ただ一つだけレオナルドの体に変化があった。事件の翌日、ミレーネがレオナルドの
医者にも
そして事件から三日目の朝、セレナリーゼは今日も起きてすぐにレオナルドの部屋に向かった。レオナルドの部屋で過ごすのが、この数日セレナリーゼの
セレナリーゼとしてはこの日も一日、レオナルドの
そうしてシャルロッテへの謝罪を終えて、今はもう夜だ。戻ってからはできるだけレオナルドの部屋で過ごしていたセレナリーゼは、レオナルドを見つめながら、シャルロッテとの会話を思い出していた。時間が
セレナリーゼとフォルステッドが王城の応接室で待っているとシャルロッテが入ってきた。
「そんなのセレナリーゼが気にすることなんてないわ。あらためて公爵家次期当主
「ありがとうございます」
「フォルステッド様も
「……はっ」
話を
「今回のことだってどうせレオナルドが原因なのでしょう?」
「?いえ、そんなことはありませんが……」
なぜレオナルドが原因などと言われるのか、セレナリーゼには訳がわからなかった。
「フォルステッド様とセレナリーゼに任せて今日も来ていないようですし、本当
「っ、いえ!兄は決してそのような―――」
レオナルドはお茶会を楽しみにしていた。今だってまだ目覚めていないから来れないだけだ。セレナリーゼは言える
「いいのよ。兄妹だからって
「っ!?」
(シャルロッテ様は何を言ってるの?現実……?)
シャルロッテの言い方がひっかかり、セレナリーゼの中に困惑が広がる。今回のお茶会でレオナルドに対して何かするつもりだったのだろうか。
「今後レオナルドが何を言ってきても負けちゃダメよ、セレナリーゼ。今回の規模でのお茶会はいくら私が王族だといっても中々難しいけれど、何かあったらいつでも力になるから」
シャルロッテは本心から言っている。レオナルドに対するものもセレナリーゼに対するものも彼女にとっては正当な評価だ。そしてフォルステッドとセレナリーゼも自分と同じ考えだと思っている。だからこそ、次期当主の交代劇が起きたのだろう、と。自分はあなたの味方だと言いたげにシャルロッテは楽しそうな笑みを浮かべて話しているが、セレナリーゼはとても笑ってなんていられなかった。
(いくら王女でも……レオ兄さまを悪く言われるのは
セレナリーゼは一度小さく息を
「……兄は私が次期当主となったことを応援してくれています。私なんかのことを本気で……。だから私はそんな兄の期待に
言葉にした瞬間、自分自身でもストンと
(そうだ。私はレオ兄さまの期待に応えたい。レオ兄さまの気持ちを裏切らない自分でいたい)
「……レオナルドが?」
シャルロッテは信じられない気持ちから目を見開いてしまう。
「はい。兄は私のことを大切に思ってくれています。ですから、シャルロッテ様が気にされているようなことはございませんよ」
セレナリーゼは笑ってみせた。それは彼女が貴族として気持ちを表に出さないように仮面を
「そ、そうなの。ならいいわ」
シャルロッテは、セレナリーゼの笑顔に
その後もシャルロッテの口からはナチュラルにレオナルドを
シャルロッテとの話を終えたセレナリーゼ達が応接室を退出し、馬車に乗ったところで、
「セレナリーゼ、よく
フォルステッドがセレナリーゼを
「いえ、これくらいレオ兄さまに比べたら何でもありません」
「そうか……」
フッとフォルステッドの表情が
「お父さまの気にされていたことはいかがでしたか?」
「ああ。おそらく今回の事件にシャルロッテ様は
フォルステッドが謝罪を急いだ理由はこれだった。王族であるシャルロッテが裏で糸を引いていたのであれば
「そうですか……。では犯人についてはわからないままですね」
「そうだな。もしかしたらレオナルドが何か知っているかもしれないが、とりあえずは注意を
「はい」
そうして、セレナリーゼは精神的に
「はぁ……」
思い出してしまったことを追い出すように、そして荒れた気持ちを落ち着けるように、セレナリーゼは一つ息を吐く。
そして
「レオ兄さま、早く起きて……」
早くレオナルドの優しい笑顔が見たい。レオナルドにいっぱいお礼を言いたい。
その後、何を思ったのか、セレナリーゼは顔を真っ赤にしながらそろそろとベッドに上がるのだった。
この数日、毎日同じ時間帯にレオナルドの部屋へと様子を見に来ていたフォルステッドは、目にしたものに一度
レオナルドが目を覚ましたのは翌朝のことだった。