朝だ。起きた。僕はどうやら生き延びたらしい。
サイドテーブルの上のスマホを手に取り見ると、時刻は00:00を指していた。このスマホを最初に見たときからそうだった。壊れているのだろう。しかし、習慣とは怖いもので、僕は朝起きると必ずスマホで時刻を確認してしまうのだ。
大きく伸びをして、目ヤニのついた両目を指で擦った。風呂場の脱衣所にいくと、服を脱いでシャワーを浴びた。
言うまでもなく、僕は朝風呂派だ。寝汗をかいて気持ち悪いからというのもあるが、一番の理由は激務だったからだ。
夜は風呂に入る暇もなく働いていて、かといってお風呂キャンセル界隈に所属すると、中学校教師という大勢の人前に立つ職柄上非常にまずいので、朝出勤前に必ずシャワーを浴びていたのである。
あの過労死RTAのような過酷な生活の中で、朝シャワーを浴びている時間は、僕にとっての数少ない生きがいだった。だが、今はどうだ。貞操帯は今この瞬間も外れず、股間に張り付いたままになっている。
これじゃあ股間が洗えないじゃないか。このデスゲームが終わるころにはすごい臭くなっていそうだ。というか、病気になりそう。それに、床に転がっている大量の大人のおもちゃも、僕を嘲笑っているようでとても不快だ。
股間以外を洗い、風呂場を出る。置いてあったタオルで体を拭いて、用意されていた服に袖を通した。悪趣味なセンスだが、他に着る服もないのだから仕方あるまい。
洗面台の鏡に映る自分の姿を見ると、なんだか本当に囚人になったみたいに思えた。僕が今着ている全身鼠色の服は、昔見た少年院のドキュメンタリーで受刑者たちが着ていたものにそっくりだった。
用意された着替えが、これなんだもんな。本当に性格の悪いピエロだ。囚人服が置いてあった、今は空っぽになったラックを見ながらため息をついた。
と同時に、あの不気味なチャイムが鳴りだした。
――カ゛ラン゛、コ゛ロ゛ン、ギロ゛ン、ボロ゛ン。
『午前六時です。ってことで、オス豚ども~~起きやがれ~~~!!』
うさ耳ピエロマスクの声が、朝から耳障りに響き渡った。
時計を見に、最初に連れてこられた大きな部屋に行くと、まだ昨日の死体があって一気に現実に引き戻された。そう、これはバリタチ人狼ゲーム。命をかけた戦いに、僕たちは参加してるんだ。
ふくよかで丸刈りの男の死体の虚ろな眼球から目をそらし、僕は壁にかけられた丸いアナログ時計を見た。
時刻は、午前六時半。