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電車の中にて 2

 ある日の電車の中で。


「電車の運転手って計算できないといけないらしいわね」


 一番後ろの車両の一番後ろ。乗務員室の中の速度計を覗きながら涼香りょうかが呟く。


「急にどうしたんですか?」


 スマホをいじりながら、涼音すずねは聞き返してみる。


「昔テレビでやっていたのよ。電車の運転手は速度と距離を計算して、到着時間通りに運転するみたいなことを。……なんの計算だったかしら」

「きはじ……でしたっけ?」


 道のり(距離)、速さ、時間の計算だ。きはじ、はじき、みはじ。言い方は色々あるようだが別になんでもいい。


「そうそれ、おはぎ」

「……はじき」

「おはじきね」


 なぜそのようになってしまうのか、おそらく誰にも分からない。


 涼音は流れる景色に遠い目を向ける。


「ねえ涼音、あんこう鍋が食べたくなってきたわ」

「一人で連想ゲームしないでくださいよ」


 海鮮料理、魚介料理が好きな涼香のことだ。おはぎのあんこからアンコウに繋がったのだろう。甘いものが好きな涼音なら、おはぎで止まっていたはず。


「甘いものと言えば?」

「砂糖」

「甘いわ涼音。ふふ、甘いものだけに」

「えぇ……」


 急に連想ゲームをやりだしたかと思えばなにを言ってるんだこの人は。という気持ちがこもっていた。

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