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33_俺のミントに『精霊』が誕生する!

 イスタールで領地改革に従事しておよそ二週間後。

 俺のミントが一つの到達点に至った。

「レベル2000か。いくとこまで行ったな」


 普通にミントを生やしているだけではここまで成長しない。

 と、言うのも俺のミントが急速に成長したのは、ローズアリアの宿屋で魔族を追い払ってからなのだ。


 まるで魔を払うのが成長の課題であったかのように、二人目の魔族を払った後に急速成長を果たしたのである。


 そして新たな信仰Ⅵ。

 『通話』の拡張。


◉=====================◉

名称    :コウヘイ・ウエノ

宿命    :ミント栽培

称号    :ミントの創造者

ミントLV :2000


<繁殖地>   

ローズアリア王国_Ⅲ

ローズアリア・南の森_Ⅲ

ローズアリア・ウォール領_Ⅵ

ローズアリア・イスタール領_Ⅵ

<特性>

繁殖力:極

防虫力:大

防臭力:大 

吸魔力:大

伝達力:大

運搬力:大


<信仰>

_Ⅰ_疲労回復

_Ⅱ_精神回復

_Ⅲ_魔性模倣

_Ⅳ_加工

_Ⅴ_再構築

_Ⅵ_通信


<機能>

メッセージ :OFF

オート地植え:ON

オート吸魔 :ON

オート加工 :ON

意思疎通  :ON

精霊の加護 :ON


<眷属>

ミントゴブリン

ミントトレント 

ミントヒューマン

ミントシャーマン

◉======================◉


 そしてもう一つ。

 レベル2000の恩恵というか、厄介ごとというか。

 俺にしか見えない存在が俺の前でどこか膨れ面をしていた。


【ようやく目覚めることができたわ】


 まるでミントであしらったドレスを着こなした小さな女の子。

 ミント色の髪を短くまとめ、ミントの葉っぱを背中から羽のように生やして俺の周りを飛んでいる。


「誰、お前」

【お前とはお言葉ね、私はミントの精霊よ】


 精霊ときた。

 そう言えば精霊の加護とか生えてたな。

 早速OFFにしてみる。


【あ、やめなさいよ!】


 徐々に精霊の存在が消えていく。

 ヨシッ!


 俺は何も見なかったことにして日常を過ごした。


 しかし一週間もしないうちに、俺のミントの機能が落ち込んでいくという事件が頻発した。


 魔法の水の回復効果の減退。

 ミント列車の移動距離の大幅減少。

 通信効果の途絶。

 ミント建築の劣化報告などなど。

 そして俺のミント加工にも悪影響が出ていて。

 これは只事じゃないとアスタールさんが駆け込んでくるほどだった。


「コウヘイ様、何かされましたか?」

「実は俺のミントから精霊が生まれたんだけど」

「精霊様が!?」

「うん、わがままっぽい感じだからイラッとして機能をOFFに」

「それでございます! 精霊様がお消えになってミントの効能が大幅にダウンしているのではないでしょうか?」


 なんかそういうことらしい。

 急に生えてきて、機能をOFFにしたらこの有様である。

 仕方ないのでONにする。


 すると徐々にミントの効力が持ち直してくる。

 今や俺のミントはこの領地を支える一つの事業。

 頓挫することは許されないのだ。

 というか、OFFにしたらそうなるって前もって教えて欲しいもんだ。


【やっと出られたわ!】

「お前さー、もっと自分が何者かを説明しろよな」

【え、これ悪いのあたしなの?】


 どう考えてもそうだろうがよ。


「コウヘイ様、ミントの精霊様はそこにおられるのですか?」


 やっぱ俺以外には見えないらしい。

 アスタールさんが周囲を伺うようにオロオロしている。


【そうよ、あたしが来たからにはもうこの世界は安心していいわ!】


「いったい何をおっしゃられているのです?」

「世界の平和は守られた!って」

「ミントにそのような力が?」


 うーん、それは俺にもわからん。

 魔族を追い払う力はあるけど、世界の闇を祓う力まであるかどうか。

 見た目通り適当言ってるだけかもしれないし。

 しかし見えないというのは厄介だな。

 そうだ!


 俺はその場でミントを加工して、大きなリボンを作った。

 そしてミントの精霊にくっつける。

 案の定、空中にはそのでかいリボンだけが浮いて見えていた。


【お、なになに? あたしにプレゼント?】

「そのようなものだ。本当はお前の姿がみんなに見えればいいんだが……」

【あら、そんなこと? いいわよ! 私の姿を見せてあげる!】


 できるのかよ。

 じゃあプレゼントを用意するまでもなか……うおっまぶし!


