宣言した通り、鬼族は獣人族を民間人含めて大虐殺した。アレンたち戦士鬼たちが前に出て獣人どもを半殺しにして回り、捕まっていた鬼たちが弱った奴らを徹底的に痛めつけてから殺していく。
血を流して悲鳴と助けを呼ぶ声を上げる獣人どもを、捕らえられていた鬼たちは愉快げな表情を浮かべて奴らを虐げて痛めつけて苦しめて、そして殺していった。
獣人どもも以前はああいう顔をして鬼たちを虐げていたのだろうか。まあそうに違いないのかもな。じゃなきゃ鬼たちがあんなに激しい憎悪に駆られることはなかっただろうし。
「―――――!!」
「――――!!―――!!!」
「~~~~~~っ!!」
「~~~!!~~~~~っっ!!」
あちこちから鬼たちの怒号と獣人どもの悲鳴が響く。高園や曽根、米田は耳を塞いで俯く。顔も真っ青だ。堂丸もドン引きして顔を背けている。
「なあ。サント王国の連中はもう帰ったらどうだ?もう終わったんだし。みんなアレンたちが今やってるところ見たくないみたいだし」
「………そう、ですね。応急手当が必要な人たちの処置が終わり次第、私たちは先に帰国します。コウガさんたちも後でサント王国に戻ってきて下さいね」
「まあやっぱり行かなきゃだよなー」
「それと………アレンさんのこと、頼みます。あなたしか彼女を止めることは出来ませんから」
「ああ。任せてくれ」
クィンは暗い顔のまま兵士団長と話を始める。戦いに勝ったのにあんな顔をさせたのは明らかに俺たちのせいだよな。
「私が甲斐田君を連れてくるわ。みんなは先に帰ってて良いからね」
「いえ…私も残ります」
藤原が元クラスメイトどもにそう告げると高園以外の3人は兵士団と一緒に帰国しに去ろうとする。
その途中でアレンたちが一斉に要塞城へ向かっていく。俺は民家地帯へ飛んで様子を見てみることにする。
「………これは凄いな」
民家や緑が燃えていて、獣人どもの死体があちこちに散らばっている。生きている獣人は一人もいなかった。今頃は要塞城地帯でも同じことをやっているのだろう。
「俺も………こんな大虐殺をしていた可能性があったかもしれなかった、のか」
頭の中に浮かぶのはさっきいた元クラスメイトどもと、ドラグニアで死んだ同じ奴ら。もしかしたら俺は……死んで復活したあの日、少し考えが違っていたら、あいつらをこんな風にぶっ殺して復讐する道を選んでいたのかもしれなかった…。
そんな可能性を思い浮かべながらぼーっとしていると、アレンたちがいつの間にか近づいてきていた。
「もう終わったのか?」
「うん。今日を以て獣人族は滅亡した。最初の復讐をやっと完了できた」
最初、か。獣人族だけじゃない。アレンたちの真の仇敵は魔人族だ。里を滅ぼした魔人を自身の手で殺さない限りは彼女たちの復讐人生は終わらないのだろう。
「疲れたろ。今からサント王国に帰るか?」
俺が問いかけるとアレンは仲間たちを見回してうーんと考え込む。続いてこの地をざっと見回すとこんな提案をする。
「この地全部を、鬼族の領地にしようかなって思う。どう、かな?」
俺ではなく鬼の仲間たちに確認をとる。少し不安そうだ。ここは憎い獣人族がいた地だったから、その負い目があるのかもしれない。
「良いんじゃない?まだ緑は残ってるし、住みやすそうだし」
「私たちって未だに家無しの身分だしね。そろそろ家が欲しいなって考えてたの」
「あのクソ獣どもが先住してたってのは気に入らねーけど、大地に罪はねーしな。俺も良いぜ」
セン、ガーデル、ギルスが賛成寄りの意見を発する。捕まっていた鬼たちにも反対的な意見や態度も出なかった。彼らにとってここは嫌な出来事しかなかったと思うのだが、全員そこは割り切れる性分らしい。
「この地に鬼族を住まわせる、というか鬼族の領地にする。この件は俺がサント王国の国王に伝えるよ。事務的な何かはそれからだ。で、みんなは早速ここで生活を始めるとして。アレンも今日はここで過ごすか?」
「ううん。私もコウガとサント王国へ行く。鬼族を代表して、このことをサントの国王に私が言う」
「分かった」
内心でアレンの成長に感心する。自分が鬼族を統べるんだっていう意思が感じられる。族長としての資質が見込める。
そこから色々話し合った後、アレン以外の鬼族は損壊が無い家に向かっていった。しかし問題が一つ。死体の処理だ。あちこちに獣人の死体が散らばったままだ。これらを全部処理するのはさすがに重労働だ。空も暗くなりつつあるし、あっという間に一晩経ってしまうだろう。
そこで、俺の番だ。懐から一つの種を取り出す。
「
「それって船で見た……」
アレンの指摘した通り、イード王国からアルマー大陸へ船で移動していた時に得たオリジナルアイテムだ。固有技能「感染」を「技能具現化」で物体化させた結果、一粒の種となって発現した。(38話参照)
この種を死体に植え付けるとそいつをゾンビとして使役することができる。その特性を活かして、死んだ獣人どもに一斉に植え付ける。
あちこちから体の損壊が激しい獣人どもが虚ろな目をしたまま立ち上がる。