目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第46話 揺れ動く想い

【自然公園】

時刻は14:40分。昼過ぎに下呂駅に着いた3人は駅のすぐ側にある定食屋に入って食事を済ませた後、バスで10分ほどの場所にある自然公園にやって来ていた


紅葉の季節ではなかったが、ダイナミックな自然が拡がるその景色に圧倒されている3人


「はあー、凄く素敵な景色ですわね!」


清楚系の梨香も素晴らしい自然に息を飲まれ、ずっと周囲の景色に目を奪われていた。その為、足元への注意が散漫になっている


「あっ!?梨香ソコ!足場がっ!」

「ふえっ!?」


自然公園をうたっている為なのか?歩行スペースは全面アスファルト舗装されてはいなかった。石畳で構成されている足場が途中で途切れている場所があったが、壮観な景色に目を奪われていた梨香はソレに気付けなかった

石畳の途切れている場所に靴を引っ掛けて、体勢を崩した梨香は側面から倒れそうになった


「ガシッ!」

「あ、ありがとう太一君…」

「梨香…大丈夫だったか?」


先頭をいっていた亜沙美は、背後から聞こえてきた梨香の悲鳴で反射的に振り向くと…梨香は太一の腕の中にすっぽりと包まれていた


「えっ!?∑( °口° )えぇっ!?」


あくまでも太一と梨香の関係は、小さい頃から面識のある親戚の仲でしかないと思っていた亜沙美は、突然目の前で2人が抱き合っている姿に言葉が消え、手に持っていたタブレットを落としそうになった




【15:30バス停】

ハプニングがあったが、自然公園を楽しんだ3人はそろそろホテルに向かおうとバス停にやって来た


「梨香。本当に大丈夫か?」


「えっえぇ…太一君が支えてくれたから」


(そっか!アレは恋人関係で抱き合ってた。とかじゃなくて転びそうになった立華さんを太一が支えてあげただけなんだ…良かった………んっ?何で私、良かったって思ったんだろ…)


仲は良さそうだが別に恋人関係とかではない太一と梨香。しかし、自分と太一だって正式に付き合いをしている!と言える間柄(あいだがら)でもない事を考える亜沙美


「……どうかしたのか?亜沙美…」


さっきから無言で考えている様に見える亜沙美の姿が、少し気になった太一が質問してきた


「べ、別になんてことはないよ……そうだね。少し喉が渇いちゃったくらいかな?あはは…」


「そ、そうか?…バスが来るにはもう少し時間あるよな。あそこの自販機で飲み物買ってくるわ。2人は何が良い?亜沙美は綾鷲茶だったよな?」


(太一君。私の好みは知らないのに、竹取さんの好きな飲み物は知っているんだ…)


「梨香……梨香!」

「えっ!?あっ、はい?」


「梨香は何飲むんだ?」


「わ、私も頼んで良いんですか?……有難うございます!それなら、りんごジュースをお願いします」


「分かった。待ってろよ!」


そう言って太一は、200メートルほど離れた場所にある自販機に向かった。亜沙美と2人になった梨香は、意を決して亜沙美に話し掛ける


「ねぇ…亜沙美さんって…太一君のことが…す、好きなのですか?」


「えっ!?Σ(*oωo艸;)エェ!?私が太一を!?」


「先ほど…倒れそうになった私を太一君が受け止めてくれた時…竹取さん。ずっとコチラを見て固まってましたよね?…それって、好きな太一君が私と抱き合ってたから…驚いていたのかなぁ?…って…」


「(;゜∀゜)イヤイヤイヤイヤ...な、な、無いってそんな事は!私と太一は…少し仲の良い幼なじみ程度でしかないからっ!」


2人で抱き合っていたのをジッ。と、凝視してしまっていたのを見られていた事に驚いた亜沙美は、必死になって否定していた




【バスの中】

バスに乗ってホテル【草壁アルメリア】に移動している3人。太一は梨香を見つめている


「な、何?太一君…」


「い、いや。何でもない!」


太一は生まれて初めて、自分の腕て異性を抱きしめた。転びそうな梨香を助ける。という目的ではあったが結果、同い年の女の子の身体の柔らかさと、梨香のほのかな甘い匂いを初めて体験した事を思い出し、真っ赤になった顔を見られまいと窓の外へと視線を外した


「ちょんちょん」

梨香は前の席に座る亜沙美の肩を指でつついた


「なんでしょうか?」


梨香は太一に聞こえないように、亜沙美に顔を近付けて小声で話した


「部屋に着いたら…2人で色々話しましょうね」


「は、はい!」

(来ちゃったー!絶対に太一の事を根掘り葉掘り聞こうとしているぅ!あの顔は絶対にそうだ!ど、ど、ど、どうしよ〜!?)


タダでさえ引き籠もりの亜沙美には、まだ知り合って間もない梨香と2人部屋で寝る。というだけでもハードルが高いのに、太一の事を尋問されると思うと「キリキリ」と胃が痛む亜沙美だった




続く

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?