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第196話 ドラゴンスレイヤー爆誕

 世界に戻ってきた。


 俺の右腕は完全にドラゴンの体に埋没し、その奥の『暁』は心臓を貫いている。

 ドラゴンの傷口から光があふれ出し、胸部周辺を粉々に粉砕した。


 届いた。

 ふうっ。


 と、残心していると、鏡子ねえさんに引っ張られて引きずり出された。

 ねえさんのもう片方の手には、かーちゃんが引きずられていた。


 ドドーン!


 巨大な竜の頭が落ちてきた。

 振動で床が震えた。


「ありがとう、ねえさん」

「重いからな、せっかく倒したのに潰されたら大損だ」

「よう気が付いたな鏡子」


 かーちゃんに褒められて鏡子ねえさんはエヘヘと笑った。


 レグルスさん、またな。


『『『『『おおおおおおお』』』』』

『ドラゴンスレイヤータカシ誕生だーっ!!』


 ビロリンビロリンとスパチャの音が鳴り止まない。


「あんたら、はよおいで、ドラゴンの経験値を取ると『ドラゴンスレイヤー』の称号付くでー」

「わあっ、やったねー、たかしくんっ、鏡子おねえちゃんっ!!」

「タカシ、上手く行ったね!」

「タカシ兄ちゃんっ!! 鏡子!!」


 仲間が走り寄ってきた。


「でっかいねーっ!」

「このドラゴン、倒したかったんだ。やったな、タカシ」

「ああ、やったねねえさん」


『退魔武器だから何とかなったなあ』

『普通のDクラスの武器だと手も足もでないだろう』

『さっちゃん傷つけられる『暁』は半端じゃねえぜ』

『世界初のドラゴンスレイヤーだ!』

『タカシ、頑張ったな、余も嬉しいぞ』

「ありがとうみんな」


 ドラゴンの巨体がサラサラと粒子になって消えて行く。


「なんてドラゴンだったのかな、また出るかな」

「暴虐竜帝レグルスさんだ、120階のフロアボスだって」

「おお! なんで知ってるんだタカシ」

「うん、まあ、なんとなく」

「レグルスかあ、120階だとちゃんと空を飛ぶ奴と戦えるのか」

「そうだね、地上にどうやって降ろすか、そのあとどうやって戦うか考え無いと」

「大丈夫だ120階を越えるぐらいになったら私たちも強くなってる」

「魔石弾で打ち落とそう」


 たぶん、それが最善手かな。

 遠距離で落として、近接でダメージを与える感じだな。


 ぶわっと大量の魔力の霧が発生して降って来た。

 うお、体が膨らむ。

 レベルアップを凄くしそうだな。


「ふくらむふくらむ」

「うちにも称号つかんかな」


 かーちゃんはサーバントなので魔力は吸収されないようだ。

 称号だけでも付けばいいね。


「わ、本当に『ドラゴンスレイヤー』の称号付いた」

「わーい、私もだよっ」


 俺もDスマホのレベルチェックアプリを立ち上げる。

 おお! 二十レベルも上がっているな。

 五十台に入った。

 パラメーターが上がったから上位職を取れるかも知れない。

 あと、スキルに【観察眼】が生えた。

 レグルスさんをじっくり観察したからか。


「【気配察知】と【気配消し】生えたー!」


 おお、チアキに念願の気配セットが。


「【射撃】が生えたよ、早いね」

銃士ガンナーだから早いなあ、私はまだだ」

「【歌唱】レベルが上がった~~、わーい~!」


 みんなレベルが激増してレベルも上がったようだ。


「ねえさんは?」

「【関節技】が生えたな、あとは秘密、へへへ」


 まあ、スキルはあまり言う物じゃないね。

 対策されてしまうから。


 ドドンとドロップ品が落ちてきた。

 うわ、魔石がスイカみたいにでかいぞ。

 あとは、なんだ、この金色の鞭みたいな物と、……おお! 呪文スペルが出た。

 あと、なんか包みも出てるな。


「スペルか、レア物?」

「表紙が白いね、レア物だ、『ドラゴンファイヤー』だそうだ」

「高く売れるね、だけど……」

「東海林に渡そうか」

「いいの、タカシ兄ちゃん、レアなのに」

「『オーバーザレインボー』は同盟パーティだからね、一緒に上がって来てくれると心強いよ」

「そうだよそうだよ、東海林君たちとも一緒に迷宮の底をめざそうよっ」

「私も賛成だ、魔法使い居ないからなあ」

「知り合いのパーティと協力するのも大事やで、使えないならあげてしまい」

「そうだね、かーちゃん」

「じゃ、うちはこのへんで、またな、タカシ」

「ありがとう、かーちゃん」


 かーちゃんには称号が付かなかったようで、それが気の毒だな。

 『ドラゴンスレイヤー』の称号は、竜に特効でも付くかな。

 まあ、特典無しでも世界初でとても光栄だけどね。


「あと、これ、何だろう?」


 チアキが鞭のような物を取り上げた。


『竜の尻尾という道具じゃ。腰に当てると尻尾代わりになる』

「「「「は?」」」」


 余さんは何でも知ってるけど、なんだその道具は?

 チアキが腰に当ててベルトを締めた。


「あ? おおおっ!!? 尻尾動かせる」


 チアキのお尻の所に金色の尻尾が出来たようになってフリフリ振られていた。


『尻尾が生える事で【平衡感覚】スキルが使えるようになるぞ』

「「「「えっ!」」」」


 鬼の面みたいなスキル付与アイテムか。

 チアキが壁を蹴って軽業みたいにビョンビョン跳んでいた。


「おおおおおっ! これはー!!」


 チアキがトンボを切ったりバク転したり側転したりしている。

 すごい、尻尾がバランスを勝手に取ってくれるのか。


「チアキ向きのアイテムだな」

「問題無し」

「私、ドラゴン戦で何もしてないのに……」

「チアキが跳び回れるようになると、パーティに有益だから」

「それに、尻尾がすごく似合っていて可愛いよ、チアキちゃんっ」

「ありがとうっ、嬉しいっ」


 チアキはムカデ鞭を二本持ってスパイダーマンみたいに天井に食い込ませ、渡り歩いていた。

 機動力凄いな。


 包みは何だろう?

 竹皮に包まれて、『ドラゴン肉』とラベルが貼ってあった。


「肉!」

「肉!」


 肉食姉妹が反応した。

 フィクションだと、ドラゴン肉は美味しいって作品が多いけど、どうなのかね。

 肉食姉妹は喰う気まんまんだが。


 しかし、良い物も出たし、レベルアップもしたし、良い事ばっかりだったな。

 ありがとう、レグルスさん。

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