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図書室にて 2

 ある日の放課後。


「久しぶりに一緒になったわね」

「ですね」


 涼香りょうか涼音すずねは図書室に来ていた。


 二人は共に図書委員会に所属していたが、揃って仕事をする機会はほとんど無かった。恐らく今年度二回目とかそれぐらい。


 図書室は常に開放しているが、図書委員が仕事をするのは昼休みと放課後のみ、それ以外の時間は司書教諭のみが仕事をしている。


「まずは返却された本を戻していきましょうか」


 涼音が返却された本が入ったワゴンを押す。


 そのテキパキと仕事をする姿に涼香は涙を禁じ得なかった。


「成長したわね、もう私はいらないのではないかし「サボらないでください」

「冗談よ」


 肩を竦めた涼香がテーブルに置いてある本を数冊取ると涼音を追いかける。


「涼音、乗ってる本のほとんどはあっちの書架よ」


 涼香の言葉に従って涼音はワゴンを動かす。


 二人は黙って本を書架に戻していく。まだ放課後になったばかり、利用者のいない図書館で黙々と作業を続ける。


「ねえ涼音」

「……なんですか?」


 高い場所の本を戻してもらうため涼香に本を差し出す。


「呼んだだけよ」

「なんですか、それ」


 涼音が笑いながら言う。


 本を受け取った涼香が本を戻そうと腕を上げる。


「ねえ……涼音」

「なんですか?」


 下の書架に本を戻していた涼音が顔を上げる。


「肩を……痛めたわ」

「えぇ……」


 こうしていつも通りの緩慢な放課後が過ぎていく。

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