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第197話 狩りを切り上げて帰っていく

「さて、今日は帰るか」


 もう五時頃だ。


「タカシの部屋でドラゴン肉パーティだ!」

「肉だ!!」


 この肉食姉妹は。


『マ、ママも食べたいわ、ドラゴンさんのお肉』

『峰屋ママさんからおねだり入りました』

『めったに食える物じゃ無いからのう』

「もー、ママったら! どうする、タカシくん」

「私はママさんパパさんにお世話になってるからいいぜ~」

「私もお世話になったからいいよ~」

『まあ、鏡子ちゃん、チアキちゃんありがとうっ、良いお肉を用意して待ってるわ』

「そうしようか、タカシ」

「そうだね、峰屋さんにはお世話になってるから」

「ママ、準備をお願いねっ」

『わかったわ、みのり、気を付けて帰ってらっしゃい』

「はーい」


 今日は峰屋家でドラゴン焼肉パーティか。

 ご馳走になってばかりだなあ。

 今日は、あと一回、かーちゃんも呼べるから食べさせよう。


『俺もドラゴン肉食べたい』

『どんな味なのかな』

『濃厚で美味いぞ』

『いいなあ、いいなあ』


 珍しい食べ物が入るとウキウキするな。

 しかし、余さんはドラゴン食べた事があるのか、やっぱり運営の人なのかな。

 まあ、あまり詮索しないであげよう。

 古くからの大事なリスナーだしね。


 俺たちは焼け焦げた中央通路を歩き出した。

 チアキはスパイダーマンごっこが気に入ったのか、天井をムカデ鞭で掴んでひょいひょいと動いていく。

 器用だなあ。


 敵にも会わずに二十二階の階段下に着いた。

 ちょっと一休みする。

 ああ、疲れたな。


 ナッツバーを取りだして囓る。


「『ウラジの嵐』は、もう迷宮を出たみたいだね」

「日本の組織は奴らを捕まえないのかな?」

「どうなんだろう、外でバチバチやってるんじゃない?」

「ロシア人って雑だよなあ」


 鏡子ねえさんがジャムパンを食べながらつぶやいた。

 まあ、雑だから助かった所もあるな。

 連中の計画だと、たぶん、俺たちを全員殺して死体にして収納袋に入れて持ち出すつもりだったんだろう。

 俺とみのりさえ生きかえらせればいいから、『蘇生の珠』は二個だったんだろう。

 他のメンバーを生きかえらせたかったら協力しろと、そんな感じか。

 雑だな。


「でも、みんな無事で良かった~~、怖かった~~」

「大丈夫だよ、タカシ兄ちゃんが、みのりねえちゃんを守るから」

「あらもう、チアキちゃんたら~~」


 いや、そこでチラチラ上目使いでこっち見んな。

 そういう所だぞ。


「ウラジの奴、レア盾持ってたね、ドラゴンブレスを防いだ」

「盾だけかな、剣はどうだろう」

「レアじゃないかなあ、ロシアの退魔武器の可能性もあるね」

「謡が要らないのか」

「西欧だからね、向こうの魔術武器は正直解らないね」


 バチカンとか、イギリスとか、なんだかそれっぽい装備を使っている配信冒険者パーティはあるんだけれど、秘匿されて性能とかは動画に流して無い。

 カメラピクシーは、ここは撮さないでと言うと、カメラを外してくれるからね。

 謡が要る日本の退魔装備が目立ちすぎだよな。


 各国の秘匿された魔術武器が結構ありそうだ。


「今度は近代装備は持ってこないだろう、だったら話は早い、殴り合いでぶっとばす!」

「ねえさんは単純で良いな」

「毒ガスとかでも『軍隊殺し』は出るのかな」

「ガスかあ、色々と面倒臭いな」


 俺は水筒の水を飲んだ。


『毒ガスでは『軍隊殺し』は出んのう。あくまで火薬や爆発物で、威力がある程度以上の物が起爆した時じゃわい』

『機関銃とかだと出ない?』

『銃弾単発だと閾値を超えるまで時間がかかるのう。拳銃などなら時間経過で閾値がリセットされるが、自動小銃などではわりとすぐ溜まるのう』


 余さんは何でも知ってるなあ。


『対戦車ミサイルなどは一発じゃな。あと核兵器は持ち込むだけで出るぞ』

『持ち込まれた事あるんすか?』

『一回あった、ロビーに竜が出て大変な事になったぞ』

「雲南ダンジョンだね」


 世界中に色んなダンジョンがあるなあ。

 全部中は一緒らしいが。


「さて、行こうか」

「おう、二十一階でなんか出ないかな、お腹がすいた」

「今、パン食べてたじゃんよ」

「パンは数に入らないのだ」


 入るだろう、菓子パンはカロリーが高いよ。


 俺たちは階段を上がり、二十一階に入った。


 少し歩くと、トロールとオーガーの混成チームが出た。

 泥舟の射撃でオーガーを倒し、俺とねえさんでトロールを仕留めた。

 『暁』での傷はトロールでも回復しないので楽だな。


 レベルが二十も上がったので体の動きになれない。

 ねえさんの動きもヌルヌルに磨きが掛かったな。


 ドロップ品は魔石とムーミンマグカップ、鉄棒であった。


「これはマリちゃんのカップにしよう」

「ああ、そうだな」


 そうだ、ドラゴン焼肉パーティにマリちゃんも呼ぼう。

 と、思ったら、みのりが通話していた。


「マリちゃん来るって、家に先に行ってるって」

「ああ、良いね」

「マリねえちゃんも仲間だからねっ」

「うんうん」


 鏡子ねえさんが肩に付けたワッペンを撫でながら笑った。

 尻尾チアキの絵も描いてもらおう。

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