目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

休み時間の三年生の教室にて 4

「ゴホっケホっ……うぅ……」


 ある日の休み時間、涼香りょうかはむせていた。


「またやってる……」

「ゴフっ……冷たすぎない?」

「いや、涼音すずねちゃんが涼香に甘いだけでこれが普通よ」

「涼香ちゃん大丈夫?」

「もう、ここねは優しいな」

「あなたも見習いなさいよ」

「嫌。ここねの優しさに付け込まないでくれる?」


 そう言って、守るようにここねを抱きしめるのは、隣のクラスの菜々美ななみである。


 菜々美とここねは、涼香の一年時からの友達である。二年生の時は、三人とも同じクラスだったが、三年になった時に菜々美だけ別れてしまった。


 三年生のクラスは進路や選択科目によって決められているのだが、涼香はそれを知らない。故に。


「そんなこと言っているから一人だけクラスが違うのよ」


 一人だけクラスが違う菜々美を煽ることがある。


 しかし菜々美は、そんな涼香に優しく教えてあげる。


「あのね、涼香。三年生のクラスは選択科目とかで決まるのよ」

「見なさい。この涼音も可愛いでしょ」

「えぇ……」


 聞いていなかった。


 ドヤ顔でスマホの写真を見せてくる涼香。写っているのは、マグカップを両手で持ちながら啜っている涼音の写真。


 正直可愛かった(ここねの次に)


「うん! 可愛いね」


 画面に写る涼音の写真を覗き込んだここねが笑みを漏らす。


「やっぱりまずはこの学校の生徒たちに涼音の可愛さを伝えるべきね」


 コイツいつも同じこと言ってるな、という気持ちを込めてため息をつく菜々美だった。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?