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第51話 必死とか意味わかんないだからね!

 〈マスター動きました〉


 なぬ? でもこっちには何も来てないよ?


 〈もう一組のパーティーリーダーを攻撃しました〉


 え、どういう事? あいつら仲間じゃなかったの?


 私は自身の疑問をヘルさんにぶつける。


 実は私は三位のチームと一位のチームが裏で繋がっていると疑っていた。その理由の一つは私達に絡んで来た一位のチームの男の態度だ。


 何せあれだけ露骨に私達の事を牽制して居たのに三位のチームの人間には目もくれない。


 幾ら私が挑発してたからって、私達よりもランクが高い方をまるっと無視するのは露骨にやり過ぎだ。


 この世界の人間本当に嘘下手すぎる。もうちょっと頭使えよ。魔族の方が頭使ってるじゃん!


 それに私が言うのもなんだけど、三位のチームはEランクになりたてだとギルドの受付嬢さんが言っていた。


 そんな人間達がいきなりスケルトン祭りでトップ争いに食い込むのは中々無いでしょ?


 私達だってダンジョンボスがガシャドクロじゃなかったら二位にはなってないだろうしね。


「どうしたんですかご主人様?」


「……ハクア向こうの様子がおかしいよ」


「あいつらが動き出して、向こうのチームのリーダーを攻撃したらしい」


「えっ? ハクアの話だと仲間なんじゃなかったのかな?」


 うぐ!


「違ったのか仲間割れかは分からない!」


「おねちゃん必死?」


 おふっ!? そんな事無いもんね! 必死とか意味わかんないだからね!


「……とりあえず狙いは私達ではなかった。と言う事でしょうか?」


 そんな事無いと思うんだけどな~。


「かもしれない。状況が分からないから行こう」


「分かった。どっちみち大会どころじゃないもんね!」


「……エレオノごめん」


「大丈夫だよハクア! 今の段階で結構他を引き離して一位だからね」


 エレオノが冗談っぽく言ってくる。本当にいい子だな~。


 〈マスター皆さん、急いで下さい〉


 どうしたの?


 〈三人殺されました〉


 なっ!? 状況は? 詳しく!


 〈最初にリーダーの男が腕を切り落とされ、それに激昂した三人の仲間が斬り掛かり一撃で二人が死亡、その後更に運良く生き残った一人を叩き潰し、死霊術師も自身が召喚したスケルトンをなんらかの方法で操られ死亡しました〉


「なんて事を!?」


「皆ごめん。先に行く!」


「ご主人様!?」


 私は皆の返事を聞かずに、足の裏でウインドブラストを発動して移動する風縮を発動して、一気にスピードを上げる。


 すると、遠くの方に私に絡んで来た男と三人の人間が見える。


 何あれ? 片腕を切り落とされ座り込んだ男に、一人の女のようなフォルムの奴が手を翳している。


 そして手を翳された男の肌が泡立ち沸騰したようになり、身体から血煙が上がり肌が弾け飛んでいる。


 あれは魔法なのか?


 〈恐らくは……マスターこのまま行くのは危険です。それに彼はもう助かりません〉


 確かにね。でも、向こうの方はもう私を認識してる。このまま逃げても捕まるよ。絶対!


 〈それでも皆と合流出来れば〉


 ごめん。正直勝てる気しないから最初に会話でなんとかしてみる。その為にもまずは一人で交渉したい。


 〈確かに交渉というのなら一人で行くのは理に適ってますが……〉


 あいつらはずっと私を見てた。


 ──それは私に興味があるか、もしくは何かしらの理由がある。だからこそ話は出来ると思うし、私が注意を引けば奇襲もしやすい筈。


 〈分かりました。くれぐれも無理はしないで下さい〉


 私も無理はしたくない! ヘルさん、皆に会話の内容を伝えておいて。後、奇襲の準備もよろしく!


 〈分かりました〉


 間に合え!


 私は自分に可能な限りのスピードで一団に近付くが、冒険者の男は苦しみもがき。ブチャッ! と、およそ人から出た音とは思えない嫌な音を立てて弾け飛ぶ。


 クソ! 間に合わなかった。


 別に絶対助けたかった訳ではないけど、目の前でこんな死に方されるのは寝覚めが悪い。


「さあ、ごみ掃除は終わった。次は貴様だ」


  私の目の前で冒険者の男を殺し目の前の奴がそう言い放つ。


  ねえ、絶対強制死亡イベントあるでしょ?


『シルフィン:だから違いますって』


 スケルトン祭り決勝戦の最後に死亡イベントとしか思えないものが始まった。


 この世界私に厳しすぎるでしょ。


 て言うか、今度こそ絶対助からないかな? 本当に短い人生───いや、ゴブ生であった……。


 〈そこの訂正必要ですか? ふざけている暇はありませんよ〉


 精神の平穏を保つにはこんなんでも必要性があるんですよ! とはいえ、この状況はどうしたものか?


「お前がハクアか」


 リーダーっぽい奴がいきなり話し掛けてきた事に少しビビる。


 まさか、向こうから話し掛けてくるとはね。


「小娘貴様! ガダル様が質問しているんださっさと答えなさい!」


 次は一緒に居た先程冒険者の男を殺したとおぼしき女が、私が質問を無視したと思い吠えてきた。


「……はぁ、そうだよ私がハクアだ」


「フム、やはりそうか。だが報告とは姿形が違うな。それは何故だ?」


 報告……ね。


「あんた達は何者?」


「貴様、ガダル様が質問しているのよ。何を質問を返しているの!」


「良い、カーチスカ」


「ですが! ……いえ、分かりました」


 スゲェ睨まれてんですけど私じゃなくそっち睨めよ!


