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ステア魔法学校襲撃編 3

(自衛官……そうかあ、元自衛官なら銃持っていてもおかしくないかあ……んなわけあるかい!この国の銃規制ってどうなってるんすかねえ)


「アリス……魔法の戦闘実技は受けてなくても座学は受けたろ?」

「まあ多少なら?」


 ステアに入った時点で基本的な魔法である生活用基本魔法は習得済みが前提だ。つまりステアで学ぶのは日本の普通の高校では学ばない自己防衛及び反撃用の基礎攻撃魔法である。


 アリスも座学ではあるが授業を受けているが、最初に習うのはあくまでまだ魔法を使う際の法律や魔法を使用する者に対しての心構え程度であり、呪文すらまとも習っていない。


 因みに、ズトューパで使用する魔法も攻撃魔法ではあるがその時に使った魔法はアリスが小林から教わったものである。


「ではまず一つ!敵の攻撃を避ける基本的な三つの方法一つ目!」

「え?ああ、えっとシールドで防ぐ!」


 柏木がアリスの前に出ると、飛んできた火の魔法をシールドで防ぐ。


「そうだ、杖を前に向けている限り杖所有者の本能で危険と感じたものは自分で撃った魔法以外条件無く防ぐことが出来る。魔法以外でも本人が危険と感じればものでも弾ける。因みに魔法を防いだ場合の衝撃はお前が今感じたと思うが、物の場合は物の質量が半分ほどになって衝撃としてくるから間違っても車みたいな超重量のものは受け止めようとはするなよ?」

「前々から気になってたけどシールドの耐久性はいかほどで?」

「良い質問だ。物などを防ぐ場合のシールド耐久性はほぼ無限と考えていいだろうな」

「ほぼ?」

「これまでにおいて物理でのシールド破壊の報告が無いらしくてな、どれだけ食らえばシールドが割れるのか実証されていないので実質無限と考えられている」

「ほう」

「次に魔法に対しての耐久だが、これはちゃんと結果が出ている。第一魔法を耐える場合、個人によるがおおよそ十発前後でシールドが破壊される」

「十発か」


(連続で当てまくることが出来ればいいと)


「因みにシールドの展開範囲だが、おおむね杖の先端を基準として少し大きめの傘を開いた程度と思えばいい」

「なるほど」

「次魔法を防ぐ方法二つ目は?」

「え?えーと……魔素で無効化する……だっけ?」


 アリスが座学で良く分からなかった部分だ。何しろ魔法は目に見えるており防ぐシールドこそ見えはしないがここまでの戦いで杖を向けてさえいればシールドが展開されてほぼ自動防御されることが分かった以上、魔素で無効化するメリットが分からなかったのである。


「アリス、シールドで防ぐことに何か感じたことは無いか?」

「へ?……いや何も?」

「さっきからあいつが撃っているのは火の魔法だがそれを防いだ時どうなった?」

「シールドで防がれて燃えた」

「つまり数秒間、敵の姿が火で見えないということだ」

「まあそうっすね……でもしょうがなくない?防いでるだけいいじゃん」

「ま、自分を守るだけならな、だが相手との戦いで一時的にでも敵の動きが視認できないのは致命的だ。そこで魔素での無効かだ。まあ見て見ろ」


 飛んできた火の魔法に足して今まで構えただけの杖を今度は払うように先っぽで触った。


 すると今までシールドで防がれ爆発していた魔法は爆発することなく、触れた瞬間にほぼほぼ透明の粒子に変わり霧散した。


 魔法が杖に触れてなくなるまでおおよそ一秒も無い。


「わあ……なるほど」

「つまりは魔素の特性を使って、魔法そのものを魔素に戻すということだ。まあ例外もあるんだがな」


 そういうと柏木はシオティスを睨む。見られたシオティスはにっこりと笑った。


「で?デメリットは?」

「シールドは展開すると壊れるか違う魔法を使った時点で第一魔法一回分を消費する。上手く使えば相手は十発分、こっちは一回分で戦えるが、魔素の無効化は一回使うだけで魔法一回分だ」

「なるほど」


(つまり逃げるだけなら魔素をそこまで使わなくてもいい。でも相手を倒すこと前提なら魔素の使用効率考えなきゃならんと……頭使うなあ)


