ダンテ殿下が「客人」を迎えられた。
客人となったのは、虐待を受けていた貴族の庶子。
公では正妻の子とされているが。
エリア・ヴィオラ様。
可哀想な御方だ。
それ故、ダンテ様の優しさに心から惹かれ、そして恋をしている。
それもまた可哀想だ、だからこそ、私は言わねばならない──
「エリア、貴方のその髪も、肌も、目も、とても綺麗です。私は好きですよ」
「……で、も……」
「貴方を蔑む者や、悪く言う者の言葉など、聴く必要などありません。そのような輩に気を取られていては――貴方を大切に思ってくれる人の声を聴き逃しかねません」
ダンテ様が自分を卑下するエリア様を励まそうとしているのが分かりますが、これ、人によっては口説いてるようにも見えますよ。
「私は貴方の事が大切ですよ」
ダンテ様の言葉に、エリア様の頬が薄い紅に染まる。
「え、あ……あり、がとう……ございます」
まるで恥じらう乙女のようで、それが不憫だった。
ちょうど良い、ものもあるし、エリア様には言わねばならない。
ダンテ様を愛することがどれほど大変なのかを。
「ダンテ殿下」
「ん? どうしたのですか、フィレンツォ?」
「エドガルド殿下からお手紙が届いております」
「兄上から?」
ダンテ様は手紙を受け取られました。
「クレメンテ殿下がいらっしゃられるまでまだ時間がありますのでお目を通すのが良いかと」
「では、そうさせていただきます。エリア、すみません。ちょっと部屋に戻らせていただきますね」
「は、はい……」
エリア様を残してダンテ様は部屋に戻られました。
私はエリア様に近づき、エリア様に膝をつき、問いかけました。
「エリア様、貴方様はダンテ様の事を愛していらっしゃるのですね?」
「?!」
エリア様は顔を真っ青にして、視線をさまよわせます。
「ご安心ください、私は貴方様の愛を否定するわけではないのです」
「え……あの、どう、して、ですか?」
「身分や生まれで差別するつもりはないのです、私はダンテ様の事をお伝えしたいのです」
「ダンテ、殿下……の?」
「はい」
エリア様の細い手を優しく包むように握って私は言いました。
「ダンテ様の先ほどの口説くようなお言葉は全て善意から来ております」
「……つまり、僕のこと──」
「いいえ、違います」
エリア様が勘違いしているであろう事を否定します。
「ダンテ様は無自覚に好意を持っている方に善意を向けます、つまりあれは本人はアプローチのつもりでやっていません。エリア様が大切だからこそ本心を述べています」
「え、え……」
エリア様の顔がほんのりと赤くなります。
「エリア様、もう一つ言わなければいけないことが」
「な、なんでしょうか?」
「ダンテ様は無茶する癖があります、分かりますでしょう?」
「……はい」
「ダンテ様の兄君のおかげで少しだけよくなりましたが、まだ大部分良くなっておりません」
「ぼ、僕の事で、負担、を……」
「いいえそれは違います。ですがそういうこともあり、ダンテ様には──」
「複数の伴侶が必要との見解が私どもで出ています」
その言葉にエリア様は戸惑っているようでした。
それもそのはずでしょう。
「エリア様、貴方には申し訳ないですが、貴方だけではダンテ様を制御できないのです」
その言葉に、エリア様は暗い表情をして、客人の証であるブレスレットを触り出しました。
不安から逃れるかのように──