* *
それからしばらくの間、今後のエリクサーの取り扱いについて、王宮側と父カイルズとの間で話し合いが行われた。
結論としては、近隣の友好国には「聖地」から「回生の木」を移植することで、現地でもエリクサーの開発ができるよう、こちらから全面的にサポートするというものだった。
ハルコンとしては、エリクサーの「タイプA」も「タイプB」も各国で製造することで安価にできるので、大変ありがたい話だった。
エリクサー開発の拠点がファイルド国にある限り、各国に影響力を及ぼすことが可能だ。
だから、陛下や宰相としても、その辺りを落としどころにしているようにハルコンには見受けられた。
「とりあえず、ハルコンのこれまでの功績に報いるために、爵位を用意した。だが、7歳の少年に爵位を授けることは前例がなくてな。先ずは男爵からだが、それでよろしいか?」
「えぇ、構いません」
宰相の言葉に父カイルズが応じ、それから深々と頭を下げた。
「ローレル卿、ミラについては騎士爵だが、問題ないな?」
「えぇ、大変感謝申し上げます」
父カイルズもローレル卿も、自分の子の活躍が王宮に認められて、親としての幸せを噛み締めるような表情を浮かべていた。
ふとミラと目が合うと、彼女もこちらにニコリと笑って返してくる。
それから、半身を乗り出して顔を近づけてきて、
「ハルコン、ホンとありがとう。父上に漸く親孝行ができて、とても嬉しいんだ!」
そう耳元で囁くミラ。
それは良かったと思っていると、ミラがスッとこちらの頬にキスをしてきた。
「えっ!?」
ミラの顔は、満面の笑顔。どうやら、お礼のつもりらしい。
2人の王族のいる前で、なかなかの肝の座りっぷりだが、陛下もシルファー先輩もたまたま見逃して、気づけなかったようだ。
「それはそうと、ハルコンよ。王宮に今20台の冷蔵庫が設置されておるのだが、誠に素晴らしい機械であるな。アレらもオマエの発明で間違いないのか?」
「はい。アイデアは私で、試作品の製作はいつものようにドワーフの親方にお願いしております!」
「そうであったか。今年は夏が終わって秋になっても暑さが続いておる故、冷蔵庫には大変世話になっておる。オマエの発明のひとつひとつが、セイントーク領発で世の中を豊かにする、……大変ありがたい限りであるな!」
「陛下、お褒めの言葉を頂き、誠に感謝申し上げます!」
ハルコンはそう言って、父カイルズと共に深々と頭を下げた。