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第257話 先生達とゴーレム実験

 放課後、先生達の狩りの付き添いである。

 とりあえず、三階の草原で装備をそれぞれに渡す。

 リボンちゃん達もふよふよと寄ってきたね。


「高田君、これあげます」

「えっ、方喰さん、まじかお、もうできたのっ?」

「出来ました、ゲドラさんと一緒に作りましたから大丈夫と思いますが、実験してみましょう」

「うれしいお!」


 さっそく高田君は背中から牛戦斧を降ろし、ナイロンカバーを外した。

 マリちゃん製のホルスターは革製で、ヘッドを革カバーで受け止めて柄をベルトで止める感じだ。

 高田君がホルスターを背中に付けて、斧を後ろ手に回した。


 カチン。


 おお、一発で斧が仕舞われたぞ。


「これは便利だお!!」


 抜く時も腕を後ろに回して柄を掴み、引っ張るだけで構えられる。


「いいみたいですね」

「すっごく楽だお、ありがとう方喰さんっ」

「いえいえ、喜んで貰えて嬉しいですよ」


 大型の得物は構えるまで時間が掛かったりするけど、この専用ホルスターだとすぐ戦えるね。

 高田君は嬉しそうに、斧を出したり仕舞ったりしていた。


 今日の狩りは地下七階まで、メンバーは、先生方三人、俺と、泥舟、チアキとくつした、朱雀さん、あとマリちゃんの『Dリンクス』チーム。

 『オーバーザレインボー』から、東海林、高田君、といういつものメンバーだな。


 僧侶の朱雀さんが入ったから、より安心である。

 最悪死んでも【復活リライブ】があるから大丈夫。

 三百万払わなくて良いと思うと気が楽だね。


「朱雀さん、ハイヒールもってるんですか、わあ、凄いですねえ」

「あ、竹宮先生、被ったのであげますよ」


 俺は収納袋から竹宮先生に【上治癒ハイヒール】を渡した。


「え、ええっ! だってお高いんでしょうっ?」

「売ればそりゃお高いですが、知り合いが良い治癒魔法を持って居てくれると安心なので」

「し、新宮くん……」


 目をうるうるさせても何も出ませんよ竹宮先生。


「タカシくんは気前がいいんだお」

「なんか、馬鹿みたいにドロップするからね、お裾分けだよ」

「ありがたいお」


「良かったですね、竹宮先生、先生がハイヒールを持っていてくれたら安心です」

「僕たちも頑張らなきゃ」

「新宮くん、ありがとう、ありがたく使わせてもらうわね」


 竹宮先生は聖典を開いて【上治癒ハイヒール】を覚えた。


 さて、俺はリボンちゃんの前に立った。


「えー、リンクスチャンネルを見てくれている皆さん、お知らせがあります」

『お、タカシの事前告知めずらしい』

『みのりんがたまにやるけど、たいていはいきなり狩りしてんだよね』

『事前告知あると良いよ、配信って感じで、みんなで持ち回りでやると良い』

『チアキとくつしたの事前告知が見てえ』

『くつしたもか!』


「今日の朝、『たこ焼き一番』に不当な賭けを持ちかけられましたが、『Dリンクス』としては賭けには応じておりません」

『ああ、あの無茶賭け宣言か』

『成立してねえよなあ』

『『暁』を何だと思ってんだ、あのタコイチどもはよう』

「賭けとしても結果が不公平ですし、『収奪戦』の条件も満たしていませんので、今回の申し出は蹴らせていただきます」


 だいたい賭けに勝って『たこ焼き一番』が『暁』を得た所で、一瞬で『ホワイトファング』の田上氏に取られる未来しか浮かばないな。


『問題無し!』

『俺達はタカシを支持するぞっ』

『みのりんのライブの方が千倍大事だっ!!』


「それでは、今日の狩りは、『臨海第三ティーチャーズ』さんの狩りのお手伝いです」

『うぇ~~うぇ~~! 一日置きのこの配信が楽しみで』

『先生方も、マリちゃんも強くなってるからなあ』

『お父さん目線で見てしまうのだ』


「今日は地下六階かな?」

「そうですね、習熟狩りをしましょう。あと、マリちゃんは実験を?」

「四階の干上がった池でマッドゴーレムの実験をします」

「まだ干上がってるの?」


 東海林が悲鳴を上げた。


『真ん中には水が戻ってるけど、周りは泥濘だな』

『マッドゴーレム造りには良いかも』

『テレサ女史は、なんかの樹脂で成功させていたな。やっぱりゴーレムだと錬金術師なのか?』

『望月先生の出番か、意外に使えるな錬金術師アルケミスト

『ハズレ職業かと思ったらそうでもなかった』


 よしよし、みんな行こう。


 みんなでぞろぞろと三階から四階に向かって歩く。

 浅い階は『参入者』ビギナーさんが一杯で楽しそうに狩りをしているな。


 竹宮先生とマリちゃんが重装備なので威圧感あるね。

 二人の装備であれば、角兎の角アタックも通らないし、ゴブリンの剣も刃が立たない。

 朱雀さんが嬉しそうにプロテクトをチアキとくつしたに掛けたりしていた。


 四階に入る、草原を抜け、森に入って池を目指す。

 東海林が【ドラゴンファイヤー】で水を全部蒸発させた池は徐々に姿を取り戻しつつあった。

 岸の方は泥濘だね。


 マリちゃんが七つの石の玉に魔力を注入してドロの中に放った。

 ……。

 特に動かないな。


『そよ、我が願いに応え人の形を取り、動き出したまえ、『クリエイトゴーレム』』


 望月先生がすらすらと呪文を唱えると、石の玉に周りにドロが巻き付き人型を取り、立ち上がった。


「望月先生、どうして」

「なんか出てきちゃった、基本能力にあるみたい」


 ズシーンズシーンと二メートルほどのドロの巨体が岸に上がった。


「おお、迫力がありますねっ」

『ゴーレムきたーっ!!』

錬金術師アルケミストの基本性能かーっ!』


「たぶん、方喰さんも呪文を唱えれば出来るよ、いま解くからね。『それは幻影、迷いを捨て元の姿に帰れ』」


 望月先生がそう唱えるとマッドゴーレムは形を崩し、ドロの塊へと帰った。


「ええと、『そよ、我が願いに応え人の形を取り、動き出したまえ、『クリエイトゴーレム』』」


 マリちゃんのたどたどしい呪文に石の玉が反応し、再びドロの巨人は立ち上がった。


「わ、思念で動かせますね、これは楽しい」

「砂利の所だと、砂利ゴーレムができそうだね。これは楽しい」


 意外に簡単で、囮に、荷物運びに、いろいろと応用が利きそうだ。

 なかなかいいね。

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