翌日に俺は加賀見・春野・日高とともにショッピングセンターへ来ていた。かつてコイツらとともに遊びに行ったのと同じ所だ。
集合時間の30分ぐらい前に着いてまだ他に誰もいなかったのでスマホをいじって時間を潰していたら、駅の方から見慣れた人影がやって来た。
「へえ、来たんだ」
「お前が来いって言ったからな」
加賀見だった。
高校の制服を着ていると辛うじて高校生だとわかるが、この背丈で私服だと相変わらず中学生ぐらいに見える。
そういう容姿の美少女がお好きな男性もそれなりにいることだろう。是非とも引き取ってあげてほしい。ついでに人様に迷惑を掛けないようしっかりしつけてほしい。
「まあいいけど、変な邪魔はしないようにね」
「そう言うなら最初から俺を呼ばなきゃよかったんじゃないのか」
そのときは俺は大いに喜んでお前らに安達のプレゼントやらパーティーやらを一任してたのにな。
「何言ってんの? ミユの友達であるアンタがいなきゃ盛り上がりに欠けるでしょ」
「そんなことないだろ」
それに俺と安達の関係が友達と呼べるのか疑問なんだが。
加賀見の脅迫を背景として事あるごとに安達の用事や遊びに半ば強制的に付き合わされる関係は友達なのか。もっと殺伐とした何かじゃないのか。
加賀見の戯言に仕方なく付き合っていると春野と日高もやって来た。春野が
「あれ、今日の黒山君普通の格好してるね」
と突っ込んでくる。
うん、春野と外で行動をともにするときは奇抜な格好が多かったからね。春野からしたら普通の服装の俺が寧ろ奇異に映るんだろうね。
理由はただ何となく奇抜な格好してくるのが面倒だったからなんだけどね。
食器、ファッション、アクセサリーのコーナーを巡って安達が喜びそうな可愛らしい品物を各自のセンスで見繕っていく。
「ね、これプレゼントに丁度いいんじゃない?」
「ん、ミユにはピッタリかも」
俺には安達の趣味や嗜好がよくわからない。一応曲がりなりにも数ヶ月ぐらいの縁があるものの、よく観るコンテンツとかは俺と合わないのだ。
そんな俺が口を挟もうにもそもそも挟めない。加賀見もそれを知っているからか俺へは特に意見を求めなかった。
俺への嫌がらせのためだけにどんなに俺に関係ない話題でも意見を言わせようとするコイツにしては非常に珍しい態度だ。
つまりそれだけ今回の安達に対する誕生日へのお祝いに真剣であるということだ。
……失敗はできないな。
失敗したら加賀見がどう暴走して俺にどんな害を及ぼすのか想像もつかない。というか想像したくない。
安達の誕生日当日は気を引き締めなければ。
「どうせなら全員でお金を出し合って高いもの1つ送るってのは?」
「賛成! そっちの方が色々選べそう」
女子達が誕生日プレゼントについて色々話し合っていく。
俺は女子達の話し声を傍に聞き、後ろから付いていく。
「黒山が費用8割出してくれるって」
「言ってねーよ」
訂正、俺も女子達の話し合いに加わる。
「あれ、おかしいな。アンタの言いそうなことを先回りで言ってあげたんだけど」
「そうだな。俺もお前がおかしいと思うから一度医者に診てもらえ」
「ま、まあまあ二人とも」
「費用は割り勘。誰が多い少ないとかはナシにしよ」
俺と加賀見のくだらないやり取りを春野と日高が抑える。
前々から思ったことだけど春野と日高の存在が俺には助かるぜ。俺と加賀見だけだったら血みどろの争いにエスカレートしてたかもしれない。