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第21話:手紙

 船長が「周囲の安全を再度確認しろ!」と船内の通信網に呼びかけた。


「機関異常なし」、「医務室異常なし」、「食堂・調理場異常なし」、「後部展望デッキ異常なし」、「前方展望デッキ異常なし」、「メインデッキこれより確認する」、「船倉異常なし」、「三等左舷側異常なし」、「同右舷側異常なし」、「二等左舷側、右舷側共に異常なし」、「特等異常なし」、「一等異常なし」、「前方、塞いでいた島がありません」、「後方異常無し」、「左舷前方異常なし」、「右舷前方異常なし」、「メインデッキ異常なし、尚お嬢様とパーティーは無事」等の報告が上がってきて「全部署確認終わり、特に異常なし」と最後はクルーがお客様の部屋を回って一室一室確認して行き時間こそかかったものの「お客様を全確認、異常なし」といった通信がブリッジに届いたのであった。



「これより、本船は一時間遅れですが通常の運航に戻ります。到着時刻が一時間遅れますことをお許しいただきたい、それと尽力してくださった方々に感謝の意を表します」という船長の言葉で、ふたたび出発した。



◆ 私『ウィオラ』視点


 そのころ、部屋に戻った私たちパーティーは冒険者証を見て、唖然あぜんとしていた。


「確かにとっても強かったのは認めるけれども」と私がいった。


「ランク八は無いんじゃないの?」と続けた。



「それを言うなら、私なんて全部八よ?」と『セリア』がいった。



『ゲルハート』がつぶやいた。


「上級職の輪郭りんかくが見え始めたな」と。



「その前に死線が見えそうだ」と『ウィーゼル』がいった。


「敵がバンバン強くなる」と続けると。


「違いねえ」と『ゲルハート』がいった。


「行く先々でコレだから……逃れられない宿命でも持ってんのかね?」と『ウィーゼル』がいった。



◆ 俺『ウィーゼル』視点


「船旅で、多少はゆっくりできると思ったんだがなあ」と『ゲルハート』がいった。


「持って三日だったな、ゆっくりできたのは」と俺が突っ込んだ。


「どうする? キシリについたらカイリに行くか? それともサラトに行くか?」と『ゲルハート』がいって追加する。


「俺はサラトに一票、理由は軍隊と逆方向だからな」といったのであった。


「山越えにするように説得してみるか」と俺がいった。


「戦闘に徴用されるのだけはぴらごめんだぜ」と『ゲルハート』はいった。


「昼食に行かないか? そろそろ十四時だぜ。一時間遅れってことは全部遅れてるだろうから」と俺がいう。


「上手くすれば功労者ってことで、馬車くらいは用立ててくれるかもしれんしな。まあまずは山越えで相談して見ようぜ」と『ゲルハート』がいった。




◆ 私『ウィオラ』視点


「お昼食べ損ねちゃいましたかね」と私がいった。


「流石にそれは無いんじゃない? 一時間遅れって言ってたから十四時とか?」と『セリア』がいった。


「男性陣誘って食堂行ってみますか?」と私がいった。


「そうしましょう」と『セリア』がいって立ち上がった。


 すでに武具は外して元通りの格好に戻っている。




 そうして皆で食堂の前まで来ると、いの一番に来てしまったため誰も居なくて、また一番かな? と思っていると。


「お待ちしておりました」と案内係がやってきた。


 そして案内された。


 ガラガラではあったが徐々に人は集まりつつあった。


 いつもの席であった。


「ようこそいらっしゃいました。食前酒でございます」と給仕さんが言った。


 そして四人分注ぐと、サインを厨房に送った。


「一旦乾杯しよう」と『ゲルハート』がいった。


「少し相談があるんだが」と『ウィーゼル』もいった。


「ではまず、乾杯から」と『セリア』がいった。


「では私も」と私も乾杯した。


「で相談って山越えルートで行く話?」と『セリア』が突っ込んだ。


「最初っから、そっちのつもりだと思ってたけど?」と私も乗った。


「では計画通りに」と『ウィーゼル』がいった。




「サラト産のノブール豚の丸焼きでございます。切り分けますのでおっしゃってください」と給仕さんが丸焼きを持ってきた。


 皆、お腹が空いていたため、あっという間に全部無くなった。


「先程の豚の焼き香草腸詰でございます」と香ばしい匂いのする香草腸詰を持ってきてくれた。


 大げさに言うまでもないが、そちらもいつの間にかなくなって行った。


「ペルトナ産の鶏肉串焼きにございます」と次も給仕さんが持ってきてくれた。


 皆食べ方は異なるが美味しそうに食べていた。


「合間の時間ですが、大旦那様からお手紙を預かっております、どうぞ」と私に直接渡されたのだった。


◇ 手紙


 船の窮地を救っていただき、誠に感謝しても感謝しきれません、山越えの馬車を用意させますのでキシリから使ってやってくださいますでしょうか。

 ルートはキシリ→サラト→リングイング→ペルトナ→ザブール→ヘイスリ→ラス→カルトルで手配させていただきました。

 各町の宿は当商会の専属宿がございますので何なりとお申し付けください。


 オシュル商会、総支配人オシュル・ギャレリア




◆ 私『ウィオラ』視点


 それを無言で読む、達筆たっぴつで書かれていたのであった。


 給仕さんに私が「ありがたく、頂戴ちょうだいいたします。とお伝えください」と私が笑顔でいうと。


 給仕さんが深々と私に向かって一礼して、即厨房に早歩きで向かい厨房の魔導通話機に何かしゃべっているようであった。


 そしてその手紙をしっかりとしまう。


「脚は手配できたようです。宿も確保できました。カルトルまで」と私がパーティーメンバーにいったのであった。


 『セリア』がいった、「なんて書いてあったの?」と。


「後でお見せしますよ。ここではちょっと」と私が言葉をにごしていったので『セリア』は察してくれたようであった。


「さてデザートは何でしょう?」と心待ちにしていると私がいった。


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