? あぁ〜受付の女の人に? いやだぁ〜」
「ちょっと……シャルちゃん! それは言いすぎだよっ」
珍しくムスッとしたアリアが、怒った口調で入ってきて俺の腕に腕を組んだ。
「それ以外に……お金? それもダメじゃない。不正よ! 真面目にランクを上げている人に対して失礼よ」