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一日目:夜(22:00)

一日目:夜(22:00)

 ――カ゛ラン゛、コ゛ロ゛ン、ギロ゛ン、ボロ゛ン。



 また、あの不気味なチャイムが鳴り響いた。



『午後十時になりました。みなさま、部屋にお戻りください。各個室、および生贄の間にいない者は、処刑となります』


 うさ耳ピエロマスクの声ではない、AI読み上げ音声の声だった。あのピエロ、もしかしてもう寝ているのか?






 僕は自室――扉に『黒崎 誠一郎』と書かれたネームプレートの貼ってある部屋に入り、内鍵をかけた。



 尻ポケットからスマホを取り出し、ベッドに寝転んだ。ふかふかで、疲れた体が沈み込んでいくようだった。


 スマホがネットに繋がらないかなと期待したけれど、圏外だった。ここはどこなんだろう……? あのうさ耳ピエロマスクの目的は何なんだろう?




 とにかく、僕は絶対にこのゲームを生き延びなければならない。そのためには、もっと参加者たちのことを知ることが必要だ。誰にどの役が振り当てられたのか、そして何をしようとしているのか。もっと、注意深く観察しないと。


 それに、りんちゃんのことも気がかりだ。あ、そういえばまだ貰ったクッキー食べてないや。今はおなかいっぱいで眠いし、明日食べるか。サイドテーブルの上に置いておこう。



 気になるのは、ロン毛の男――筆川。生贄投票で一票を獲得し、宇佐霧がサイドテーブルの引き出しを開けようとしたら動揺していた。


 あの一票を入れたのは、僕だ。筆川は活発で好戦的な性格だ。どの役であれ、早いうちから動かしておきたい。


 それにホストの屑山。彼は佐藤と手を組んでいた。僕をチームに入れてくれると言っていたけれど、何を考えているのかよく分からない男だ。何を考えているのかよく分からないと言えば、佐藤もだ。彼は何もかもが怪しすぎる。


 大学生の宇佐霧と、高校生の二階堂は僕に対して友好的だ。しかし、宇佐霧は遠慮なく他人の部屋に入り引き出しを開けようとする男だ。油断はできない。だが、味方にいる分にはとても頼もしい。



 とにかく、情報を集めないと。まだこの建物の中をすべて探索していない。信頼できる仲間をつくることも重要だ。二日目以降はチームが出来上がるだろうから、なるべく多くのチームに所属してみんなの動向を探っておきたい。


 僕、宇佐霧、二階堂でチームを組むとして、屑山、佐藤はチームだから、残りのりんちゃん、筆川、猫多、鳥頭の三人のうち仲間に引き込むなら誰がいいだろうか。


 まぁ、ここで今あれこれ作戦を考えても、今夜僕が死ぬかもしれないし、あまり意味はないのかもしれないのだけれど……。



「ふぁああ」

 僕はもう一度、大きなあくびをした。涙もちょっと出た。


 ああ、考えれば考えるほど、眠くて思考がまとまらない。僕は大きなあくびをした。まぁいいか、明日考えよう。

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