 極光が走った。

 室内の照明が暴発したみたいに、部屋が真っ白になる。

 失明するかと思ったぞ!


「目が……目が!」


 アスタールさんが目を押さえてあたふたしてる。

 人の目に悪すぎる存在だったか!


【あら、せっかく姿を見せてあげるのに。そんなふうになられては困ってしまうわ】

「お前の存在がミントと同様に害悪だってことはわかったよ」

【ムキー! 害悪とは何よ!】


 言葉通りの意味だが?

 俺はその場で目薬を調薬し、アスタールさんに処方する。


「酷い目に遭いました」

「俺もまさかこんな目に遭うとは」

【あによー、あたしは姿を見せろというから見せただけよ?】


 まさか姿見せるだけでそんなトラブルに巻き込まれるとは思わないじゃんか。

 さすがはミントの精霊だ。

 存在そのものがミントと同様すぎる。

 無害そうな見た目なのに、ちょっとした行動で周囲に与える影響がデカすぎる。


「で、精霊って言うけど。実際何ができるの?」

【色々できるわよー。でもそうね、直接の恩恵はミントの効能を引き上げることかしら?】


 それは実感した。

 だが問題はそこじゃない。

 精霊の効果で50%UPするのはまぁわかる。

 けどOFFにして50%ダウンどころか140%までダウンする。

 元に戻らないのだ。

 意味がわからない。


 俺としては100%の状態が維持できればいいのだが、まるで存在を消すと損ですよと言わんばかり。

 見せしめにも程がある。


「とりま、それをつけてれば場所はわかるな。翻訳は俺がするし」

【なんか納得いかないけどー、まぁいいわ】

「ありがたき配慮。しかし精霊様。我々は商会を設立し、世間のお役にたてている最中。あなた様の存在をどのように知らしめるべきでしょうか?」


 アスタールさんは率直に意見を聞いた。


【え、あたしの存在? なんで知らしめる必要が?】

「じゃあなんで出てきたんだよ」

【ああ、そういう? 力が高まってきたからよ。ミントってか弱い存在じゃない? そのために繁殖力が高いんだし】


 何を言ってるのかさっぱりわからない。

 か弱いか? と聞かれたら確かにか弱いが。

 だからと言って数を増やせばいいってもんでもないだろう。

 で、レベル2000まで上げてようやく力が定まってきたと。


「で、力が強まると具体的にどうなるんだ?」

【あたしの格が上がるわ! 今はしがない精霊だけど、ゆくゆくは精霊女王になれる日も遠くないわ!】


 むふんと鼻息を荒くしながら胸を張る精霊。

 このどこか太々しい感じがミントの性質を表しているようだ。


『なんと言っておられるのです?』

『どうも精霊として上り詰めたいらしい』

『上り詰めるとどうなるので?』

『わかんないけど、ミントの力が増す?』

『どのみち今後商会を続けていく上で重要な能力の獲得につながるのでしたら、お手伝いしてあげても良いのではないでしょうか?』


 うーん、どこまで協力するかなんだよな。

 どのみち、ユウキの手助けをするためにも支店は増やす方向だ。

 今はイスタール開発で足踏みしてるが、ここが安定すれば他の街にも足を運ぶし。


「なるほどな。精霊女王に。で、精霊女王になったらもう目的は達成か?」

【もちろん通過点の一つに過ぎないわ。でもね、精霊にも色々あって、女王になっておしまいじゃないの。その先はあるけど、まずは今の地位の向上が先決よ】


 とのこと。

 どのみちミントの力が強まるんなら、俺も協力するのはやぶさかではない。

 問題は扱い方だ。

 ただのマスコット、と言う割には主張が強い顔と性格をしてるんだよな。


 あれをやれ、これをやれと命令されたらまたうっかりOFFにしてしまいそうだ。

 事業が停滞するからやれないけど。

 そう思うと、面倒な存在を抱え込んでしまったような気がしてならない。


「そういえば」

【何?】

「お前はなんて呼べばいいんだ? 精霊って言うのはわかったけど」

【そこは名付けてくれたら嬉しいわ。あたしにぴったりの名前を考えてちょうだい】

「じゃあミント」

【バカにしてるの?】


 ミントの精霊にミントって名付けたらキレられた。

 シンプルでいいんだけどなぁ。


 それから四苦八苦して、正式名称をミンティア、相性をティアにした。


 ちょっと捻っただけ、なんならまんま清涼菓子の名前だけど、本人はとても気に入ってくれた。

 何はともあれ、よろしく頼むぜ、相棒!

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