「それで……ハルキはどう思ったの? その動画を見て……」
「うーん……正直、超能力とかはどうでもいいんだ。サリアちゃんが話したいなら何だって聞くし、言いたくないのならそれで構わない。――ただ俺は、何も知らない奴らが、サリアちゃんを追いかけ回すのが許せないだけなんだ」
ハルキ……
今ここでイレイズを使ったら、ハルキはどんな顔をするだろう?
ハルキのことだ、もしかしたら褒めてくれるかもしれない。
だけどイレイズを見せると、私たちがヴェルミラの人間で、何故地球にいるのかを言わなくてはいけない。
ダメだ、やっぱり今は言えない――
「ありがとう、ハルキ。とりあえず外に出る時は帽子を被るし、髪型のことも考えてみる。今はこれしか答えられないんだ……こんなので、大丈夫かな……」
「もちろん、大丈夫だ。俺が伝えたかったのは、サリアちゃんを探し回ってる奴がいるっていうことだったから。――あー! 言うこと言えたら、腹減ってきたわ!」
「え、何? もしかして昼ご飯食べてないの?」
「サリアちゃんにどうやって伝えようって考えてたら、妙に緊張しちゃってさ。結局、飯食えなくって」
「ハハハ、なにそれ。じゃ、カレー食べに行こう、今日は私のおごりで!」
私はお尻についた汚れをはらい、ハルキの手を引いて立ち上がった。
「だ、だけど、サリアちゃんは飯食ったんだろ?」
「大丈夫、カレーならいくらでも食べられるから。――あ、確かランチは十四時までだ、急ごう!」
インターネットで知った、近所にある数少ないオシャレなカフェ。いつか、そこのカレーランチを食べたいと思っていた。私たちは自転車を飛ばし、カフェへと急いだ。
***
「で、本日二度めのカレーを、ハルキさんと食ってきたってわけか……美味かったか? そこのカレーは」
「い、いや、レクトくん、話題にするのはそこじゃありませんよ」
「分かってるよリオ、冗談だ。――正直、ハルキさんはサリアの力に気付いてるんだと思う。もしかすると、ラジオで事故のニュースを聞いた時から、気付いてたかもしれん」
帰宅して、ハルキと話した内容をレクトとリオに伝えた。私と同じように、レクトもハルキは既に気付いていると思っているようだ。
「最初にレクトとゴミ屋敷掃除をした日、やりすぎちゃったのかもね……そういや初日に、不用品を消したこともあったっけ。私たち、ちょっと無用心だったのかも……」
「きっと、量術で出来る事に慣れすぎてるんだ、俺たち。――ああ! そういや、こないだのマジックショーもやりすぎたかもしれんな!!」
レクトはそう言って頭を抱えた。
「でも今の話を聞くと、僕たちが量術を使えると知っても受け入れてくれそうじゃないですか? ハルキさんは」
「その場合、どうする? 俺たちは地球人って事にするのか? それとも、ヴェルミラ人だってカミングアウトするのか?」
「そ、それは難しいですね……どちらにしても、僕はハルキさんとミツキさんに嘘はつきたくありません」
「ヴェルミラ人をカミングアウトするとなると、地球侵略の話までしないといけなくなるからね……だから、私も言えなかった」
私たちの調査期限まで、あと二ヶ月と三日。現状、私たちは死んだことにして、地球を諦めてもらう作戦を考えている。
だが、ちょうど一ヶ月となる三日後、その作戦は無に帰すこととなった。