「何を勘違いしているのか知らんが、不正などしていないぞ! そこの小娘。若様は、正真正銘に国王陛下、ギルドマスターに認められSランクになられて、この討伐依頼を国王陛下から直々に指名をされて、ここに居られるんだぞ」
青色の髪の毛の前衛で普段大人しそうなハルクがムッとした表情で、シャルに文句を言ってくれた。
「そんな事は後回しにして、重症者を」
それを聞いていた隠れ潜んでいた者が、重症者を運び出してきた。5人ほどで見るからに、そうは長くは持ちそうもなく出血がひどく意識もない。
面倒なので纏めて治療魔法を使い、話し合いもしている暇は無いので強制的に村へ送り返した。
「はぁ……あいつの相手をしていると疲れるな……」
「何なんですか? あの生意気な娘は? どういったご関係で?」
「幼馴染で、元パーティかな……半日くらいだったけどなぁ……」
転移を使い分岐した場所へ戻ってきた。
ここにわざわざ戻ってくる必要は無いよな……転移もバレているんだし……魔獣の討伐も飽きたし。とっとと終わらせて次に行くか。
「面倒なので直接、異質なオーラを放っている魔獣の所へ出るので、指示を絶対に守ってくださいよ? ……じゃないと死にますからね」
『は、はい……』
ルークのパーティが緊張をした表情で返事を返してきた。お互いの装備の点検を始めた。
そこで受付のお姉さんから貰ったポーションを渡した。
「なんですかこれは!? こんな高級品頂いちゃって良いのですか?」
「多分、使わないし。俺達より必要なんじゃないかとおもってさ。ダンジョンに付き合ってくれたお礼かな」
「ありがたく頂戴を致します!」
ルークがパーティに分け、準備が出来たらしいので、ボスの居る場所へ転移をした。フワッとした感覚がすると周りの風景、雰囲気が一気に変わり重たく可視化出来るほどのオーラを放つ存在の巨体のオオカミ型の魔獣が目の前に床に寝そべっていた。
「全員、あそこの窪みに避難をして、絶対に出てこないで!」
全員、アリアもミーシャも避難をしたのを確認するとバリアを張り、周りを結界で覆った。
「さー何して遊んでくれる?」
俺達が準備を終えるのを待っていたのか、準備を終えるとゆっくりと立ち上がり俺の方を向いた。すると周りに潜んでいた手下の一回り小さいオオカミ型の魔獣が取り囲んできた。小さいとはいえ牛より大きく十分に大きい。
西の魔獣は……まぁもう、見て分かるけど低知能で魔法を使ってくるんだっけ? 変な怪しいオーラを放ってるし……それと連携だっけ? オオカミは元々群で行動をして連携をして狩りをするんじゃなかったっけ?
サイズと攻撃力が段違いな上に、魔法ですかぁ……。これじゃ普通の冒険者は近寄れないよな。情報も持って帰れないだろうな。
破壊力満点の物理攻撃に逃さないスピード、逃がしたとしても魔法の遠距離攻撃か。
少し考え事をしていると、威嚇をしてきて飛び掛かってきた。大きな前足で体を狙ってきて、大きく開いた口には牙が光り、涎を垂らし頭を食い千切るつもりで狙ってきていた。
獲物に止めを刺す時が、一番無防になりやすくキケンだと言う事を知らないのかねぇ……。急所になるお口が開いてますよ?
襲いかかりながら、ガオォォォォ!!と大きな咆哮で威圧をしてきた。
大きなボスのオオカミが、油断をしているのか始めっから止めを刺そうとしていた。それに動じず、ゆっくりと大きく開いた口に手を翳し、無属性の魔力弾を放った。
ボスッ!という音が鳴り響き、ボスのオオカミが口から血を吐き、後ろに吹き飛び地面に横たわった。起き上がろうと藻掻き、立ち上がるが再びドスッと倒れ体をピクピクと震わせていた。可哀想なので魔石を回収して止めを刺すと力が抜け動かなくなった。
他の手下のオオカミ達がボスがあっさりと倒され動揺し、威嚇をしていたが戦意喪失をしていた。危険を感じたのか、ただ立ちすくんでいたオオカミが逃げようと方向を変えると同時に魔石を回収をすると、その場でドサッと力なく倒れた。
……あれ? もう終わっちゃった?? もっと剣とかを使って戦おうと思ってたんだけど、まさかの魔力弾で? 魔法抵抗とか、軽減が付いてるかと思って……あの巨体を弾く為に少し多目に魔力を込めたんだけど、まさかそれでお亡くなりなるとは!
ついでに素材の回収をして……地中に転移をさせて埋葬をした。
戦闘が終わったのでバリアと結界を解除すると、皆が駆け寄ってきた。
「どうなったの? ユウくん、ケガはしてない? 大丈夫?」
「あの魔獣を、お一人で!? さすが若様ですね!」
「魔獣の死骸は、どこに?」
「放置すれば悪臭や不衛生だから、地中に埋めたよ?」
「なんと……魔獣ごときに、お優しい!」
「出番が、なかったぁー! つまんなーいっ」
一応、ボスだし危険かと思ったんだけど、任せても大丈夫そうだったな。次は、任せてみるかな。
「次、二人で戦ってみる? 無理そうなら代わるよ」
「「うん。戦いたい!」」
「俺達も!」
「それは……ダメだよ。下っ端のやつで瀕死になってたのはだれ?」
「…………ですよね」
気不味そうに5人がそっぽを向いた。