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船旅を経て

 フィファーナより現在の帝国の情勢を聞かされたギン達は、その話を他の仲間にもしていた。


 そんな中ルルーがプラナに対し更なる話をしようとしていた。


「あのねプラナ、フィファーナ将軍が本当はきっとあなたに伝えたかった事を話すわ」

「将軍が私に?」


 ルルーはかつてフィファーナが婚姻の約束をした男がギガスのボース転覆の際に王国側につき、処刑の際にフィファーナ自身がその男の命を奪い罵倒の言葉を浴びせた事をプラナに伝えた。


 敗戦側の将が処断される事自体はプラナにとっても珍しい事ではなかったが、フィファーナが自らが手を下すことをギガスに懇願した事には驚きを隠せないでいた。


「フィファーナ将軍がわざわざ何故そのような事を……」

「我慢できなかったと本人は言っていたけど……」


 ルルーはフィファーナが言っていた事をプラナに伝えたが話を聞いていたヨナは自らが思った事を話す。


「多分、心を殺したんだよ。自分の……」

「ヨナ、それってどういう意味かしら?」

「そうする事で身も心も帝国に捧げ忠義を尽くす。それを示したんだよ、きっとそれしか思い浮かばなかったんだよ」


 ヨナの話を聞き、プラナもある思いに至り、語りだす。


「悲しむ姿を見せられない。だからフィファーナ将軍はあえてその姿を陛下や周りに見せる事で帝国の将たる覚悟を示したということなんですね」

「多分ね、あの女将軍、気取った振る舞いはしているけど不器用な奴だと思うよ」


 ヨナとプラナのやり取りの中、ルルーがフィファーナから聞いた事をを伝える。


「わざわざこんな辛い話を私達にしたのはプラナ、あなたにこの選択をして欲しくないからだって言ってたわ」

「将軍がそのような事を」

「どうなるかは分からないけど私達も力を貸すから頑張りましょう」

「はい」


 プラナが返事をするとギンがプラナに声をかける。


「プラナ、フィファーナが領主達を説き伏せられれば俺達次第ではカイスの心を動かせるかもしれない」

「兄さん、ありがとう私を気遣ってくれて」

「俺達はこの戦争状態を早く終わらせなければならないからな。その為なら多少は骨を折ってやる」


 更なる決意を一同は強め、船は帝国を目指していく。


 そして数日の船旅を経て船はブロッス帝国へと迫っていた。


「皆の者、帝国まであと少しじゃ、前進全速!」

「はっ!」


 再度ブロッス帝国を目の当たりにしたギン達にとって戦争の終結をかけた説得が始まろうとしていた。

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