「で、最後!」

「えーと……ああ、なんだっけ?」

「単純だ!ほれ」

「あ?おいいい!」


 突然、柏木がアリスを蹴り飛ばした。その後柏木とアリスの居た場所を魔法が通過し仮設セットに当たった。


 爆発を起こすと、仮設セットは大きく破壊され、メラメラと燃え始める。


「……おいこらあ!避けるなら避けろって言えばいいじゃない!蹴るこたあないでしょ!」

「言うより蹴った方が早い」

「あんた本当に教師か?自衛官ってみんなこうか?……いやそれよりあっち燃えてますけど!?」

「何か新しくするらしいからな生徒の身代わりになって有終の美を飾れた……素晴らしい事じゃないか!どうせ捨てるんだ処分の手間も省ける」


(いやいや!金属もあるんだから燃えない物もあるでしょ!適当すぎません?……てかそれよりさっきから気になるんだけど)


 そうここまでアリスは柏木による敵の魔法を使った魔法の実技授業が展開されていたがある違和感があった。


(さっきから敵さん……なんで近づいてこないんだ?)


 男は戦いが始まってからほぼその場にずっと留まっている。一時的に横にずれることは合っても基本的には一歩も動いていない。


(シオティスは言ってたけど、あくまで時間稼ぎ……あたしらを殺すのは目的じゃない。だから近づいても来ない?)


「アリス何考えてるんだ?」

「なんで近づいてこないのかなって。魔法の戦いのセオリーは知らないけど近づいた方がいろいろと得じゃない?」

「ああ、先ほどシオティスが言っていたが目的は時間稼ぎだ。わざわざ近づいて死ぬ覚悟を持って戦う必要もないんだろう。……まあそれ以上に」

「ん?」

「数的有利だからな」

「……ん?」

「一対複数じゃあよほど狭い場所とか複数の方が動きずらい状況じゃない限り一人が有利になることは無い。それに別に勝てという命令ですらない。命を懸けて突っ込む理由がない」

「ああ、だからか」

「だが」

「なんぞ?」

「だとしても、相手は闇の魔法使いでなくとも闇の勢力の人間だ。シオティスは無理でも今戦っている奴は捕まえて役に立つ情報を吐かせれば儲けもんだ。日本の法律でな、闇の魔法使いもしくは闇の勢力に属している人間は殺しても殺人には問われない」

「マジかい」


(日本の法律が闇の魔法使い絶対殺すマンになっとる)


「アリス」

「ほい」

「魔法の授業第二段階だ。今度は基本的な戦い方を教えてやる」

「待ってました!」

「一つ目!基本的に魔法は打ちっぱなしだ」


 柏木は杖を構え、黄色い魔法を撃ちこんだ……が当然に相手のシールドに防がれる。


 また少し小さめだが雷の落ちる音と共にシールド全体に電撃が流れていく様子を見て、アリスはこれが電撃の魔法だと認識する。


(ありゃあ、電撃の球体の魔法かあ、音すげえ)


「撃っただけの魔法はシールドや壁等など何処か当たればその時点で爆発する。因みに、先ほどのシールドで言い忘れたが魔法が当たる角度を合わせる等の条件が合えば魔法が爆発せずに弾いてシールドの消耗しないように出来るが普通にむずいし角度間違えたら普通に自分に当たるから最初はやめた方が良いぞ」

「ほい」

「しかし、魔法を爆発させずに使う方法がある。こうだ」


 柏木がもう一発、魔法を放った。


 しかし、アリスでも分かった先ほどとの違い。


 それは柏木が撃った魔法が柏木の杖と黄色の線で繋がっているのだ。


 繋がりながら飛んでいく魔法は線を伸ばしながら男に飛んでいく。男は顔を引きつらせながらシールドで受けた。


 だが魔法は爆発しなかった、その代わり先ほど魔法がシールドに防がれたときと同じように球体の形を保ちながらも電撃がシールド全体に流れていた。


(いよいよハリーポッターみたいだあ!)


「かっけえ!」

「お前も練習すれば出来るようになるさ。この攻撃には利点があってな、この線を維持するにはおおよそ十秒で魔法一回分くらいしか使用しないんだよ」

「ほう!」

「因みに、この状態で魔法をシールドに当て続けると訳10秒もあればシールド破壊できる」

「つまり魔法10回当てたと同じになると?」

「そうだ見て見ろ」


 よく見ると魔法を受けている男のシールドには少しづつひびが入っているように見えた。


(確かに……でも普通に考えたら割れる前に避けようと……)


「おおおおああああ!」


 男が雄たけびを上げると、杖を力任せに上に向ける。シールドの角度が変わり、電撃の魔法は上空へ舞い上がる。


「まあそうするよな……普通に考えたら」



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