「……エイジ」
「下がってろミア。こいつらは俺に用事があるらしい」
俺はミアに下がるように言った。正直、こいつらが「勇者」なら好都合。とりあえずブチのめすだけだ。
だがその前に一つ確認しておこうか。
「お前ら全員学生だな?」
そう、高宮こずえと西城正樹以外の少年も顔立ちも日本人だ。まず間違いない。しかも、こいつらの反応は……どうやら当たりのようだ。
「それがどうした!」
「“勇者”だな。高宮こずえも、お前らも」
そう俺が言うと、『勇者』達は一瞬顔を見合わせたがすぐに強気な態度に戻った。
「……だから何?アンタも高校生でしょ?」
高宮こずえが言った。そういえば俺って今何歳なんだ?まあ10代に若返ってるいるし、そう見られるのも無理はないか。
「俺のことはどうでもいい。お前ら…。ここに来るまでに随分殺生を働いたな?」
正直アイランドのソルジャーを何人も葬った俺が、人の事は言えないかも知れない。
しかしこいつらからケダモノ以外の、人間の血のニオイがするのは確かなのだ。
「それは……必要な事だから……」
高宮こずえが言いにくそうに呟く。
「はん、なんだそりゃ!?俺らに大人しく食いモンを渡せば早く良かったんだよ!」
まるで映画の無法者そのものだ。この西城ってガキに容赦はいらないな。
「ちょっと裏に来い」
しかし俺が店の裏側の裏路地にいくと同時に、西城が殴りかかってきた。だが遅い。俺は軽く左に体をさばいて
「ぐはっ!?」
西城は腹を押さえてうずくまった。
「大丈夫か!?」
高宮ともう一人の男が西城に駆け寄る。
「……この野郎!」
もう一人の男は、俺に向かってきた。俺はそいつの右ストレートを躱し、腕を摑んでそのまま一本背負いを決める。
ドスンという音とともに地面に叩きつけられたそいつは、うめいた後動かなくなった。
「……さて」
俺は残った高宮に向き直る。高宮は西洋剣を構えて俺を睨んでいた。
「あんた……何者?」
高宮が聞いてきたので、俺は正直に答えてやる事にした。
「さあな。お前らと同じ世界から来たのは確かだ」
俺の答えを聞くと、高宮は目を見開いた。そして小馬鹿にしたかのように笑う。
「……なにそれ?あんたも日本から来たっての?」
「これ以上のおしゃべりはいいだろ」
そう俺が言った途端、高宮はあからさまに不機嫌になった。それはそうだろう。さっきまで自分らが勝者のように振る舞っていたんだしな。
「……何それ?イラッとくるんだけど……!?」
なるほど、この調子で普通の市民も手にかけていった訳か。
「だったら俺を殺せばいいだろ?」
正直、こんな奴らに情けはいらない。一度悪の味を覚えた奴は、元の世界に戻っても平穏に暮らせるとは思えないしな。
「はっ!じゃあお望み通りにしてあげる!」
高宮は剣を振りかぶり斬りかかってきた。フェイントもなにもない上段から振り下ろされたその剣を、俺は横に避けるのではなく逆に前に踏み込み、そのまま左手で彼女の右手首を摑んだ。
「な……!?」
(なんだ?この程度か)
『勇者』というくらいだからもっと手こずると思ったが、拍子抜けも良いところだ。これまでのクズと何も変わらない
俺はダッシュと同時に高宮の顔面に
「ぐあっ!?」
「お前らはただの『勇者』の皮を被ったクズだ。そんな奴らを野放しにするつもりはない」
俺はさらにもう一撃、高宮に拳を叩き込んだ。今突いたのは急所経穴“
「う……あ……」
「女とは思えないくらい中々丈夫だな。だがもう耐える必要はない」
俺は高宮に問いかける。今この女の五感は急速に衰えている。そのまま体が生命活動を停止するだろう。