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第15話 キズーの告白

「あ、あれ?私は、何を…。」


 私はいつの間にか気絶をしていた。

 人間の体を作り上げ、私は立ち上がる。


「は!皆さん無事ですか!?」


 私は他の皆が倒れていることに気付き、彼らの体を揺らす。


「はは、やめてよ。ガキ…ン…。は!リチュお姉さん!!」


 キズーさんを揺らすと、彼はそう言って目を覚ます。

 最初のところは寝ぼけてたのかな?

 私は次に、ガキンさんを揺らす。


「イーシャ…。待って…。は!リチュ姉!!」


 ガキンさんはそう言って、目を覚ます。


「ほ~んと、イーシャちゃんが好きなんだねぇ。ガキンは。」


 キズーさんが、茶化すように笑いながら、ガキンさんに向かって言った。


「な、なんだよ!突然!!」


 焦るガキンさんに、キズーさんは表情を変えず言う。


「気絶してた時、彼女の名前を呼んでたよ。」


「マジか!」


 顔を赤くするガキンさん。

 私は、彼の額に手を当てる。


「だー!! 熱なんかねぇよ!!」


 私の手を払うガキンさん。

 それを見て、キズーさんが言う。


「人間はねぇ。恥ずかしい時も、顔が赤くなるんだよねぇ。」


「おぉ~。そうなんですね!」


 私達が、そんな話をしていると、リードさんとリズさん。タンクさんが起き上がる。


「お前達、結構元気ね。この戦いの後なのに。」


 リズさんは杖をつきながら、私達にそう言う。


「これが、若さって感じがするな。」


「いや、私達も若い方だからな。」


 リードさんの言葉に、リズさんがツッコミを入れる。


「そういえば、クローバーは、何処だ!?」


 タンクさんが周りを見ながらそう言った。

 その言葉に、私達は周りを見る。

 気絶する前まで、私がずっとくすぐっていた彼女は、いつの間にか姿を消していた。


「またか。ダイヤの時と同じだ。」


 リズさんがそう言った。

 私達が、クローバーさんを探していると、気絶していたノワトルさんが動き始めた。


「おい!やばいぞ!ドラゴンが目覚めた!」


 リズさんがそう言って、気づいた私達は森の影に隠れる。

 杖をついていないと倒れそうなリズさんのことは、リードさんが担いで移動した。

 ノワトルさんは、周りをキョロキョロと見回し、クローバーさんが居ないことに気にしてか、悲しげな表情で鳴き、空へと飛んで行った。


「行ったか。」


 リードさんが森の影から出て、空を見る。


「クローバーが消えたのが少し不安だが、一旦村に帰ろう。」


 リードさんの言葉に、私達は賛成した。


 ──────────


 私達は『ヒューマ』の村に戻ってくる。

 リズさんは、村に帰ってくると、部屋を1つ借りて、眠ってしまった。

 リードさん曰く、彼女が使った『大噴水ウンディーネ』は大魔法と言われる種類に含まれるようで、大量のマナを集めることに集中し、回収する為、体調が悪くなるらしい。

 マナは人間達にとって、ないと困るものだが、1種類のマナを大量に集めると体に悪影響を及ぼすらしい。

 確かにマナって、美味しいけど沢山食べると苦しくなるものなぁ。

 そんな感想を抱きつつ、私は皆と一緒に夕飯を作り、食事をした。私は食べれないから、私の分はナイトバード達にあげたけどね。

 ナイトバード達の食事が終わり、私が部屋に戻ろうとした時、3階ある孤児院の屋上にあるテラスに誰かがいることに気づいた。

 私は、テラスまで移動して、その人物を知る。

 その人物は、キズーさんだった。

 彼は「はぁ。」とため息をついていた。


「ため息なんてついて、どうしたんですか?キズーさん。」


 私が彼に話しかけると、彼は驚いたように私を見る。


「あ!リチュお姉さん!い、いや。特にどうもしてないよ。」


 そう言いつつ彼は、再び外を見てため息をつく。


「ねぇ。リチュお姉さん。1つ相談してもいいかな?」


「なんですか?」


「僕、好きな人がいるんだ。だけど彼にとって僕は、ただの友達なんだよね。」


 ん?彼?彼って事は、男性だよね?恋愛って男性女性同士じゃなくても成立するのか。


「それに、彼には別に好きな人がいる。彼女は可愛いし、僕なんて、何故か周りから男の子だと思われているしさ…。」


 あ!それ私も思ってた。違うのか。ごめんなさい。


「まぁ、昔から冒険物の本ばかり読んでいて、他の子達と遊ぶこともなかったし、それもあってお風呂も1人で入ってたし。

 彼が話しかけてくれて、それから一緒に行動するようになって、最初は僕も友達感覚だったんだけど、段々と好きになっていったんだ。」


 彼女は私の方を見て、困ったように笑う。


「ははっ。僕どうしたら良いんだろう。彼と付き合いたいけど、告白したら今までの関係を壊しそう。それに、彼には好きな人がいる訳だし。」


 私は彼の質問に、私なりの答えを伝える。


「スライムには、性がありません。それに、身の欠片とマナが上手く融合することでのみ、子孫を残すことが出来ます。なので、私には『恋愛の正解』が分かりません。

 しかし、私だったら。好きな人が幸せになれれば良いなと考えると思います。」


 私の言葉に、キズーさんは「そっか。」と笑顔を見せる。

 私にも分かる。私の答えは、彼女の救いになっていなかった。笑顔に混じる悲しげな雰囲気がその証拠だ。


「相談に乗ってくれてありがとう。それじゃあ、おやすみリチュお姉さん。」


 キズーさんはそう言って、テラスから部屋に戻ろうとする。

 私とすれ違ってすぐ、彼女は「あっ!」と言い、私の方へ振り向いた。


「この事は、僕達だけの秘密ね!ぜーったい誰にも言わないでね。特にガキンには。」


 自分の唇に指を当て、「し〜。」と言うキズーさん。

 私は彼女の言葉に頷く。

 彼女はそれを見ると、自分の部屋に戻っていった。

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