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第126話 誕生日

 文化祭も終わって数日経った頃の休日。

 秋が周りの木々の葉を赤く黄色く燃えさせて、すっかり季節を感じる風景になっていた。

 そんな景色を無視してベッドの上で寝転びマンガを読んでいたら、メッセージが入った。


 どうせ差出人はあの女子四人の内の誰かに決まってる。

 本心に沿うのなら、猛烈にシカトしたい。

 でもそんなことしたら差出人が誰であれ、とある悪鬼羅刹の類から報復を受けることは明らかだった。アレについては一刻も早く退治されてほしい。

 平和を第一に望む俺は仕方なしにスマホにてメッセージのアプリを開いた。


「皆、ミユの誕生日が近い」

 差出人は加賀見だった。

「へー、そうなんだ」

「ミユちゃんの誕生日っていつなの?」

「11月27日」

 日高・春野が反応する。グループチャットだがよく見たらいつも女子四人と俺が使うところではなく、メンバーに安達の名前はなかった。

「だからミユの誕生日前に皆でプレゼントを見て回りたい」

 あー、そういうことですか。でもさ。

「プレゼントを各自用意するだけなら別に皆で集まる必要ないんじゃないか」

 一応俺からこんなメッセージを送ってみた。

「アンタ、バカ? プレゼントだけじゃなくて誕生日当日の企画もするつもりだから皆で集まった方が効率的でしょ」

 加賀見からこんな返事を頂きました。

「いや、それなら企画のこともプレゼントの件と併せて説明しろよ」

「アンタなら一々言わなくてもそんぐらい察することなんて訳ないじゃん。最近弛んでんじゃないの?」

 何か滅茶苦茶なこと言い出した。アイツは俺がエスパーか何かだと思ってらっしゃる? もし俺がエスパーだったらその能力をお前と縁を切るために活用しまくってるぞ。間違っても今みたいにお前の意向に唯々諾々と従う状況に甘んじることなんてないぞ。だから神様、どうか俺に加賀見という悪魔を祓えるような超常的な能力をお恵みください。もう自分で退治しますから。


「うん、行こう行こう」

「明日か来週土曜なら空いてるよ!」

「同じく」

「じゃあ明日なんてどう?」

 俺の切なる願いなど露知らず、女子三人は全員で集まるという方針で早速日時を詰めている。

 俺は行くとも行かないとも言ってないのだが、例によって俺もその決まった日時に集まる義務が自然発生するのだろう。行かないなんて意思を伝えてもそれが叶うことは絶対にない。悲しいかな。

「それじゃあ明日13時で。黒山、忘れないこと」

 ほらね。

「黒山へ:遅刻したらその時間だけ罰が重くなるからそのつもりで」

 後からこんなメッセージが追伸されたときはもう恐怖しか感じなかったよ。明日の13時だな。電車の時刻調べて、と。遅延してもいいように1時間前に着く便に乗らないと。



 誕生日かー……。そう言えばそういう概念あったなー……。

 現代を舞台にしたマンガやラノベなら、主要キャラの誕生日に何かしらのイベントを起こすのはあんまりにもありふれた、鉄則のようなものと言っても過言ではない展開だと思うがこうして現実に起こっても何だか頭が追いついてない。

 今回は安達の誕生日を祝うという趣旨だが、この調子だと加賀見・春野・日高の誕生日のときもおんなじことをするってことだよな。

 ってことは最低でも年に四回は奴らの催しに付き合わなきゃいけないってこと……⁉

 思考がネガティブな方へと進んでいき、マンガを読む気力が段々となくなっていく。丁度ベッドの上だし、一旦寝て忘れよう。そうしよう。


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