「あ、あれ?私は、何を…。」
私はいつの間にか気絶をしていた。
人間の体を作り上げ、私は立ち上がる。
「は!皆さん無事ですか!?」
私は他の皆が倒れていることに気付き、彼らの体を揺らす。
「はは、やめてよ。ガキ…ン…。は!リチュお姉さん!!」
キズーさんを揺らすと、彼はそう言って目を覚ます。
最初のところは寝ぼけてたのかな?
私は次に、ガキンさんを揺らす。
「イーシャ…。待って…。は!リチュ姉!!」
ガキンさんはそう言って、目を覚ます。
「ほ~んと、イーシャちゃんが好きなんだねぇ。ガキンは。」
キズーさんが、茶化すように笑いながら、ガキンさんに向かって言った。
「な、なんだよ!突然!!」
焦るガキンさんに、キズーさんは表情を変えず言う。
「気絶してた時、彼女の名前を呼んでたよ。」
「マジか!」
顔を赤くするガキンさん。
私は、彼の額に手を当てる。
「だー!! 熱なんかねぇよ!!」
私の手を払うガキンさん。
それを見て、キズーさんが言う。
「人間はねぇ。恥ずかしい時も、顔が赤くなるんだよねぇ。」
「おぉ~。そうなんですね!」
私達が、そんな話をしていると、リードさんとリズさん。タンクさんが起き上がる。
「お前達、結構元気ね。この戦いの後なのに。」
リズさんは杖をつきながら、私達にそう言う。
「これが、若さって感じがするな。」
「いや、私達も若い方だからな。」
リードさんの言葉に、リズさんがツッコミを入れる。
「そういえば、クローバーは、何処だ!?」
タンクさんが周りを見ながらそう言った。
その言葉に、私達は周りを見る。
気絶する前まで、私がずっとくすぐっていた彼女は、いつの間にか姿を消していた。
「またか。ダイヤの時と同じだ。」
リズさんがそう言った。
私達が、クローバーさんを探していると、気絶していたノワトルさんが動き始めた。
「おい!やばいぞ!ドラゴンが目覚めた!」
リズさんがそう言って、気づいた私達は森の影に隠れる。
杖をついていないと倒れそうなリズさんのことは、リードさんが担いで移動した。
ノワトルさんは、周りをキョロキョロと見回し、クローバーさんが居ないことに気にしてか、悲しげな表情で鳴き、空へと飛んで行った。
「行ったか。」
リードさんが森の影から出て、空を見る。
「クローバーが消えたのが少し不安だが、一旦村に帰ろう。」
リードさんの言葉に、私達は賛成した。
──────────
私達は『ヒューマ』の村に戻ってくる。
リズさんは、村に帰ってくると、部屋を1つ借りて、眠ってしまった。
リードさん曰く、彼女が使った『
マナは人間達にとって、ないと困るものだが、1種類のマナを大量に集めると体に悪影響を及ぼすらしい。
確かにマナって、美味しいけど沢山食べると苦しくなるものなぁ。
そんな感想を抱きつつ、私は皆と一緒に夕飯を作り、食事をした。私は食べれないから、私の分はナイトバード達にあげたけどね。
ナイトバード達の食事が終わり、私が部屋に戻ろうとした時、3階ある孤児院の屋上にあるテラスに誰かがいることに気づいた。
私は、テラスまで移動して、その人物を知る。
その人物は、キズーさんだった。
彼は「はぁ。」とため息をついていた。
「ため息なんてついて、どうしたんですか?キズーさん。」
私が彼に話しかけると、彼は驚いたように私を見る。
「あ!リチュお姉さん!い、いや。特にどうもしてないよ。」
そう言いつつ彼は、再び外を見てため息をつく。
「ねぇ。リチュお姉さん。1つ相談してもいいかな?」
「なんですか?」
「僕、好きな人がいるんだ。だけど彼にとって僕は、ただの友達なんだよね。」
ん?彼?彼って事は、
「それに、彼には別に好きな人がいる。彼女は可愛いし、僕なんて、何故か周りから男の子だと思われているしさ…。」
あ!それ私も思ってた。違うのか。ごめんなさい。
「まぁ、昔から冒険物の本ばかり読んでいて、他の子達と遊ぶこともなかったし、それもあってお風呂も1人で入ってたし。
彼が話しかけてくれて、それから一緒に行動するようになって、最初は僕も友達感覚だったんだけど、段々と好きになっていったんだ。」
彼女は私の方を見て、困ったように笑う。
「ははっ。僕どうしたら良いんだろう。彼と付き合いたいけど、告白したら今までの関係を壊しそう。それに、彼には好きな人がいる訳だし。」
私は彼の質問に、私なりの答えを伝える。
「スライムには、性がありません。それに、身の欠片とマナが上手く融合することでのみ、子孫を残すことが出来ます。なので、私には『恋愛の正解』が分かりません。
しかし、私だったら。好きな人が幸せになれれば良いなと考えると思います。」
私の言葉に、キズーさんは「そっか。」と笑顔を見せる。
私にも分かる。私の答えは、彼女の救いになっていなかった。笑顔に混じる悲しげな雰囲気がその証拠だ。
「相談に乗ってくれてありがとう。それじゃあ、おやすみリチュお姉さん。」
キズーさんはそう言って、テラスから部屋に戻ろうとする。
私とすれ違ってすぐ、彼女は「あっ!」と言い、私の方へ振り向いた。
「この事は、僕達だけの秘密ね!ぜーったい誰にも言わないでね。特にガキンには。」
自分の唇に指を当て、「し〜。」と言うキズーさん。
私は彼女の言葉に頷く。
彼女はそれを見ると、自分の部屋に戻っていった。