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霊魂のねぐら、うろつく咎人④




 ◇ ◇ ◇




「もういねえか……」


 カリオはビームソードのやいばを消す。


「結局五十機ぐらいいたんじゃない?」

「一機一機は大したことはねえが流石さすがに多かったな。調査隊も撤退てったいするわけだ」


 リンコとニッケルも武器をしまい、三人はたおした機体達を確認する。どの機体も先ほどと同様に、あちこちが傷んだ状態で半分スクラップと呼んでもつかえない状態だ。


「生体反応なし……またパイロットはいねえ感じか。おいニッケル倒れるな」

「……おっと、すまねぇ、こわい、いや何でもない。あの光が動かしてるってワケか? どういうことなんだろうな」

「待ってタックとつながった。タック―! ちょうどいいところに!」




 リンコが通信機に向かって声をかける。小さいモニターにあらい映像、格納庫かくのうこにいるタックの顔が映し出された。


「リンコ、さっきのスキャンデータだけど、多分普通ふつうのビームこんだと……ん? 今ちょうどいいところにとか言ったか?」


 リンコはカリオとニッケルとも通信を共有し、オンボロのビッグスーツに取りいていた青い光についてタックに話す。すると突然、ショートボブに丸メガネ、そばかすの女性――ミントン・バットが、タックを押しのけるようにして画面に映り込んできた。


「それ聞いたことあるよー、そういうことができるハイパーマイクロボット(HMB)の話」

「マジか。HMBってそんなことまで出来るのかよ」


 カリオの返事を聞いて、タックの頭にひじを乗せたミントンがうなずく。


あやつられてたビッグスーツ、オンボロって言っても電気系統や駆動部くどうぶは生きてたんじゃない? そこに取り憑いて信号を送って操作しちゃうらしいの。詳しい仕組みは今でもわかってないらしいんだけどね……うーん、近くに大掛おおがかりな〝親機〟があると思うんだよね。たぶんみんなが見た小さな光の群れだけじゃ、そういった動きは出来ないと思う。町中に見当たらなかったら、もしかすると地下とかかも」




 説明を受けた三人はミントンにお礼を言うと、彼女はタックに払いのけられながら画面から消えた。何か話しかけようとしていたタックを差し置いて、三人は通信を切って、一旦周囲を見回す。


「地上の建物は損壊そんかいが激しい。やっぱりミントンが言ったように地下か」


 カリオはサブモニターに艦長カソックからあらかじめ受け取っていた、壊滅かいめつ前のモリオカタウンの地図を映す。


「HMBか……HMBの関連施設ってどんなだ……」

「あー……私もそれ見てるけどこれじゃない? ハシナガ・コーポレーション。テクノロジー的な何かを発掘はっくつしたり調査ちょうさしたりするとこ……じゃなかったっけ? ねえニッケル。ニッケル~? 今はオバケいないでしょうが」

「……んあ!? あ、ああそうだ間違いない。何人もHMB技術者ぎじゅつしゃかかえている会社だ。ここにも拠点きょてんがあったなら当たりだろう」




 三人はハシナガ・コーポレーションの跡地あとち目星めぼしを付けて、そちらへ移動する。到着とうちゃくしてみると、やはり地上部分は大きくくずれており、有用な物は何も残ってなさそうに見えた。


「周囲に敵影てきえいはないな。降りて探索たんさくするか」


 カリオはビッグスーツを膝立ひざだちにさせ、刀を自分の腰に装備すると、胸部のコックピットハッチを開いて地上に飛び降りる。


「!」


 着地してすぐだ。歩き回ることもなく、目の前の瓦礫がれきの山の隙間すきまから、地下への出入り口と思われる階段が見つかった。


 続いてコックピットから出てきたニッケルとリンコもそれを確認する。


「ビンゴっぽい? まだわからないか……ちょっとニッケル、なんで私の後ろに隠れるの」


 カリオは二人に先行して階段を下りていく。ヴヴヴ……と耳鳴みみなりを低くしたような機械の駆動音がひび廊下ろうかに出た。




「流石に暗い……ん? 何か向こう、明るいな」


 照明の落ちた廊下の遠くが少し明るい。その明るさがどんどん増していく――何十個もの青い白い小さな光が群れを成して、廊下の奥からこちらに飛来ひらいしてきているのだ!


「カリオどしたのー、なんで止まって……うわあ!? さっきの奴ら!?」

「やべえ一旦いったん下がるぞ! おいニッケル白目向いてる場合じゃねえしっかりしろ!」


 意識が飛びかけるニッケルを担いで、カリオとリンコが階段を上がろうとした時だった。こちらに向かっていた光の群れが、突如とつじょ方向を真逆に変えて、ゆっくりと戻り始めたのだ。


「アレ? 追っかけてこないね……外には出られないとか? いやそれじゃさっきの戦闘せんとうが……」

「まあでも当たりじゃねえかコレ。行けるとこまで行ってみよう。また倒れられると困るからニッケルは俺がおんぶしてやる。え? 大丈夫? ホントかよ……」


 一応、ニッケルの状態に注意を払いながら、三人は再び施設内へ歩を進める。奥へ進む途中、いくつか同様の小さな光を見かけたが、その場に滞空たいくうしたんままでいるか、はなれるように飛び去って行く。


「さっきのは一体なんだったんだろうな」

「私達をねらってるんだと思ったけど違うのかな」




 三人はさらに地下深くへ進んでいく。やがて、廊下の突き当りの、頑丈がんじょうそうな両開りょうびらきのドアの前に辿たどり着いた。ドアは少し開いており、中からはほんのりとした光とうなるような駆動音がれてくる。


「よし……何があるか」


 カリオはまた先行して、ドアの隙間すきまからゆっくりと体を室内へ入れる。




 ヒュオッ!




「!!」


 突如とつじょ、カリオの頭上から何かがり下ろされる! カリオは咄嗟とっさたずさえていた刀をき、柄尻えじりで振り下ろされたモノを打ち上げる!


「うわっ!?」


 何者かがしりもちをつく。カリオは刀の切っ先を倒れた相手の方に向けてにらむ。


「わわっ、すみません待ってください! ごめんなさい!」


 あわてふためいて持っていた鉄パイプを落とし、手をバタバタさせる相手の様子を見て、カリオは剣を下ろして眉間みけんにしわを寄せる。尻もちをついたその相手は、毛先がハネたセンターパートの黒髪くろかみの青年だった。



霊魂れいこんのねぐら、うろつく咎人とがびと⑤ へ続く)



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