夜になり、ご飯を食べ終えててお風呂に入る時も、カイアはキラプシアを一緒に連れて行きたがった。俺は少し悩んだが、どうするかをキラプシアに委ねることにした。
小さい頃からならすと、お風呂好きになる猫もいることだしな。実家の猫がそれだ。
浅めの洗面器にお湯を入れて、その中にキラプシアを入れてやり、湯船に浮かべる。
こうすればカイアも一緒にお風呂に入っている気分が味わえるだろうと思った。
幸いなことにキラプシアはお湯がお気に召したようだった。カイアは嬉しそうにキラプシアをかまってやっていた。
いざ寝ようという段階になり、やはりというか、カイアはキラプシアと一緒に寝たがって、子ども用ベッドに連れ込んでしまった。
「カイア、それだけは駄目だぞ。キラプシアはとっても小さいんだ。お前の体で潰してしまうかも知れない。朝起きてキラプシアが死んじゃってたりしたら悲しいだろう?」
そう言うと、カイアはとても残念そうにしていたが、キラプシアを両枝でベッドから持ち上げて、俺に手渡してくれた。
「朝になったらたくさん遊んであげような。
キラプシアには専用のベッドを用意してあげよう。ほら、ここに入るんだ。」
俺は底トレイが外せて掃除の楽な、透明なハムスター用のケージの中に、チップ、トイレ砂、水飲み場やらを設置し、更に寝床、ホイール、かじるための木を入れてやった。
こう見えても妖精さんだから別に必要ないのかも知れないが、あって困るわけでもないしな。実際アエラキはトイレに行かないし。
カイアはトイレなのかなんなのか、たまに俺が最初の頃出してやった植木鉢の土に乗って、根っ子を付けていることがある。何をしているんだろうな?と気になってはいるが、本人が説明出来ないので理由は謎のままだ。
ハムスターなら夜行性だが、キラプシアは特にいつ寝るとか、そういうのはないとアンデオールさんから聞いていた。なんなら他の妖精たちが寝ているところを見たことがないと。ひょっとしたら寝ない可能性だってあるよな。動物に見えても動物じゃないし。少なくとも今は眠そうには見えない。
カイアとアエラキが寝るのは2人が精霊だからで、妖精のキラプシアは寝ないものだと言われれば、そうなのか、としか言えない。
もともと精霊にしたって、人間と暮らしていること自体が、本来の姿と異なるのだろうし、生態についてはわかっていないことが多いのは、先日読んだ本で知っている。
翌朝、朝食を取るとすぐに、俺はやりたいことがあったので、カイアとキラプシアを連れて裏庭に出ることにした。
「カイア、キラプシアを一緒に連れて来てくれないか。きっと喜ぶぞ。」
カイアがコックリと体ごとうなずく。アエラキは円璃花が見ててくれている。
リビングで積み木をしていたアエラキを見ていたキラプシアの前に、カイアが近寄って両枝をのばすと、キラプシアはカイアの枝の上に素直に乗った。キラプシアはカイアの体の上を移動して頭の上に乗っかったのたが、カイアは気にせずそのまま歩いて、俺とともに裏庭に出た。かわいいな。
「さて。カイア、手伝ってくれないか?」
カイアは俺にそう言われて不思議そうに首をかしげ──る為に体ごと横にかたむけた。キラプシアもカイアの頭の上で、体をかたむけて真似っ子をしているのが大変愛らしい。
カイアの頭には髪の毛の代わりのようにまばらに枝が生えているのだが、そこに乗って器用にバランスを取っている。
最初は急に足元がかたむいたことで焦って反対側に飛び移ったのだが、すぐに慣れて落ち着いたかと思ったら、おんなじポーズを取り出したので思わず笑ってしまった。
俺は家の裏の庭の前に穴を掘って、アンデオールさんの村の森にあった木の若木を出して植えた。そしてカイアに、
「この木を大きくして貰えないか?」
と頼んだ。キラプシアを譲り受ける際に、何か気にかけてやれることがあるか聞いたところ、アンデオールさんから言われたのは、時々大きな木のあるところに連れて行ってやって欲しいというものだった。樹木の妖精は本来木の上で暮らしているものらしい。
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