私には本当に個性的な隣人がいる。
―ピンポーン
「来たな。」
別に楽しくない訳ではない。ただ、ちゃんとしろよとは思う。だって、
「音羽ちゃん、飯食いに来たで!」
「ここは食堂やないっつうの。」
ドアを開けて一言目がこれとは、コイツ舐めてるな。
隣に住んでいる新宮カレン。同じ国学社大附に通う同級生。私と同じように一人暮らしをしているが、料理スキルが皆無なので、私が仕方なくご飯を作ってあげている。
「それで、最近は何か作れるようになった?」
「ウインナーは焼けるようになったし、ピザトーストも作れるようになったで!」
「一時に比べたら素晴らしい進化やな。卵焼きは?」
「もちろん!」
作れないんだな。私としては自分で作ってくれるたありがたいんだけど、これが最近の楽しみだったりするのがちょっと悔しい。本当に世話の焼けるやつだ。
今日作るのはちゃんこ鍋。作るっていっても具材を切って、キューブ状の鍋の素を入れるだけだから、料理下手なカレンでも作れそうだ。最近寒くなってきたのもあるし、ベストなチョイスだろう。
「切って…入れるだけなんや。」
「カレンって、切れるの?」
「流石にそれくらいはできるわ。」
最近買った大きめの鍋に具材と鍋の素を入れて、クツクツと火にかける。あとは鶏肉に火が通るまで待つだけだ。
「鍋って『冬が来た!』って感じするよな。」
「やから、今日、鍋にしたんやけど、よかった?」
「よかったも何も、いつも美味しいご飯ありがとうな。」
「どういたしまして。」
トロトロにとろけそうな白菜とニラ、しっかりと食べ応えのある鶏肉。時間が経つにつれ出汁が濃くなっていって、この後のラーメンが待ち遠しくなる。
「よし、カレン!〆のラーメンは頼んだ、」
「失敗するよ、いいの?」
「いいよ、一緒に食べたげるから。」
逆にどんなダークマターが出来上がるのか楽しみだ。私はカレンに指示を出しながら、ラーメンを作らせる。電子レンジで温めて、沸騰した出汁の中に投入。ほぐしながら、袋に書いてある時間通りに茹でる。タイマーが鳴って、カレンは鍋を持ってきた。
「上手くできてるかわかんないけど…」
少し不安そうな顔を浮かべている。私は麺を数本取って食べた。
「そんな心配しなくていいよ。美味しいから。」
「本当⁉︎」
「信じられないなら自分で食べてみれば?」
カレンは恐る恐る麺を摘み、啜る。
「ヤッター!美味くできてる!」
「これで、レパートリーがまた増えたね。」
子供が大きくなっていくとこう思うのか。少し寂しいと。
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誠に勝手ながら、自分の年齢に追いついたので、更新ペースを落とします。
ですが…
明日から新作を連載します!
全49話+アフターストーリーを予定しています。ぜひ、そちらも読んでみてください!