アタックドックから、チョーカーが出た。
オークからはオークハムだ。
「これ、美味しいんだよね、ぼくは毎朝ハムエッグにして食べてるよ」
「良いですね、今日は私が貰って良いですか」
「宮川先生のお宅はお子さんが小さいから、喜びますよ」
オークハムは微妙な物が多い迷宮ドロップ食品にしては美味しいよね。
俺の朝はオークハムDXだけどね。
ドロップ後に気を抜くと鏡子ねえさんに囓られるので注意が必要だ。
暗い洞窟の中を歩いて七階を目指す。
モンスターも出るし、他パーティとも行き会うね。
大学生パーティとかだとほっとする。
若くても半グレ独特のピリピリした感じがすると警戒する。
で……。
「タカシだなっ!! 『暁』をよこしやがれっ!!」
『鏡子さんが居ないと半グレ襲ってくるね』
『いきなり剣を抜くやつらはすげえや』
くつしたがばうばう吠えながら襲いかかり、泥舟が長銃で足を撃つ。
高田君が手斧を飛ばし、朱雀さんが氷結符を飛ばした。
馬鹿なだけはあってレベルが低かった。
「ち、畜生!! 卑怯だぞ!!」
「タカシにいちゃん、殺しちゃう?」
「いや、チアキちゃん、殺すのはちょっと……」
「あ、望月先生、麻痺液かけて放置しようよ」
「そ、それは殺すのと同じじゃないかと思うんだ」
まったく、六階から十階の治安は最低だな。
「女生徒のパーティとか、危険ですね」
「とりあえず、制圧しないと危険ですね」
俺は半グレパーティの前に立った。
「治療はしない、このまま帰れ」
「お、おぼえとけよ、ボケェ」
「懲りてないお」
「まあ、この傷なら何も出来ないだろう」
俺達は半グレパーティを置いて先に進んだ。
なんか、良い手は無いかな。
半グレのボスはほとんど居なくなったんだけど、その分バラの半グレパーティが多くなった。
半グレでも深い階層を狙うパーティはあまり無茶な悪さはしないのだが、なかなかうだつが上がらない雑魚パーティは俺達を襲って一攫千金を狙ってしまうようだ。
ヒュージスパイダーが四匹出た。
東海林のファイヤーボールが飛び、泥舟の長銃とチアキの拳銃で二匹倒せた。
接近戦で先生達とマリちゃんがあと二匹を倒す。
ドロップ品は蜘蛛糸が一巻き出た。
「これ、装備品の自作に良いんですよ」
「では方喰さんが持っていきなさい」
「ありがとうございます、宮川先生」
やっぱり『臨海第三ティーチャーズ』のリーダーは宮川先生なんだよな。
【リーダーシップ】のスキル効果で、レベルより補正されて強くなっている感じだ。
前方で、半グレパーティ同士が喧嘩をしていた。
こういう時は離れて見守っている。
近づくと喧嘩に巻き込まれるからね。
しばらくして、若い方のパーティが勝った。
「へへ、もうでかい面すんじゃねえぞっ『港湾第二』」
「や、やろう、覚えてろっ『銀塩会』」
負けた方が逃げ出していった。
「お、変なパーティ発見、オヤジに子供に犬?」
「『臨海第三ティーチャーズ』だ」
「お、タカシじゃん、ああ、学校のか」
若いリーダーは肩をすくめた。
「いいなあ、お前んちの学校、俺んちの学校の先生は迷宮によりつきゃしねえぜ」
「高校生なのか?」
「まあなあ、リンサン高は後醍醐いるからな、喧嘩はしねえよ」
『銀塩会』も反対側の通路に向かって歩いて行った。
「どこの高校でしょうね」
「迷宮への対応は学校によって色々ですからね」
高校生系の不良パーティは後醍醐先輩の名前で引っ込んでくれる事もある。
色々だなあ。
ゴブリンリーダーを蹴散らして、七階への階段を下りる。
「七階ですね、フロアボスまであと三階ですか」
「そろそろ、フロアボス戦も行けそうですけど、少しレベル上げした方が無難ですね」
「そ、そうだね、十階越えたら『Dリンクス』の補助は無くなりそうだしね」
「タカシ君たちが居なくなったら、迷宮に潜るのが怖いわ」
「ずっとお願いする訳にもいきませんからな、新宮は自分のパーティとここの介護で休む日も無いわけだし」
「タカシくんはタフだお」
「迷宮好きだから大丈夫ですよ」
「タカシ兄ちゃんはたまに休んで、みのりねえちゃんや私とデートすべき」
「え、あー、そういうものか?」
「鏡子さんともデートすべきだお」
「ねえさんと二人だと、迷宮に潜ってしまいそうだしなあ」
「街中で遊んだりしなよう」
デ、デートか、そ、それは大変だな。
あんまり俺は気が利く方じゃないし。
「タカシは自分からは行かないから、峰屋さんに誘うように言った方が良いよ」
「それもそうかー、ライブ終わったらデートするように言おうっと」
「バウバウ」
くつしたまで賛同するな。
「うん、新宮くんも若いんだから、いろいろ遊んで思い出を作った方がいいよ」
「そうそう、学生時代の思い出は一生ものですからね」
そういう物なのか。
俺はみんなと迷宮に潜る事で凄く沢山の思い出を貰ったけどな。
デートか、うーむ。
『あまずっぺえな』
『先生介護狩りはこれがあるからな、みのりん居ないが』
『『Dリンクス』の素顔が見えるから楽しい』
朱雀さんがうふふと笑った。
「いえ、その、良いなあって思いまして、陰陽師の戦いはいつも仕事なんで、こういうのは新鮮です」
「わりと適当でごめんね」
「いえ、好きですよ、こういう雰囲気」
陰陽師はもっとキリキリしてるのか。
白虎君もレベル上がったかな。
また会いたいね。