六人がけのテーブル席に向かい合って座った。真ん中は航太と日南だ。
金髪の少年が少し離れたところに立っており、残りの男たち二人の姿はなかった。まだ外にいるらしい。
「まず、これはリエトくんから聞いた話。リエトくんはさっきの、赤い髪の人ね」
と、北野響が話し出し、航太が確かめる。
「取り乱していた方ですね」
「うん、そう。わたしたちはこの魔法学校の周囲にある森に迷い込んで、彼と出会ったの。それでいろいろなことを教えてもらったんだけど、まず、敷地の外に出られなくなったんだって」
航太はいかにも興味深そうな顔でうなずく。
「なるほど。それで?」
「それまでたくさんの人がいたのに、どんどん人がいなくなって、十五人にまで減った。そこから殺人事件が起き始めて、今では三人だけになっちゃった」
「容疑者は絞り込めているんですか?」
航太の問いに横から日南が口を出す。
「ああ、もちろんだ。おそらく魔法を使って殺害したんだってことも分かってる。分からないのは動機だ」
「動機、ですか」
「リエトの話では毎日誰かが殺されてた。オレたちが来てからも、毎日誰かが殺された。
これがもし作者の想像したことだとしたら、以前とのギャップが激しすぎる。だから、悪意ある第三者の想像かもしれないと思ったんだが」
日南の推測を聞き、航太は顎に指を当てて考え込む。ミステリー小説の名探偵にでもなったつもりか? 似合うとは思うけど。
そんなことを考えながら横顔を見ていたら、航太が口を開いた。
「第三者である可能性は、たしかに否定できませんね。この虚構は創作企画と言って、主催者が作った世界観を共有し、参加者がキャラクターを作るというものらしいですから」
日南がはっとして大きな声を出す。
「そういうことだったのか。道理でいろんな世界から人が来るわけだ!」
「ゲートが開いたり閉じたりするっていうのは、参加者を広く受け入れるための設定だったんだ」
と、北野も納得した顔で言った。
航太は二人を見て一つうなずき、話を進めた。
「ですが、現実世界から確認できたのは八人です。いずれも作者の作ったもので間違いありません」
「え?」
驚く日南の隣でもう一人の男が言う。
「
「そうか。燈実たち三人は同じ世界から来てたけど、現地人であるリエトたちと作者は同じだった」
それにしても飽きてきたな。早くこの話し合い、終わらねぇかな。
あくびを噛み殺すオレと裏腹に、日南は疑問を投げかける。
「でも、それが殺人事件で消されてるってことだろ? どういうことなんだ?」
航太はあいかわらず真面目に話を進める。
「こちらの話をしましょう。まず、この虚構にはロックがかかっていて、中身を確認できない状態にありました」
はっとする日南たちへ、航太は付け加えた。
「おそらく、敷地の外に出られなくなったのがそれだと思われます」
つまり、この虚構にロックがかかったのと、住人たちが外へ出られなくなったのは同じことだった。外側と内側で確認できた事象が違っていただけだ。
「作者は思い出ごと消したいと長年思い続けていましたが、ロックがかかっているとは自分でも思わなかったようです。また、消したいと願うには過去に事情があったわけですが、それももう六年は前のことです」
「六年……」
日南がつぶやき、腑に落ちたように言う。
「そういえば登場人物の時間は、想像されたところで止まるんだったな。それ以上先には行けないから、ずっと同じ日を繰り返し続ける」
もう一人の男も気づいたのか、日南越しに北野を見る。
「でも、自分でそれに気づくことはできなくて、俺たちは北野ちゃんと出会って分かるようになった」
「ああ、そうだ。あくまでもこれはオレの推測だが、消したいと願うようになったことがきっかけでロックがかけられたんじゃないか?」
まあ、そういうことだろう。