さて、あれから絶え間なく現れ続けるモンスターたちを倒し続けた私たちは、山ほど大量のドロップアイテムを抱えながらダンジョンの受付にまで戻ってきていた。
そして私は帰るなり、腕を組んで仁王立ちで待ち構えていた小春さんに捕まって正座を強要されていた。
「ねぇ、小春さん……。このご時世に正座を強要するのって、コンプライアンスとかいろいろと問題になるんじゃ……」
「ん? なにか言ったかしら?」
「いえ、なにも言ってないです……」
どうやら今回もかなり怒っているらしく、口答えをしようものならものすごい勢いで睨みつけられてしまった。
その迫力と言ったらその辺のモンスターなんかよりもよっぽど恐ろしく、私はそれ以上なにも言えなくなってしまう。
「り、凛子……」
それならばと我が愛しの相方である凛子に助けを求めれば、彼女はわざとらしく私から視線を外すようにそっぽを向かれてしまった。
「うぅ……、裏切者めぇ……。そもそも、今回は凛子だって同罪だと思うんだけど」
こうなることが分かっていながら止めなかったのだから、彼女だってこの件の当事者であることに変わりはないはずだ。
そう主張しようと思って、しかし小春さんの恐ろしいほどの満面の笑顔を見て私は口を閉ざした。
「さて、穂花ちゃん。なにか弁明の言葉はあるかしら?」
「えっと……。あれは不可抗力というか、故意じゃなかったというか……。ともかく、わざとじゃないから許してほしいなぁ、なんて」
無駄だとは分かってるけど、それでも一縷の望みをかけてそんなことを言ってみる。
「ふふっ、駄目に決まってるでしょ。あれだけの騒ぎを起こして、無罪放免なんてそうは問屋が卸さないわ。穂花ちゃんの軽はずみな行動で、それだけの騒動が起こったか知らないわけないわよね?」
やっぱり、そう簡単に許してはもらえないみたいだ。
「そりゃあ、まぁ……。でも、人的被害はなかったって聞いたわ。ただちょっと局所的に地震が起こって、ダンジョンのモンスターが一か所に集まっちゃって、それからそのモンスターを私たちが全部倒しつくしちゃったせいでしばらく中層からモンスターが居なくなっちゃっただけで……」
いや、自分で言っててなんだけど被害がヤバいな。
これは、怒られても当然かもしれない。
「その、今回はさすがにやりすぎたと思ってます。はい……」
改めて反省の意思を示すと、小春さんから立ち昇っていた怒気が少しだけ緩む。
「どうやら、自分がなにをしでかしたか自覚してもらえたみたいね。先に言っておくけど、私だって怒りたくて怒ってるわけじゃないんだからね」
「はい、反省してます。今後はもう少し自分の規格外さに自覚を持って行動していきます」
「うん、そうしてちょうだいね。今回はなんとかなったけど、私たちだっていつまでも穂花ちゃんのことを庇ってあげられるわけじゃないんだから」
それからも延々と続く小春さんのお小言を、私はただ甘んじて受け入れるのだった。