「失礼。貴官の所属及び階級を伺いたい」
上野動物園を出た二人を待ち構えていたように、軍服の男が立ちふさがる。
腕には憲兵という腕章。
「所属は、ない。
最後の一言を聞いてざわつく憲兵。
はっ、と我に戻り必要以上に形式張った敬礼を返す。
それに構わずすざくの手を引いて、先をゆく
「魔法少女は」
「軍では結構有名でね。少なくとも名前だけは。シベリア出兵でも結構、参加しているからね」
それ以上はすざくは聞くことはなかった。いずれ、
「そろそろ、昼過ぎだ。お腹空かないかい?」
顔を真赤にしながら、すざくは無言でうなずく。お腹空いているの、わかったのかな?という恥ずかしさを隠しながら。
「こ......こ.....は......」
初めて入る『レストラン』に緊張するすざく。基本、すざくには外食という文化がない。他の家でお呼ばれして食べることはあっても、外で知らない人に混じって飲食をともにするというのは全く、経験したことはなかった。
「最近話題の『洋食』屋だよ。若い人に人気だ」
そう、見た目は少女の
《......!!》
見たこともない料理の名前がカタカナで並ぶ。達筆な筆によるその名前は、すざくの心を躍らせるのに十分なものであった。
「ポークカツレットなんかいいかな?」
嫌な訳はない。
女給を呼び、オーダーする
もじもじしながら、すざくは食事を待つ。数十分後。テーブルはできたての料理に溢れていた。
「えぇ......」
何とも言えないすざくのため息。どれも見たことない料理ばかりである。
そっと、ポークカツレットにフォークを伸ばすすざく。衣の上にはたっぷりとソースが掛けられている。
口に含む。
今までにない味が口の中に広がる。
「......!」
声が出ない。涙ま出そうな感じだった。
聖アリギエーリ高等女学校の寮で出される食事は和食か、『本場』の西洋料理である。将来の海外生活に備えるための配慮であった。
眼の前の『洋食』はそのいずれとも違っていた。
こってりとした肉の味でありながら、和風の雰囲気も感じさせる――そして使うのはフォークとナイフ。パンではなくライスがまた――
「気に入った?」