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第125話 存在感

 今日はお姉ちゃんの高校で文化祭。

 というわけで友達と一緒にやってきたよー!

 当のお姉ちゃんは

「アンタも受験で忙しいでしょうし、来なくても大丈夫」

 なんて言ってたけど行くに決まってんじゃん。

 来年は私も通うかもしれない高校の文化祭だ。是非とも雰囲気を知っておきたい。

 ついでに受験勉強で疲れた気分を転換したい。

 遊びに誘った友達の二人も快諾してくれたので、今日は存分に遊ぶよー!



 何故かお化け屋敷が異様に多い中、学校の校舎の一つを回っているととある人達を見つけた。

 一人は私のお姉ちゃん。

 もう一人は見知らぬ男の人。

 あれ、誰なんだろう。

 声を掛けようかと思ったけど、お姉ちゃんの様子が遠くから見ても何やら変なので止めた。

 二人の会話が喧噪の中ながら、わずかに聞こえた。

 聞こえた言葉の中に、「黒山君」と隣の男子へ呼び掛けたようなものも含まれていた。


 黒山君と呼ばれた男の人は、何と言うか特徴のない普通の見た目だった。

 お姉ちゃんの話からはもっと奇抜なのを想像していた。

 実際に見ると、失礼だけど存在をあっという間に感じられなくなるような不思議な雰囲気を纏っていた。

 これ以上は上手に説明できない。だが敢えて説明すればそんな人だった。


 あの人が、黒山さんって人……?


「あれ、何かあった?」

 隣にいた友達が心配そうに話しかけてきた。

「へ? あーゴメンゴメン、お姉ちゃんがいたかもって思っちゃって」

 友達にはそう答えてその場を離れた。



 二年五組の教室が見えてきた。

 お姉ちゃんのいるクラスは確かここという話だ。

 今働いているのかなー、と様子を探ったところで

「あ、お姉ちゃん」

「……アンタ何してんの」

 受付がお姉ちゃんだったことに気付いた。

「何って文化祭を楽しんでんだよ。ここって……お化け屋敷?」

「うん」

 出たよ。この学校でお化け屋敷見るのもう9軒目だよ。

「なら……もういいよね」

「うん……」

「さすがにね……」

 友達二人もお化け屋敷は満足したので、ここはパスすることにした。



 その後適当に二、三の出し物を回って帰ることになった。

 友達と別れてから考えていたのは当然文化祭のこと。

 とりわけ、黒山さんと見られる男の人のこと。

 存在感が薄い人のように評してしまったが、思い返すと何か不思議と容姿は忘れる気がしなかった。

 お姉ちゃんからは黒山さんからの写真などは特に見せられていない。特にスマホで撮ってるわけでもないらしい。

 お姉ちゃんと関わりが深く、私にとっては将来同じ学校の先輩になるかもしれない相手なのだ。

 一応姿を憶えておいて損はないだろう。


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