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第112話 飯テロ配信・その①

【配信アンケート。

 1.蜃狩り配信。(50.0%)

 2.ケルピー狩り配信。(50.0%)】


:おw

:きちゃああああ!

:50:50!

:楽しみ!


「たくさんの方が参加して下さっているのに、皆さんよく何度も50:50が狙えますねえ……。いつも感心します。」

 呆然としながら美織が言う。


「まあ、次の配信でどっちやるにしても、一通り食べてみたいものばっかだったし、いつかは絶対やるんだから同じじゃない?」

 と獄寺ちょこが言う。


「まあ、それもそうですね。ではまず、ケルピーから狩りましょうか。」

「そんなに食べたかったの?」

 と獄寺ちょこが笑う。


「……実は。」

 と恥ずかしそうに言う美織だった。

 次の日、葛西臨海公園ダンジョンに来た美織と獄寺ちょこは、下層に潜っていた。


「ケルピーは音に敏感で、すぐに逃げてしまう魔物ですから、気配を絶って近付きましょう。ちなみにオスがわきにくくて、ひとつの群れで複数のメスをはべらせるタイプの魔物でもありますね。」


「ケルピーは、オスの角が薬の材料になるから珍重されてるのよね。」

 と獄寺ちょこが言う。


「そうなんですか、それは知りませんでした。オスはそもそもの数が少ないから、余計にですよね。ちなみに何の薬なんですか?」


:俺知ってる。勃起不全にきくんだよな

:バイアグラと違って心臓に負担もないから、心臓に疾患のある年寄の金持ちに人気

:1体で10体以上ものメスを相手にするケルピーさんのオスの角ともなれば、そりゃ効果がありますわ


「それ、なんて読むんですか?なに……不全?なんでしょうか。」

 と美織が首を傾げる。勃起なんて言葉は見たことも聞いたこともなかった。


:ぼっきふぜん、な。いわゆるED。

:男には大切な薬ですよ

:ようするに男の子の男の子が元気のない状態が勃起不全


「……なるほど、わかりました。」

 真面目な顔をしてうなずいているが、男の子の男の子が元気のない状態、というのがわかっていない美織であった。


 それでもなんとなく、聞いてはいけないことのような気がして、更に尋ねるようなことはしなかった。


 ケルピーは下半身が魚、上半身が馬の姿の水辺に生息している魔物であり、水中にいると、潜ってしまって狩りづらいのだが、今は水辺で日向ぼっこをするかのように、群れでくつろいでいるようだった。


「メスだけみたいですね。」

「そーね、残念。オスがいるなら角狙いたいとこだったけど。肉なら普通にドロップするし、1箇所に集まってるから、あたしの爆弾で一気にやっちゃおうか。」


「そうですね、そうしましょう。」

「オーケー。」

 獄寺ちょこは隠密で姿を消すと、そっとケルピーの群れに近付き、爆弾を投げつけた。


「ピイイイ!」

 ケルピーの悲鳴が聞こえ、次々に姿を消して、上半身の肉と、下半身の肉を、それぞれドロップした。


「いい感じに両方ドロップしたわね!」

「さっそく持って帰って食べましょう!」

 美織はスキル定着スクロールで手に入れたアイテムボックスレベル10に、ケルピーの肉をしまって自宅へと戻った。


 アイテムボックスはマイナス効果が確認されていないことから、使うことにしたのだ。状態を停止する時空間魔法がかかっているとされており、中に入れた食べ物が腐らない。


 もともとダンジョンのドロップ品は、地上の普通の食べ物と比べて、常温でも長持ちするものではあるが、やはりドロップ直後の状態をキープ出来るというのは大きかった。


「──それではさっそく食べていきましょうか!ケルピーの上半身は、まずは馬刺しでいただきます!」

「赤身部分でユッケも作ってみたわよ。」


 料理過程の配信を終えた美織と獄寺ちょこは、そう言って、料理を写真に撮って、獄寺ちょこがSNSにアップした。カメラで料理が映るようにして配信を始める。


 作ったのは、ケルピーの上半身の肉の刺し身、下半身の肉の刺し身、上半身の肉のユッケ、下半身の肉の鍋だ。


 上半身の肉は馬の肉の味で、下半身の肉はフグに似ていると言われている。


「んん〜!やっぱり馬刺しって美味しいです!私お肉の中で馬刺しが1番好きなんですよね!ちょっと今日はお腹いっぱい食べるつもりで、お母さんに夕ご飯いらないって言っておきました。家族も今日はケルピーのお肉を食べる予定です。」


「ユッケも歯ごたえがあって美味しいわ。」

「馬肉のユッケは初めてですけど、とっても美味しいですね!甘めのタレと相性が抜群です。ちょっとご飯取ってきます。」


 そう言っていったん席を外した美織は、1階からご飯をよそった茶碗を持って戻って来た。獄寺ちょこにも客用の茶碗に盛り付けたご飯を差し出す。


「ユッケはよく危ないっていうけど、魔物に寄生虫はわかないからね。これほど安全な生肉はないわよ。」


:そうなのか

:寄生しようとしても生きられないらしいな

:魔物の不思議な身体構造のひとつだな


「続いて下半身です!こちらはフグに似た味らしいですね。まずはポン酢でお刺身でいただきます!」


「最後に鍋が待ってるわよ。あんまり食べすぎないように、その分のお腹のスペース残しときなさいよ。」


:ちょwwwすごい量w

:フグより高級なケルピー肉を、そんなに1度に大量にw

:フグと違って量も取れるし、免許がなくてもさばけるから、もっと気軽に手に入ったらいいのにな

:くそおおお!食べてええええ!w

:まあ、いおりんが幸せそうで何よりやけどもw


「……マジ、優勝だわ……。」

 フグの上位互換と言われる、ケルピーの下半身肉の鍋を食べた獄寺ちょこが、恍惚の表情でそう呟き、コメント欄は食わせろで溢れたのだった。


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