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第14話 うわぁ


「――さっそく若い女を家に連れ込みましたわね!」


 アパートの自室に帰るなり、ミワが私を指差しながら叫んだ。当然のように私の部屋にいるけれど、まぁ今さらなのでわざわざツッコミはしない。


「……あれ? ここ、優菜の部屋じゃないの? なんでミワさんが?」


 おっとご新規さんであるユリィさんがツッコミを入れてしまった。そうか、いくら同じアパートの住民だからといって自室に上がり込んでいることはないものね。


「――ふっ、勝ちました。私は優菜さんの部屋の合い鍵を持つ女……」


 ドヤ顔をするミワだった。未成年相手にドヤ顔をするミワだった。女子校生相手にドヤ顔をするミワだった。なんかこっちが恥ずかしくなるから止めてくれません?


 あと、合い鍵を持っているんじゃなくて、魔法で勝手に開けているだけでしょうが。


 私としては「またアホなこと言ってるな~」程度のミワの発言だったのだけど、


「くっ!?」


 何が何だか分からないけど、なんか悔しいな? みたいな顔をするユリィさんだった。この人のペースに乗せられると戻って来られなくなりますよー? 平凡な感覚という意味で。


「はい、というわけで。同じアパートの住民同士、仲のいい交流をしているのでした」


 ちょっと強引に纏めてみる私。


「……いや、それで納得するのは無理かなぁ?」


 さすがに誤魔化ごまかせないようだった。まぁそうだよね。


「とはいえミワやアルーとの出会いから話していると長くなりますし……」


 いや「なんか勝手に寄ってきた」だけで済むような気もするけれど。それで納得してくれるかなぁ?


 と、私が頭を悩ませていると、


「ふっ、ユリィさんとやら。つまりあなたは――まだ優菜さんの秘密を知るには好感度が足りないのです!」


「好感度が!?」


 ガガーン! と、背後に落雷したみたいな顔をするユリィさんだった。あれもしかして同類? ノリがミワやアルーと同じタイプの人ですか?


「……ユリィさんが知りたいなら教えますよ?」


 そもそもダンジョンの中でも教えようとしたし。


「そんな簡単に!?」


 ガガーン! と、マンガみたいに白目になるミワだった。やっぱり同じタイプだ。なんで私の周りに集まってくるエルフはこういう感じばかりなのか。ファルさんにはぜひ頑張っていただきたい。……ファルさんは別の意味で変な人だしなぁ。


 なんてことだ、まともなエルフがいない。

 分かりきっていることを再認識させられる私だった。





「――さっそく女を家に連れ込んだのね!」


 仕事から帰って来たアルー(もちろん当然のように私の部屋に直行)がミワみたいなことを叫んでいた。この似たものエルフ……。


「はいはい。アホなこと言ってないでまずは手洗いとうがい」


「はぁい」


 頬を膨らませながらも大人しく洗面台に向かうアルーだった。


 そんなアルーの様子をユリィさんは興味深げに見つめていた。


「……あぁ、なるほど、育てている……」


 昨日私が口にした「アルーとミワを私が育てている」発言に納得したっぽいユリィさんだった。


 さてアルーが戻ってくるとまた騒がしくなるし、その前に準備を始めてしまおうかな。


 今日の夕飯はキムチ鍋。

 ユリィさんが参加するのでちょっと多めにしなきゃいけないけど、遭遇したのがスーパーだったので食材は買い足してある。


「ゆ、優菜。やっぱりいきなり夕飯まで食べさせてもらうのは……」


「まぁまぁ、アルーたちによれば今日は『実地研修の祝勝会』らしいですし。それならパーティーメンバーであるユリィさんもいなきゃいけないでしょう」


「……いやぁそれはただの言い訳というか建前だと思うけど……。ただ優菜と一緒の夕飯を食べたいだけなんじゃないの?」


「いや、それはないですね。何だかんだで毎日一緒に食べていますので」


 だから強いて言えば「今日はいつもよりいい野菜/お肉を!」という感じなのでは?


「うわぁ」


 なぜかドン引きするユリィさんだった。


「何ですかその反応?」


「いや、女たらしだなぁ凄いなぁとね……。そうか、これがユー・ナスキー先生の著作にあった『百合ハーレム』ってやつか……」


 誰が女たらしやねん。

 ほとんど交流がないユリィさんからまでもそんな評価をされて泣きたくなる私だった。



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