「扉か・・・。」
「どうかしたのか?」
勇者の深刻な表情に、何かを感じた剣豪は尋ねてみた。
彼は、日本から共に召喚された親友である。
何時も戦場では、安心して背中を任せられる掛け替えのない戦友でも有る。
「魔王の最期の言葉がやけに気になってな。」
「魔王の?」
「ああ。奴も次元こそ違うが他の世界から召喚されたらしい。」
「えぇ?・・・魔王も召喚者だったのか。」
「そうらしい。奴が言うには【王国には気を付けろ】と【扉を探せ】だ。」
「王国の奴らが、俺達に何かをするというのか?」
「分からない。だが十分に気を付けた方が良いかもな。」
「ああ。そうするよ。・・・あと扉てなんだ?」
「何の事かは分からない。ただ、魔王が必死に扉の情報を集めていたらしい。その資料が、魔王の部屋に散乱していた。直ちにアイテムボツクスに収納したがな。後から調べるから協力を頼む。」
「解った。夕食後に部屋へ行くよ。」
「くれぐれも、王国には内密にな。」
「了解。」
親友と別れた俺は、魔王城の資料室に向かった。
資料室には、実直そうな魔人の管理者が資料整理をしていた。
俺は、ストレートに管理者に尋ねた。
「生前の魔王が扉に興味深かったと聞いたが、何か知らないか?」
「魔王様が何故扉の資料を深刻な表情集めていた理由は解りかねますが、各地に有る特別な扉に特に興味を引かれて、部下たちに命じておられました。」
「特別な扉?」
「えぇ。ダンジョン底部とか。何気無い処に有る扉とか。・・・あぁ。そうそう、周りに家も無く、何気に1つだけ置き座られた扉を特に興味を示されました。」
「家がなく、1個だけ置き座られた扉に?なんだそれ?」
「私にも解りかねます。あぁ、この資料は、勇者殿が攻め行った直後に届いた資料となります。直ぐに戦闘状態になった為、魔王様が目を通しておられません。」
「貰っても良いのかな。」
「どうぞ。読まれる魔王様も最早おりませんので。」
「ありがたく頂戴する。」
資料を手にした勇者は、あてがわれた部屋に向かった。
部屋に戻り、手にした資料は、2点の扉に関する内容だった。
【西の砂漠に立っている扉】と【北の山の山頂に立っている扉】
「これが何なのだ。奴は扉フェチだったのか?それとも、特別の何かが隠されているのか。さっぱり解らん?」
一方剣豪は、魔王の身の回りを世話する魔族に聞き込みをしていた。
何かの拍子で何気無い言葉を話していたかも知れないとの期待を込めながら。
「・・・。」「・・・・・。」「・・・・・・」
「・・!。」
収穫は思わぬ所に有った。
剣豪は、急ぎ親友の元に駆け込んだ。