ウェスト領、魔界の西側に位置している領土。そのままだけど、ウェスト家が治めている。
けんか腰のノース領と北東で隣接しているため、境界では争いが絶えない。そのため、内部の警備は他の領土よりより薄い。
「魔防壁のおかげとは言いたくないけど、いいスタートにできるかも……」
「ん?どうしたんだ?」
私の後ろをついてきているリュシェが反応してきた。つい口に出てしまったのだろうか。
「ううん、独り言だから気にしないで。それよりも……」
リュシェの姿をもう一度見まわしながら思ったことを伝える。
「――そんなにおなかがすくの嫌?」
リュシェは一昨日仕留めた、巨大鳥の焼き鳥を背負いながら移動している。私も、少しは切り取って保存しているけど量が比にならない。
「当たり前だろ! おなかが空いては何とやらだ!」
リュシェらしいけど、さすがに目立ちすぎる。
魔法探知の効かないマントも、視認できたら意味がない。それに、リュシェは魔力探知に引っかからなくても、その焼き鳥が引っかかってしまう。
「町が近くなってきたら捨ててよね。あと、誰かに見られたら口封じしといてね♪」
バカでかい鳥の死体を運んでる二人組なんて怪しすぎる。
そうこう言っているうちに町が近くなってきた。見えた訳じゃないけど、大量の魔力が魔力探知の中に入ってきた。
あと、半日くらい飛べばつきそうだな。
「やっぱり今すぐ捨てて。町が近い」
「ちぇっ、わかったよ……その代わりまちで飯おごれよ!」
リュシェは鳥を縛っていた紐をほどきながらにんまり笑っている。一回のごはんでいくら飛ぶんだろうか……