さっきまで意識的に抑えていた魔力を解き放ち、枷を外すようにして一気に身体の中の魔力を外へと放出する。
たったそれだけの動作で、ダンジョンは今まで感じたことのないくらい激しく揺れた。
「きゃっ!?」
”なんだ、これ? 揺れてる?”
”緊急地震速報が鳴ったんだけど!”
”今そのダンジョンの近くにいるんだけど、なんか一瞬だけめっちゃ揺れたw”
”魔力出すだけで地震を起こすとか、大ナマズかな?”
”もはや災害級の化け物じみてて草も生えない”
「あはは、ちょっとやりすぎちゃったかしら。もうちょっと控えめにしないと駄目ね」
どうやら私が全力を出してしまうと、ダンジョンでさえ耐えられないみたいだ。
慌てて魔力放出を止めて、私は誤魔化すように乾いた笑みを零す。
さっきからポケットの中ではスマホが着信を告げる振動を繰り返しているけど、なんとなく嫌な予感がするから確認は後にしよう。
ついでに、ダンジョン中からモンスターが集まってくる気配がする。
「よし、ボーナスタイムね。倒して倒して倒しまくって、いっぱい稼ぎましょう!」
様々な方向から無差別に現れ始めるモンスターを見ながら、私は気合を入れるように凛子へと声を掛ける。
「……穂香ちゃんって、誤魔化すの下手だよね。いくらなんでも、そんなので誤魔化されたりしないよ」
「ご、誤魔化すってなんのことかしら? ちょっとなに言ってるか良く分からないわ」
凛子のそんな指摘に、私はわざとらしく視線を泳がせながら下手くそな口笛を吹く。
”口笛下手すぎw”
”今日は穂花ちゃんの弱点がたくさん見つかる日だね”
”それにしても、ここまでモンスターが集まってくる光景は圧巻だな。俺ならおしっこチビってるわ”
”俺なんか、普通に失神してる自信があるぜ”
”みんな情けなくて草”
コメントのみんなも変なことを言って盛り上がっているけど、一時的に文章理解力がなくなってしまった私にはなにを言っているのか全く分からない。
分からないからには反応してあげることもできないし、申し訳ないけど無視させてもらうことにしよう。
いやぁ、本当に理解さえできれば構ってあげることもできたのに、残念だなぁ。
「ほら、そんなこと言ってる間にも、モンスターがやって来たわよ。凛子はそっちの半分をお願いね」
「もうっ! 後で絶対、小春さんに怒ってもらうからね!」
ありとあらゆるモンスターが姿を現し、その全てが私たちに向かって突撃してくる。
二手に分かれた私たちは、そんなモンスターたちをなぎ倒していくのだった。