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庾亮4  孔子と荘子

孫潜そんせん孫放そんほうの二人が小さなとき、

庾亮ゆりょうさまの元に訪問したことがあった。


庾亮さま、訊ねる。


「孫潜はあざなを何と申すのだ?」

斉由さいゆう、と申します」

「何とひとしくなりたい?」

許由きょゆう

 ぎょう王よりの禅譲の詔を蹴った君子です」


うおっそれを庾亮さま、

権勢の申し子みたいな方に言いますか。


なかなかの肝っ玉である。

続いて庾亮さま、孫放に問う。


「孫放はあざなを何と申すのだ?」

斉荘さいそう、と申します」

「何と斉しくなりたい?」

荘子そうじ

 王よりの勧誘を蹴った君子です」


この兄弟は……。

なかなかに反骨。


なのでつい、庾亮さまは問うのだ。


「慕うのであれば孔子こうしであろう。

 そうではなく、何故荘子なのか?」


「聖人は生まれながらにして

 知りたるべきを知る、と申します。

 私はその境地には

 たどり着けそうもございません」


庾亮さま、幼い孫放の口から

飛び出てきたこの答えに、

大喜びするのだった。




孫齊由、齊莊二人小時詣庾公,公問:「齊由何字?」答曰:「字齊由。」公曰:「欲何齊邪?」曰:「齊許由。」「齊莊何字?」答曰:「字齊莊。」公曰:「欲何齊?」曰:「齊莊周。」公曰:「何不慕仲尼而慕莊周?」對曰:「聖人生知,故難企慕。」庾公大喜小兒對。


孫齊由、齊莊の二人は小き時に庾公を詣でる。公は問うらく:「齊由は何ぞの字なりや?」と。答えて曰く:「字は齊由なり」と。公は曰く:「何ぞと齊しからんと欲せんや?」と。曰く:「許由に齊しきたり」と。「齊莊は何ぞの字なりや?」と。答えて曰く:「字は齊莊なり」と。公は曰く:「何をか齊しからんと欲せんや?」と。曰く:「莊周に齊しきたり」と。公は曰く:「何ぞ仲尼を慕わずして莊周を慕いたるや?」と。對えて曰く:「聖人は生まれながらにして知、故より慕いたるを企むは難し」と。庾公は小兒の對うるに大いに喜ぶ。


(言語50)




七歳児にしてこの応答とか確かにヤバいわな。

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