「なぁガダル様ヨォ、もぉいいだろォ! 殺らせてくれよ! サッキの雑魚のせいでもォガマン出来ねぇンだよ!」


「五月蝿いぞグロス。貴様も黙れ」


 なるほど、関係性はそういう感じか。


 ガダルと呼ばれたのがリーダー、カーチスカと呼ばれたのとグロスと呼ばれたのがその部下で同列──か、二人とも忠誠はあるけどカーチスカの方がいやに高いな、グロスは血の気が多そうなのは見た目通りか。


「ほう、この状況でも冷静に観察するか。なるほど、偶然とはいえグルドを倒しただけの事はある」


 ──なっ! グルドだと! あのグルド……。


 〈……マスター。エレオノの親に化けて居た魔族ですよ〉


 呆れたようなヘルさんのツッコミにビクゥ! と、身体が震えるが私は鋼の意思で冷静に答える。


 だ、大丈夫だしぃ~! お、覚えてるしぃ~!


 〈……マスター〉


 本当だもん! ちょっとしたド忘れだもん!


 〈それを忘れたと言うのでは?〉


 はう! ま、まぁそんな事より。


『シルフィン:あっ、誤魔化した!』


 五月蝿いぞ駄女神!


「グルドって事はあんた達は魔族か?」


「そうだ」


 チッ! 最悪だ。魔族が三人とか勝てる気がしない。


「この方はウィルド様に仕えし二強が一人ガダル様よ。お前如きゴブリンが気安く話して良い方ではないわ!」


 ウィルドってのがトップで目の前のガダルがNo.2か……。


 ふっ、死んだな私。


「そうか、お前は魔物だったな? と、言う事はグルドを倒した事で進化したか?」


 う~ん、何処までバレてるんだ私の情報? 異世界には個人情報保護法とか無いのか!


 〈ありませんね〉


 そうですかわかりました。


 でもここまでバレてるなら隠してもなんの意味も無い。それに下手したらそのまま、あの血の気が多そうなのけしかけられそうだよね?


「そうだよ。あんたの言う通り、グルドを倒してレベルが上がったから進化出来たんだ」


「くくっ! なるほどな」


 瞬間、ガダルと呼ばれた魔族からのプレッシャーが恐ろしいくらいに高まった。


 ヤバイ、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い、怖い。


 ▶スキル熟練度が一定に達しました。スキル【恐怖耐性LV.1】を獲得しました。


「ならば、グルドと戦った時よりも強くなっているという事か」


「……どうかな? あの時は沢山の冒険者が居たからなんとか勝てた。少なくとも今とは状況が違うと思うよ」


「だが、あの時、あの場所にお前と言うファクターが無ければ、あの状況は生まれなかっただろう?」


「過大評価だよ。私にそこまでの価値は無い」


「残念だ」


 ……これで諦めてくれたらうれしい……けど、無理だよなぁ。


「ならば、自ら貴様の力を確かめよう」


 やっぱりそういう展開だよね。


 その言葉を聞いた私は影魔法を使い、私を含めた三人を包み込みそのまま風縮を使い間合いを開ける。


「小賢しい真似を!」


 女が叫び私の張った影のドームを掻き消す。


 だがその時にはアリシアとアクアの全力のユニゾン魔法、インフェルノがガードも回避も出来ない距離まで迫っている。


 三人組に当たった瞬間、爆音を上げながらとてつもない熱量の蒼炎が火柱となって立ち上る。


 熱っ! 痛っ!


 私は微妙に逃げ切れず、爆風に飲まれ斬りもみ飛行する羽目になる。


「ご、ご主人様? えと、大丈夫ですか?」


「凄い転げ回ったね」


「うん、迫力あって凄かったかな!」


「回復」


 真ん中の二人なんか興奮してない? テンション上がってるよね!


「くくっ! 確かにステータスでは分からんな」


「だロォ、ガダル様よぉ! 早く殺らせてくれよ! 楽しみ過ぎて待てネェよ!」


「ガダル様、お怪我は」


「無い。カーチスカ、お前は周りを全て相手しろ。とりあえずは殺さず生け捕りにしろ」


「はっ、了解しました」


「グロスお前はハクアとやれ。あれの本気が視てみたい」


「勢い余って死んじまっても良いよなぁ!」


「構わん、死んだらそれまでだ」


 ははっ! 無傷かぁ~。ウチの一番の攻撃なんだけどね? しかも何か好き勝手言ってるし。


 ▶スキル熟練度が一定に達しました。スキル【恐怖耐性LV.1→LV.2】に上がりました。


「皆、とりあえず向こうの言う通りの分け方で行くよ」


「な、ハクア何を言ってるの! それだとあのデカいのとハクアは一対一じゃない!」


「そうです! せめてもう一人くらい!」


「あっちの方が圧倒的に強者だ。向こうのルールを破れば私達は皆すぐに殺される」


「──っ! それは……」


「大丈夫。死ぬ気は無いから」


「分かりました」


「アリシア!?」


「その代わり絶対に死なないで下さい! ご主人様が死んだら私も死にます」


「あぁ、それじゃ無茶は出来ないね」


 勝てるかな?


 〈難しいかと。ですが可能性はゼロではありません〉


 ありがと。


 ──さてと、それじゃいっちょやりますか!


 私達の戦いはまだまだ続く!! とか言ったら、このイベントスキップ出来ないかな?

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