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第11話:いざ出撃

 村人の話だと、バイレーンの奴らは、牛や馬、豚も盗んでいくという。

 子供の誘拐でもムカついたのに、青馬さんの話を聞いていても立ってもいられなくなった。


「エイジ。殴り込むのに武器はいらないのですか?」


「いらんよ。一応銃は持っていくが、素手で十分っぽいし」


 リリムも呆れ顔だが、俺はやると言ったらやるのだ。ルソン村はこの国とのバイレーンの国境沿いだっったはず。


「じゃあ村に寄って村人たちに少しの間自分で身を護るように言ってくるか。その後バイレーンに直行だ」


「エイジ。あなたは本当にバカですね」


 リリムの皮肉と同時にドアの向こうから、床がきしんだ音が僅かに聞こえた。さてはミアだな。盗み聞きしてたっぽい。


「え、エイジ! い、いきなりドアを開けるなんて!」


「悪い悪い。で、何か用か?」


「……お父様の具合が心配になって……」


 ああ……。やはり聞いていたのか……まあ仕方ないな。


「大丈夫だミア。お父上の薬は俺が必ず取ってきてやる」


「え?」


「バイレーン帝国に行ってくる」


「な、何をしに行くのですか!?」


 ミアは通り過ぎようとする俺の肩を、ガシッとつかみ叫んだ。


「お父上には薬が必要なんだろう。だから俺が取ってくるって言ってるんだ」


「……エイジ……」


「エイジ。バイレーン帝国は危険度は未だ未知です。第三級サードソルジャーが射った矢でも、刺されば死にます。装備を整え夜間に出発しましょう」


 リリムも俺の考えに賛成のようだ。しかしミアは……。


「エイジ! あなたまでお父様のように……!」


「………どういう意味だ?」


「お父様はバイレーン帝国に捕虜にされ、酷い目にあったのよ! あの病気もその時の人体実験の影響で…」


 人体実験、という言葉を聞いて俺はカチンと来た。捕虜にそんな真似をするとは。


「……そうか。だったら猶更いかなきゃならないな」


「ど、どうして!? あなたまで……!」


 ミアは泣き出しそうな顔をしている。本当に優しい子だな。俺はそんなミアの頭をなでると、出来るだけ優しい声で言う。


「じゃあ聞くがミア、君はお父上に健康になってほしくないのか?」


「……え? そ、それは……」


「お父上の病気を治してやりたいだろう?子供誘拐するような国にはツケの清算として、ポーションくらいもらっても問題ないだろ」


「……」


 俺の説得が効いたのか、ミアは俯いてしまった。


「でも……お父様はバイレーン帝国に行くな、と……」


「お父上の病気を治してやりたいんだろう?だったら俺が薬を取ってくる」


 リリムがミアに言う。


「リリムもバイレーン帝国はこの地にとって脅威となるであろう印象は受けました。エイジならきっと薬を持ってきてくれると信じています」


「……分かりました。私もついていきます」


「いや、俺とリリムだけで行く」


 ミアの申し出を、俺はやんわりと拒否する。


「エイジ!」


 ミアが非難するような目で俺を見た。ここは理由を言った方がいいな。


「ミアにはやってほしい事がある」


「……な、何かしら?」


「俺とリリムが子供達を救助してすぐにルソン村に逃げられるよう、警備隊の人たちと馬車を出来るだけ用意しておいてこれ」


 いくら助け出しても、その場からすぐに離れられないのでは話にならない。


「な、なるほど。分かったわエイジ!」


 ミアはようやく笑顔になった。よし、これで憂いは断てた。後はバイレーンに殴り込みに行くだけだ。あまりゆっくりしてられない。青馬さんの病気は結構症状が進んでいるようだ。

 俺は村の子供たちを助け出すため、リリムと共に早速“夜襲”をかける事にした。

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